- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326154838
作品紹介・あらすじ
同じ電車に乗り合わせた、考え方がまったく異なる4人の会話が誘う哲学の世界。あなたは誰が正しく、誰が間違っていると思いますか?
魔女はいるか、科学は万能か、絶対主義と相対主義のどちらが妥当なのか、真理と虚偽の定義とは何か、どんな考えも誤りでありうるか、道徳的正しさについて相対主義でよいのか――プラトン以来の伝統に基づき、架空の会話を通して、真実と虚偽、知識と信念についての哲学的議論とその問題点を紹介していきます。解説、一ノ瀬正樹。
【原著】Timothy Williamson, Tetralogue: I'm Right, You're Wrong (Oxford University Press, 2015)
感想・レビュー・書評
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読み終わって2周目してるけど、いやぁ面白い。
日本でも『科学哲学者 柏木達彦』シリーズのように対話形式で進む哲学入門書があるけど、こちらは先生と生徒という講義スタイルではなく、考え方の異なる4人による対等な知的議論となっている。
議題の背景となる思想紹介もないので、専門知識がなくてもスルスル読めてしまう。
ただ、1回の通読では完全に理解できないし、普通の日常会話のごとく、相当入り組んでる。
各章ごとに"ふりかえり"として対話の解説が入るのだが、日本人訳者によるもので、原書はこれ無しでよく理解できるなと感心する。
真か偽かという論理学の話って頭抱えちゃうんだけど、これは読めちゃったな。
巻末で、この論理的思考に長けた対話者として登場するロクサーヌが著者の分身だろうと推察されているが、必ずしも彼女の意見に皆が納得するという展開にならないのが面白い。
それに、論争の仲介者として後から割り込む形で登場し、結局はフルボッコに攻撃されることになるザックも、道化役的役割で、語ることすべて重みがないというわけではなく、なかなか芯を食ったことも言っていて侮れない。
サラをはじめ、それぞれが対話を重ねるごとに立場を少しずつ修正していく様も面白い。
人それぞれにちがった視点があり、どんな視点であろうと絶対的に正しかったりまちがいだったりすることはないはずで、そうした多様性は尊重されるべきだという、一見もっともらしい、ケチのつけようのない意見の、どこに問題があって、実は説得力を欠いていることが対話を通じて明らかにされる。
あるいは何かを断定することは早計で、自分が間違っているかもしれないと謙虚でいるマチガイ主義も、教条的にならず寛容さを促す好ましい意見のように思えるが、実は大いに問題があったりすることも明らかになる。
書評で、ある本は"つまらない"という言明に間違いはないのか? 理解力も注意力もない読者の意見であったとして、この感想を偽とすることはできないのか、など読んでてニヤニヤさせられる話題もあった。
一番秀逸だと思ったのは、「わかりません」と「いいえ」という答えはどちらも否定的な返答なのだから大して違いはないとするザックに対し、サラが「ビザ申請時に"これまで麻薬の密輸に関わったことはありるか"と聞かれて、"いいえ"じゃなく"わかりません"って答えてみれば、すぐにちがいがわかるよ」と返しているのは、ほんと鳥肌が立った。
ただ唯一、本書にケチをつけるとしたら、論争のキッカケがショボいこと。
隣人が魔女であるかないかなんて、どーでもいいわ。
ある痛ましい災難が降り掛かって、現代科学の視点からは、この不運をどうにも意味づけできない時、魔術の視点に立って解釈するとそれで救われるんだから、科学で説明がつかないこともあるよという言明から出発するのに、魔女かどうかなんて、ちょっとガッカリ。
それよりは小林秀雄が講演で取り上げた、原住民によるワニの行動の解釈や、戦闘で亡くなった夫の死に様を夢で見た妻の話などの方がよっぽど惹きつけられたよな。
続編をぜひ読みたいが、もう魔女は勘弁して。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私のようなものにいただいてしまいましたありがとうございますありがとうございます。
でも正直なところ、私にはこの本の意義みたいなのはあんまりよくわからない。哲学よねえ。 -
話が合わなければ距離を置けばいいというのは日本の感性なのかなと。
現代的。現代のひとこと言いたい空気。
英米哲学、分析系、苦手なんだよな。でもやっと読めた。 -
こういう本を一気に読んでしまうのは珍しいのだが、本屋で見かけて面白そうだと思って、読みかけてる何冊かの本を横に置いて、足掛け三日で読んだことはなかなかない。
いわゆる言語学的な哲学を、四人の会話を通じて考察していくと言ったような展開で、こういう話をしているこの四人は例えば山手線なら何周するくらいの時間をかけてやってたのだろうかと、つまらぬことを考えてしまった。
もう一度読む機会があるかわからないが、そのときにはもっと誰かに肩入れして読んでみると面白いのかもしれない。