中古典のすすめ

著者 :
  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011525

作品紹介・あらすじ

「ベストセラー」以上「古典」未満
読書界の懐メロ=中古典を一刀両断!

一世を風靡した本には、古典に昇格するものもあれば、忘れ去られてしまうものもある──人気文芸評論家が、ひと昔前のベストセラー48点を俎上にのせ、現在の視点から賞味期限を判定する。

【名作度】
★★★ すでに古典の領域
★★  知る人ぞ知る古典の補欠
★   名作の名に値せず

【使える度】
★★★ いまも十分読む価値あり
★★  暇なら読んで損はない
★   無理して読む必要なし

《目次(予定、抜粋)》
住井すゑ『橋のない川』 差別への感受性を磨き直せ
丸山眞男『日本の思想』 憲法が破壊される時代への警告
中根千枝『タテ社会の人間関係』 どこが名著かわからない
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』 東大受験生の明るい屈折
土居健郎『「甘え」の構造』 大風呂敷な居酒屋談義
山崎朋子『サンダカン八番娼館』 ルポライターとからゆきさん
小松左京『日本沈没』 天変地異の大盤振る舞い
鎌田慧『自動車絶望工場』 大企業を敵に回した果敢なルポ
片岡義男『スローなブギにしてくれ』 疾走するハードボイルド
山口百恵『蒼い時』 伝説のアイドルの「闘い」の書
浅田彰『構造と力』 ポストモダンって何だったの?
ホイチョイ・プロダクション『見栄講座』 うわべで勝負の最強レジャーガイド
渡辺淳一『ひとひらの雪』 不倫にのめった中年男の夢と無恥
村上春樹『ノルウェイの森』 過剰な「性と死」があなたを癒す
etc......


【著者紹介】斎藤美奈子 (さいとう・みなこ)│ 文芸評論家。1994年に文芸評論『妊娠小説』でデビュー。2002年『文章読本さん江』で、第1回小林秀雄賞受賞。軽妙な筆致で綴られるパンチの効いた書評や文芸評論は、幅広いファンをもつ。他の著書に、『文壇アイドル論』『紅一点論』『本の本』『日本の同時代小説』『文庫解説ワンダーランド』『名作うしろ読み』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 1960年代から90年代初めまでの「古典未満の中途半端に古いベストセラー」本48冊を評したもの。1980年を境にそれ以前の本は馴染みがないけれど、それ以後の本の書評は内容が分かるだけに笑いながら読んだ。知っている作品は再読してみたいと思う。

  • 女の本屋 > 著者・編集者からの紹介 > 斎藤美奈子著『『中古典のすすめ』   ベストセラーから時代を読む    ◆ 有馬由起子 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/article/show/9178

    『中古典のすすめ』斎藤美奈子著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/640764

    中古典のすすめ / 斎藤 美奈子【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア
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  • 表題にある『中古典』は著者の造語。
    その中古典の定義付けを語る前にまず触れなくては
    いけないのは『古典文学』の定義。辞書には上代(奈良時代)〜近世(江戸時代)の文学とある。ということは近代、即ち明治以降の漱石や鷗外の作品は含まれず、近代文学に属する。ただ現代人の感覚では十分古典の範疇に属している。

    その感覚の違いを踏まえ、著者は、古典文学とは
    『長きにわたり読み継がれ、普遍的価値を保有する作品である』と定義付ける。

    さてというかようやく肝心な中古典の定義…
    ◉近代以降の60〜90年代の作品で、歴史的評価が
    今のところ定まっていない。
    ◉上梓当時よく売れ、世間の注目を集めた。

    以上、この条件に合致した計48冊が俎上に載る。
    中身は小説・エッセイ・ノンフィクション・評論等
    ジャンルは多岐に及ぶ。特筆すべきは、小説の多くは『青春小説』が14冊と占有率が高い。純文学の主題は『いかに生くべきか』に照らせば、青春小説が多いのもさもありなんである。

    その青春小説…
    『赤頭巾ちゃん気をつけて』〈庄司薫〉・『どくとるマンボウ青春記』〈北杜夫〉・『キューポラのある街』〈早船ちよ〉・『されど 我らが日々』〈柴田翔〉・『青葉繁れる』〈井上ひさし〉・『青春の蹉跌』〈石川達三〉・『二十歳の原点』〈高野悦子〉
    『ノルウェイの森』〈村上春樹〉・『スローなブギにしてくれ』〈片岡義男〉・『桃尻娘』〈橋本治〉
    『四季・奈津子』〈五木寛之〉・『なんとなく、クリスタル』〈田中康夫〉・『キッチン』〈吉本ばなな〉・『極東セレナーデ』〈小林信彦〉。

    『赤頭巾ちゃん気をつけて』〜『ノルウェイの森』までの作品は60年代が舞台だけに学生運動との関わりが直接的であれ間接的であれ作品に影を落とし、悩める青年群像が描かれている。

    70年代半ば以降となると、青春そのものが多様化し
    『いかに生くべきか』の反動ゆえか悦楽化へシフトしボーイミーツガールが話の中心となる。

    著者は『はたしてその本を今も読む価値があるか
    どうか』の一点で論じ、最後にその評価を〈名作度〉と〈使える度〉の2つの観点から星印で評価を下す。

    本作でも寸鉄人を刺す舌鋒でドライブ感を伴いながら小気味良く論じていく。先見を讃え、目を細め眩しいと感慨を抱く一方で、白けたと呟き、恥ずかしいと嘆く。その評価に至る論理の畳み掛けが、独善に走らずストンと腑に落ちる。

    本書に取り上げられている作品はいずれもベストセラー。ただあくまでもそれは当時であり、あたかも現代と地続きのように思いがちだけど、『あゝ、この本あったよなぁ〜』と隔世の感ありありの本も多い。

    『一昔前のベストセラーの賞味期限』を判定する本書。平たく言えば『読書界懐メロ本』。50代60代のニューミュージック世代にはたまらない一冊になること太鼓判押します!

  • 期待通り面白かった!「中古典」とは著者の造語だそうだが、これは言い得て妙、さすがの目の付け所だ。確かに明治大正から昭和の戦前あたりの文学って、すでに古典と言っていいだろうし、その後の60年代から80年代くらいに書かれたもののなかに、同じように今後読み継がれていく作品があるはずだ。発売当時よく読まれた48作品が取り上げられ、本としての価値(名作度)と面白さ(使える度)が三つ星で評価されている。忖度なしでバッサリいくところが著者の真骨頂。好きだなあ。

    斎藤美奈子さんとは年が近いせいか、そうそう読んだわそれ懐かし~という作品が多く、数えてみたら28タイトルが既読だった(たぶん)。ずっと大事に本棚に並べているものもあり、聞いたこともないよというのはほとんどなかった。そりゃあ楽しく読めるはずだわね。名作であり、かつ今読んで面白いと三つ星が並んだものは10作足らず。星一つずつというのもあったりするが、おおむね納得の評価であった。

    読みどころはもちろん、それぞれについての評なのだけれど、最初の「はじめに」がたいそう興味深かった。「予習をかねて軽く紹介しておきたい」と本書で取り上げた作品以外にも触れながら、各年代の特色を俯瞰する内容になっている。短い文章だが、「時代の波をかぶる青春小説」「プレフェミニズム期の証言としての女性エッセイ」「懲りずに湧いてくる日本人論」などなど、なるほどねえとうなずくことしきり。これってまだ連載中なんだろうか。もっと読ませてほしいなあ。

  • 「中古典」とは、「中途半端に古いベストセラー」を指す著者の造語。

    「古典」と呼ぶほど古くはないが、将来「古典」と呼ばれるかもしれないし、忘れられた本になっていくかもしれない……そんな状態にある本のことだ。

    紀伊國屋書店の季刊広報誌で、14年間も連載されていたというコラムの書籍化。1960年代初頭から90年代前半にかけてのベストセラーから、著者が選んだ48冊が俎上に載る。

    〝昔のベストセラーをいまの視点で再読してみよう〟という本なら、ほかにもいろいろある。たとえば、岡野宏文・豊崎由美の『百年の誤読』などが挙げられる。

    『百年の誤読』は対談集だし、俎上に載るのが20世紀100年間のベストセラーであるという違いがある。が、取り上げられている作品が本書とわりと重なっているし、スタンスも近い。

    そもそも、「ベストセラー再読」というのは、おじさん雑誌の書評欄などでありがちな企画だ。
    企画はありふれている。中身の勝負なのである。

    で、中身はどうかといえば、さすが斎藤美奈子、いつもながらうまい。「どういう本か?」という紹介は手際よく、随所に軽快な笑いをちりばめ、要所要所にハッとさせる卓見がある。

    小説、ノンフィクション、エッセイなどさまざまな本が取り上げられているが、文芸評論家だけあって、小説を取り上げた回がいちばん面白い。

    たとえば、『スローなブギにしてくれ』や『桃尻娘』の回は、それぞれ片岡義男論、橋本治論として読めるだけの鋭さがある。

    ただ、「斎藤美奈子ならこの本はけなすだろうな」と予想がつく本(『ひとひらの雪』『気くばりのすすめ』など)は予想どおりの角度でけなしていたりして、全体にやや予定調和的。

    「ベストセラー再読」の本として虚心に読めば満点だが、斎藤美奈子の著作としては平均的な出来なのだ。

  • NDC 019
    「「ベストセラー」以上「古典」未満 読書界の懐メロ=中古典を一刀両断!
    一世を風靡した本には、古典に昇格するものもあれば、忘れ去られてしまうものもある──人気文芸評論家が、ひと昔前のベストセラー48点を俎上にのせ、現在の視点から判定する。」


    住井すゑ『橋のない川』 水平社運動に向かった少年たちの物語
    丸山眞男『日本の思想』 憲法が破壊される時代への警告
    中根千枝『タテ社会の人間関係』 どこが名著かわからない
    庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』 東大受験生の明るい屈折
    土居健郎『「甘え」の構造』 幼児的依存を体現した書
    山崎朋子『サンダカン八番娼館』 ルポライターとからゆきさん
    小松左京『日本沈没』 天変地異の大盤振る舞い
    鎌田慧『自動車絶望工場』 大企業を敵に回した果敢なルポ
    片岡義男『スローなブギにしてくれ』 疾走するハードボイルド
    山口百恵『蒼い時』 伝説のアイドルの「闘い」の書
    浅田彰『構造と力』 ポストモダンって何だったの?
    ホイチョイ・プロダクション『見栄講座』 うわべで勝負の最強レジャーガイド
    渡辺淳一『ひとひらの雪』 不倫にのめった中年男の夢と無恥
    村上春樹『ノルウェイの森』 過剰な「性愛と死」があなたを癒す
    etc……

  • 東2法経図・6F開架:019.9A/Sa25c//K

  • 読んでおいた方がよい本を選別してくれてる本

  • [図書館]
    読了:2022/9/19

    昔ほど抱腹絶倒って感じじゃなくなっちゃった…原発とか政治色が強くなってきたからかなぁ…

  • 60年代からのベストセラーを読み直し.
    「されどわれらが日々」「二十歳の原点」「ルンルン買っておうちに帰ろう」「なんとなくクリスタル」など懐かしの本が並ぶ.私は無神経なのですぐ男性視点でいろいろなことを語ってしまうので,著者の女性視点が新鮮.「青葉繁れる」なんていうのはもうこの時代に生きられない小説なんだな.

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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