原因と結果の迷宮

著者 :
  • 勁草書房
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326153572

作品紹介・あらすじ

一切の縛りが不在の状態、希望の未来を切り出す周到な試み。因果関係をめぐる錯綜を一歩一歩解きほぐす。

感想・レビュー・書評

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  • 実に難解な議論が展開される。その難解さの核心というか、キモになるのはぼくたちの現実における不条理をどう捉えるか(そして、その不条理の最たるものが「死」だろう)だと受け取ったのだけれど、この「迷宮」入りを厭わない議論にはさすがについていけず、類書を読み直しふたたび挑む意志を固めることとなった。奇をてらわず闇雲な「最新式」の「お勉強」の成果の披露に堕さない、平熱のテンションで緻密に議論を進める良心的で生真面目な姿勢は伝わってきたのだけど(その意味でこの本は、ぼく個人の読書歴において柄谷『探究』を彷彿とさせる)

  • 著者:一ノ瀬正樹
    ジャンル 哲学・思想・倫理
    ISBN 978-4-326-15357-2
    出版 2001年9月
    判型・ページ数 四六判・320ページ
    定価 本体3,200円+税

     私たちは不思議な事態に直面した時、何だろうとか何故だろうと考える。一言でいって原因を探索する。原因が分れば私たちは一安心する。こうしたことが日常のあり方であってみれば、因果関係の問題が長い間哲学のテーマであったのは当然である。本書は、ヒュームから現代までの因果関係の哲学を考えるに当って、1.過去から未来へという「時制」を軸に据えたこと、2.因果的理解そのものを考察に加える「自己言及」を行なうことの二点を重視した。それによって未来へ向う視線のありかを確保できるというのが著者の主張である。
    http://www.keisoshobo.co.jp/book/b26916.html




    【目次】
    献辞 [i]
    まえがき [iii-viii]
    目次 [ix-xiv]

    序章 因果的超越の果てしなき後退 001
    1 因果的決定論の生成 001
    2 因果的超越という暗黒 004
    3 因果概念の亀裂 010
    4 人格知識との融合 015
    5 制度的実在への道 020

    第一章 ヒュームの残響 027
    1 ヒューム因果論の謎 027
    2 自己消去への暗転 034
    3 奇蹟の証言 042
    4 確率概念からの反問 048
    5 確率概念の区別 054
    6 法則の偶然性 059
    7 奇蹟論からの陰り返し 067
    8 不確実性と非決定性 074

    第二章 因果の知覚――残響のハルモニア考 079
    1 因果はどのように知覚されるか 079
    2 観察の理論負荷性 083
    3 因果性と理論負荷性 087
    4 因果性への問いから理論への問いへ 091
    5 アブダクション 094
    6 データと理論 098
    7 操作主義 103
    8 操作主義への疑問 108
    9 決定する行為 113
    10 作品としての因果 118

    第三章 逆向き因果――残響のメロディ分析 127
    1 因果の時間的向き 127
    2 原因が結果の後に来る 131
    3 論理的に矛盾するか 136
    4 踏み倒し実験 141
    5 ランダム性と固定性 146
    6 過剰返済実験 151
    7 因果的ループ 156
    8 過去は操作できないか 163
    9 原因の探究 171
    10 過去を変える 177
    11 探究の行為 180
    12 過去からの連続性 184

    第四章 確率的因果――残響のリズム論究 191
    1 必然性の偽装 191
    2 規則性のパラドックス 194
    3 結果の確率を高める 198
    4 何が本当の課題なのか 205
    5 確率概念の解釈 207
    6 タイプかトークンか 213
    7 ローゼンのパズル 218
    8 カートライトの事例 224
    9 負連関と負原因 229
    10 因果の偶然的本性 237
    11 確率的因果の含意 242
    12 プロバブルな瞬間 247

    註 [255-271]
    あとがき(二〇〇一年六月 家族と愛犬たちとともに土浦にて 一ノ瀬正樹) [273-280]
    文献表 [9-17]
    人名索引 [4-7]
    事項索引 [1-3]

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著者プロフィール

1957年生まれ。東京大学大学院哲学専攻博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。和辻哲郎文化賞、中村元賞受賞。著書に、『人格知識論の生成』(東京大学出版会、1997)、『原因と結果の迷宮』(勁草書房、2001)、『死の所有』(東京大学出版会、2011)、『確率と曖昧性の哲学』(岩波書店、2011)など。

「2020年 『人間知性研究〈普及版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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