動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011495

作品紹介・あらすじ

進化の末に、動物は「賢さ」を獲得した。
それは人間も、サルも、カラスも、イルカも、タコも、みんな同じである。
われわれは自分たちだけが賢いと思っていないか?

心理学との境界線を行くユニークな動物研究の分野を開拓してきた著者が、動物行動学の歴史から最新の研究まで、豊富な事例を示すとともに読者へと問いかける。ドゥ・ヴァールが新たに提唱する「進化認知学」とは――
人間中心の科学から脱却し、動物の認知とは何かを見つめなおす。

驚きのエピソード満載、著者自身の手によるイラスト多数。待望の最新作!

●チンパンジーは食べ物のありかを知っていることを悟られないようにふるまう
●カケスは相手が何を欲しがっているか見極めてプロポーズの贈り物を選ぶ
●アシナガバチは一匹ずつ顔が違い、仲間の顔を見分けている
●タコは自分を攻撃した人間を覚えていて、怒りをあらわにする

感想・レビュー・書評

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  • 481.78/ハ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/681125

  • 進化認知学(動物は何を考えているか、動物の心、自己認識、コミュニケーション、社会性などを解明する学問)の提唱者・第一人者による、進化認知学の入門書。

    動物はとにかく賢い。「霊長類は政治的戦略を用いる、喧嘩したあと仲直りをする、他者に共感する、自分を取り巻く社会的世界を理解している」。クジラもイルカも、象や鳥や猫や狼や犬やタコ、蜂まで、様々な面で賢い。過去の事をよく覚えているし、未来に備えるし、利他的な行動をするし、公平な分け前に拘るし、他者を真似て学習するし、駆け引きもする。遊び心まである。

    人間は特別な存在なんかではなく、動物と進化を通じて連続しているのだ。「人間と動物の違いは程度の問題であって、質の問題ではない」。

    ただ、人間を特別な存在と思いたい固陋な学者たちの強烈な拒否反応にあって、動物の知能や認知機能、情動を研究する研究者たちはずっと白眼視されてきたという。「科学は動物の知能について、過度に慎重で懐疑的だった。動物に意図や情動があると考えるなど、幼稚で「通俗的な」愚行と見なされた。私たち科学者はそこまで無知ではない!」。未知の領域を切り開いていくはずのアカデミアに固陋な思考や権威主義が根強く存在しているのは、ホント不思議だよなあ。

    著者は、余程頭にきているのか、ことについての恨みつらみを随所に書いている。強調しすぎていて、ちょっとウンザリするほどだった。過去の研究経緯はほどほどにして、動物の賢さ、凄さをもっと未来思考で書けばいいのになあ。

    本書で特に面白かった点をいくつか。

    他者の模倣において、「類人猿は体、それもできれば自分と同じ種の個体の体が動いていることを目にする必要がある。技術的な面を理解することは肝心ではないのだ」。

    「公平な報酬こそが協力行動を円滑に続けるための唯一の方策」であることの証として、サルは相棒より劣る報酬に断固抗議し、「チンパンジーは、相棒よりも少ない報酬しかもらえないときだけでなく、多くもらったときにも異議を表明する」。霊長類以外の犬やカラスでも、サルと同様の反応が確認されたという。

    「模倣と体制順応主義は動物がときおり些細な理由から耽るただの無節操な行為(…)ではなく、多大な生存価を持つ、広く行き渡った営みなのだ。何を食べ、何を避けるかについて母親のお手本に従う幼児は、何でも自ら突き止めようとする子供よりも生存の可能性が明らかに大きい」。そして霊長類の社会的学習は明らかに「報酬を得ることよりも、周囲に溶け込んで他者と同じように振る舞うことを目指している」。

    これらのことは「文化がヒトを進化させた」でも論じられていて、ヒトに限らず動物の生存戦略としても、(必ずしも合理的とは言えない)無条件の模倣や体制順応がとても重要なことが理解できた。

  • 異なる立場の考え方に対する攻撃的な口調に終始する。淡々と語ってくれたら興味深い内容なのだが、読んでいて怒りのはけ口にされている気分になる。

  • 賢さには、たくさんの種類がある。
    例えば、言語。
    人間は言葉を喋る。犬や鳥は、今のところ人間の言葉を喋らない。だから、犬や鳥は無能なのか?
    犬は人間の1億倍ほどの嗅覚をもつ。
    鳥は宇宙を駆ける翼をもつ。
    どちらも人間にはない能力である。
    種によって、または人によって、賢さの基準は違うんだな、と考えさせられた本だった。

  • ふむ

  • 人間は、動物と同じ生物種としての連続性の中で理解すべきとし、ユクスキュル的な動物主観的視点から、動物の認知と知能に関して紹介した著作。

  • 宗教上の理由で無意識に人間と動物を分けて考えてる生物学者が多くて動物独自のIQの高さをきちんと研究出来ている学者が少ないって本。

    そもそもなんでチンパンジーのIQテストに人間の顔写真の識別をさせるのか、人間はチンパンジーの見分けがつかないのと同じでチンパンジーも人間の見分けはつけづらい。木登りに特化したテナガザルに何故かスプーンを渡して動作テストをしたり人間基準で考え過ぎてて動物の適性検査が出来ていない。

    無意識のうちに人間は他の動物よりも優れていると考える節がある為、人を動物のカテゴリーに含めるとそれを感情論で批判する学者がいる影響で動物行動学の発展が遅れているんじゃないかみたいな内容の本でした。
    動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

  • 非常に興味深く、面白い内容だった。かなり愚痴っぽいところがあり最初は辟易したが、それ以上に動物たちの行動が興味深く、どんどん読み進めていけた(とはいえ読むのにかなり時間はかかった)
    研究者の著書としては一般人にとてもわかりやすい文体で書かれていて、専門用語のオンパレードといった取っ付きにくさは皆無。ますます動物たちが好きになり、愛が深まった。
    収斂進化が思ってもみなかったところで起きていること、そもそもこれは収斂進化であるという気づきがあったのが、個人的なポイント。

  • <学生コメント>
    小さなころから考えたことはありませんか。人と動物の境はどこだろう。
    「賢い犬だなあ」という言葉のたびに、なんだか切ないようなまどろっこしいような気になって、わけもなく哀しかったのですが、タイトルからしてズバリと根拠に基づいてこの疑念を一部晴らしてくれそうだと思い、選びました。

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著者プロフィール

【著者】フランス・ドゥ・ヴァール(Frans de Waal)
1948年オランダ生まれ。エモリー大学心理学部教授、ヤーキーズ国立霊長類研究センターのリヴィング・リンクス・センター所長。霊長類の社会的知能研究における第一人者。2007年には「タイム」誌の「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれた。米国科学アカデミー会員。邦訳された著書に『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『道徳性の起源』『共感の時代へ』(以上、紀伊國屋書店)、『チンパンジーの政治学』(産經新聞出版)、『あなたのなかのサル』(早川書房)、『サルとすし職人』(原書房)、『利己的なサル、他人を思いやるサル』(草思社)ほかがある。

「2020年 『ママ、最後の抱擁――わたしたちに動物の情動がわかるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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