- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314011563
作品紹介・あらすじ
「いやいや、私の脳は死んでるんです。
精神は生きてますが、脳はもう生きてないんですよ」
「自分は死んでいる」と思いこむコタール症候群、自分の身体の一部を切断したくてたまらなくなる身体完全同一性障害(BIID)、何ごとにも感情がわかず現実感を持てない離人症――
自己感覚が損なわれる珍しい精神疾患を抱える患者やその家族をはじめとし、ドッペルゲンガーの経験者、自閉症スペクトラム障害の当事者などへのインタビュー、それらを治療・研究する精神科医や神経科学者への取材をもとに、不思議な病や現象の実相を描き出す。著者はときには違法な下肢切断手術の現場に同行したり、錯覚を起こす実験に参加してみずから体外離脱を体験しようと試みたりするなど、ユニークなアプローチで〈自己意識〉という難問に迫る。
〈私〉とは、いったい誰なのか? 神経科学の視点から〈自己〉の正体を探るポピュラーサイエンス読み物。
‟オリヴァー・サックスの著作を彷彿とさせる”――『サイエンス』誌
ニコラス・ハンフリー、マイケル・ガザニガ、フランス・ドゥ・ヴァールらも称賛!
春日武彦氏による解説を収録。
感想・レビュー・書評
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精神病の症例を通じて、「自己」という謎に迫る。数々の症例を読んでいるうちに、自分が「私」というものを認識できることが、奇術のように思えてくる。果たして、自分が生きて、存在している、ということをどうやって認識しているのだろう。逆に、「私は死んでいるのだ」と主張する人は、どの程度異常なのだろうかと考えてしまう。
今まで、自己というのは揺らぎようのない確固たるものだと思いなしてきたかもしれない。それが、実はそんなに堅牢なものではないということがわかると、とても不安になる。
脳の機能は、詳細がわかっているわけではなく、まだ謎だらけのようだが、脳の中で自己が形成されているのはほぼ間違いないだろう。しかし、脳の中に、まさに「自己」という部分があったり、脳そのものが自己であったりするわけではない。それは様々なものから組み立てられる、実体のないものなのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自己と他者の境目が曖昧になる様々な症状について、きちんと言語化して読者に理解できる形にした、ということをまず感謝したい。下手をすれば「意味不明」と捨てられてしまいそうな症状、現象も当事者の証言からきちんと拾い、実験と仮説と残っている問題点まで書かれている。客観に徹している見方や表現に好感が持てた。
今意識している自己は意外とあやふやで、脳の機能のどこかがうまくいかないと身体と自己感覚はすぐ離れてしまう。たまたまうまく繋がっているだけかもしれない。
筆者の「最後に」は情報が整理されている。ここから読んで、読み終えてまた読んでもよいと思った。それに対して日本の精神科医による「解説」はどこか他人事のように見えて、ちょっとがっかりした。本文が客観を貫いているのに解説で主観と偏見が混じり、面倒くさそうな印象。患者になったとき主訴をこんなふうに捉えられていたらたぶんつらい。 -
たまたま手にとって550円で買った本にしては大当たりだ。ちなみに北斗の拳とは、全く関係のない本だった。
「我思う故に我あり by デカルト」がいかに時代遅れかということを、「自己とは何か?」という問いに対する脳神経科学と哲学との対話から解説していく。
「我ら思う故に我らあり by 氣志團」が、言い得て妙なのではないかと改めて思い直された。 -
自己とは何か。自己概念が崩れてしまう病気から、自己を形づくるものに迫る。
感覚の統合ができないと非自己感に苛まれることになる。予想した感覚と知覚される感覚がずれた場合も同様だ。そこには島皮質が深く関係している。とても納得できた。
誰にでも統合ができない体験は簡単に起こり得ることを知って、自分が自分であると自覚している神秘を感じる。 -
[鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25616199
[鹿大図書館学生選書ツアーコメント]
「先生、自分は死んでいると話す患者さんがいます。すぐに来てください」
私たちはどのようにして自分のことを自分であると認識しているのでしょうか?
私の右手は私の手であると、異物感を感じずに―骨折したときにつけるギプスのように、この小指は私の体にくっついているだけで私の体ではない!、という感覚を感じずに―分かるのは何故でしょうか?
この本では、様々な精神疾患の症例を挙げながら「自己」という感覚について記載し
ております。
症例の一つ一つが具体的で分かりやすく書かれており、とても読みやすい一冊となっております。
読了すれば、時に強くもあり、時に弱くもある「自己」を、一層愛おしく感じるようになるでしょう。 -
2階書架 : WL103.5/ANA : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169017
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第41回アワヒニビブリオバトル「ウソ」で発表された本です。
チャンプ本
2018.08.07