「使いやすさ」の認知科学―人とモノとの相互作用を考える (認知科学の探究)
- 共立出版 (2003年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784320094406
作品紹介・あらすじ
「道具」としてのモノが人の認知活動に大きな影響を与えていること、翻って「使いやすい道具」を作るためには人の認知的過程を知ることが重要であるという認識もまた広く受け入れられつつある。
本著では、その「道具」となるモノと人間の認知の関係についての研究の紹介と今後の方向性を示すことを目的として構成された。前者は本著第1部にあたり、「認知科学」誌Vol. 5、No. 1に特集された4つの論文を、よりわかりやすくその後の展開も含めて書き直したものである。これに加え、後者の論文を第2部として構成した。
近年、モノは大きく変化してきている。人が本来生活してきた物理世界から、全く新しい電子世界へと認知的活動範囲を急速に広げつつある今、本書がなんらかの社会的意義を有する認知科学研究の一助となることを期待する。
感想・レビュー・書評
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何度となく参照している。
特に印象深いのは、
◆2章「人間-コンピュータ間の社会的インタラクションとその文化依存性」;
コピー機の課題分割はユーザのメンタルモデルの活用と関連して興味深く、
◆3章「認知的人工物を介した対話―対象支持コミュニケーション場面における認知的課題の検討」;
人工物間比較アプローチの肝(システムビューvsパーソナルビュー)、また「場の共有」の重要性およびテレビ対話型の課題について、
◆そしてもっとも私にとって重要で好きな章、
6章「『使いやすさ』とは何か―高齢社会でのユニバーサルデザインから考える」;
高齢群・若年群、複数のIT機器を用いた認知的ユーザビリティテストの実施、
そして観察されたエラーについて、認知心理学・科学的に考察している。
そこからユニバーサルデザインの概念(高齢者に使いにくいものは若年者にとっても使いにくい、逆もまた然り)を、認知科学的に説明している点がとても面白い。
おそらく……と断っておくが、ヒトは、年齢の高低/文化・国籍を問わず、認知機能のかなり多くの部分において一貫した特性を持つ。
つまり、誰しも認知をする時に共通する認知の仕方をする。
そういう基本的な性質がある。
その事がユニバーサルデザインという概念の根本にある。
ヒト「一般」の使いやすさと、年齢・文化といった特性にしぼったときのヒトの使いやすさについて、それぞれを考えるためのヒントがこの章には詰まっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示