ももクロの美学~〈わけのわからなさ〉の秘密~ (廣済堂新書)

著者 :
  • 廣済堂出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784331516997

作品紹介・あらすじ

アクロバティックなパフォーマンスで人気沸騰中の少女アイドル・ユニット「ももいろクローバーZ」。中年男性がライブで涙するなど、そのファン層はこれまでになく多岐にわたる。何がこれほどまでに心を揺さぶるのか。私たちはなぜそれに癒されるのか。みずからも熱烈なファンである50代の美学研究者が、その秘密に果敢に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のももクロへの深遠なる愛がひしひしと伝わる。


    今までのアイドル像や流れといったものをハイブリッドしたのがももクロ。その結果いろんな自己矛盾を一見抱えていて“わけのわからない”ももクロだが、その“わけのわからなさ”が人々を惹きつけて止まない魅力だという。

    ももクロに限ったことではないが、近年のアイドルはたしかに“近い遠さ”がキーワードになってる気がする。それはまあ幻想であって、決して縮まることのない距離感にすぎないんだろうけど。


    アカデミックな価値は決して高くないかもしれない。けれど、今後のアイドル論を展開していく上での良き叩き台とはなるだろうし、ひとりの学者である以前にひとりのモノノフとして、自身の知識や思考を結集させてももクロを紐解こうとしたその熱意には頭が下がる思いだ。

  • 分別のある大人が、なぜももクロを好きになるのかという理由を高尚な視点から論じた言い訳本です。

    ももクロファンであれば一読をお勧めしますが、何かを好きになるのに理由なんていらない、これが正解のようです。

    いや、好きだから好きというのが本当の理由か?

    個人的には、ももクロの魅力は「全力」から来るものだと思う。

    大人(運営サイド)からの無理難題を、文句を言いながらも見事に全力でやり切ってしまう、そして、試練の末に必ず何かを得て(自信だとか、ファンとの絆とか)、最後は感動の涙を流す少女たちを放っておけるわけがない。

    自分たちの弱さをさらけ出し、それを自虐ネタにするしたたかさとかわいらしさ、本書では「親戚の子みたいな身近さを感じる」と表現していますが、確かに守ってあげたいと思わせる何かを持っています。

    実際、彼女たちは自分の欲望に忠実であり、その欲望とアイドルとしての覚悟との間を真剣に悩む姿は、2次元ではない生身の人間として共感できます。

    遊園地ロケでジェットコースターが嫌いなれにちゃんは鼻水を流しながら乗らないと駄々をこねたり、テレビ企画での「こってり探検隊」でのあーりんとしおりんはアイドルなのにそこまで食べて大丈夫?と心配するほど後先を考えずに爆食する様などは、もはやお笑いタレント並みのパフォです。(いつも食べ過ぎのあーりは母親から爆食禁止令がでているようですが・・)

    まあ、これだけなら色物アイドルとしての立ち位置なんでしょうが、本業のライブもすごい。

    しかもライブは企画ものが多く、連続公演でも同じ出し物はやらないという徹底ぶりです。

    もちろん、彼女たちの全力生歌と激しいダンスにも感動するのですが、特にサイリウムを使ったモノノフとの一体感はコンサート会場に足を運んだ人ならわかりますが、壮絶の一言です。

    コンサート開演前には、自作グッズを無料で配ったり、推しメンアイテムを交換したりとファンのコミュニティーが自然にできており、しかも彼らは節度と親しみを失っていません。(みんな笑顔です)

    ファンがももクロを支え、彼等もまたももクロの頑張りに励まされるという形が成立しているわけです。

    そして、他のアイドルグループと決定的に違うのは、ファン層の広さです。

    老若男女問わずコンサート会場で一心不乱に応援する光景は感動的ですらあります。

    本書で最も感心した分析は、ももクロはセクシー路線を封印することで、男性からのいやらしい目線への媚びがなくなり、オヤジが応援しても気味悪がられない雰囲気を作り、応援という行為がより純粋になる(P146)という指摘です。

  • 2013年現在人気絶頂の今会えるアイドル、週末ヒロイン・ももいろクローバーZに、50代の美学研究者である筆者がハマってしまった! 何故老若男女問わず愛されるのか? どうして彼女達に心を揺さぶられるのか? 彼女達の振りやダンス等パフォーマンスが示す身体性、楽曲の異常性や歌詞、果ては現代日本との看過出来ない関係性など、2013年1月までの“ももクロ”を学術的に全力で論じた一冊。ももクロの快進撃をおさらいするにもぴったり、そこのモノノフさん、買いだよ、買い!

    とか言いながらこれは借りたものなのですけど。ズベさんありがとうございます。ちょうど一年前くらいにももクロを聴き始めて、DVDなんかも見たり、何かメンバーのブログとかも追っかけたり、気付いたらライブ映像見て一緒に踊ったり歌ったりしてるし、ライブビューイングいってたり、紅白出場決定で涙してたり、五次元ツアーとかも行っちゃってて新しいアルバムも沢山聴いてる。妹みたいな彼女達にいつも可愛い可愛いいってる。いえーい一年前の私みてるー? こんなになっちゃってびっくりだ。アイドルなんてハマらないっていうか価値は認めるけど本気になることなんてないと思ってたらこうなった。私もどうしてかちょっと思ってたんです。「一体何がこんなに私たちを引き付けるの?」と。
    と言うわけで本書は、ちょうどモノノフ歴一年に近付く私にとってはももクロのヒストリーや彼女達の持つ特徴を体系だてておさらいする意味でもとてもいい本だったし、また私が初めて知ることなどもあったり、勿論アイドル論という側面からしても(私は専門じゃないし、この書がどの辺りに位置づけられるかはわかんないけど)面白かったです。特に、自分は歌詞考察するような人間なので、セカイ系・日常系と結びつけて歌詞を解析するところとか興味深く読めました。学術・研究者的な視点からももクロを見てみたいなって方にお薦め。そんなに難しい書ではありません。
    様々な要素をどん欲に吸収し新しい形に昇華するハイブリッド化についてとか、青春ガールズムービー的なところとか、とにかく拾いたいところ沢山あって良書なんだけど、ももクロという五人の少女達の宗教性に関して、ずーっと前に読んだ大塚英志「少女民俗学」を引いてて論じてたところは、懐かしくなりつつもあーわかるわかる、となりました。
    それから最後「ももクロは偶然ではなく必然である」と熱っぽく書いてて、確かにそうだなってこっちも胸が熱くなりました。赤裸々に書くと、後書き読んでて、ちょっと泣いちゃったよ。そんで退勤中にアルバム「5TH DIMENSION」の最後を飾る「灰とダイヤモンド」を聴いてて「一緒にいない私達なんて二度と/想像も出来ないよ/ぶつかりながらも ここにいる奇跡は/偶然じゃない 素敵な意味があるんだ」ってところに(´;ω;`)ブワッと来てしまいました。多分安西氏も灰ダイ聴いてブワッてなったんじゃないかな、と思います。

  • ももクロがなぜ素晴らしいかを、美学芸術学的に説明しようとして、
    「ももクロが素晴らしすぎるから、素晴らしいんだ」っていう結論に行きついた(行きつきかけた)本。
    途中、何度か泣きそうになりました。新書読んで泣くってやばい・・・

    個人的にはすごく価値のある研究だと思います。
    著者の安西先生のももクロへの愛がすごい!

    読んでよかったです。
    研究としてどうのこうのってより、自分も頑張らなきゃって思った。

    あ、でも著者も前半で述べているんですが、
    今からももクロを知りたい人は、この本読むよりも、まずはライブを観ればいいと思う。


    「世界は、ももクロを必要としています」

  • 50代の美学研究者で、モノノフの安西信一さんの「熱量」が伝わってくる本。アツイ本。

  • 洋楽のロックをメインに聴いてきた俺が、この齢になって、今年の春、放送された「ホンマでっか!?TV」「はじめてのモモクロ」を観て、すっかりハマってしまった。CDも買い集めてヘヴィロテで聴いているし、ライブ映像はBlu-rayで2010年から順番に集めて、いま2013年まで追いかけている。著者が引き合いに出す用語からしてチンプンカンプンなのだが、何故ここまで入れ込んでしまうのかを説明したかった熱意は伝わってきた。ただ「ゴチャゴチャ言ってないで、あたしたちと楽しめー!」という煽りが聞こえてくるように思えたw

  • 東京大学で美学を講じていた著者が、ももいろクローバーZの魅力について論じた本です。さまざまな美学思想が参照されていますが、それらは基本的には衒学的な「遊び」だとみなすべきでしょう。著者があえて「好きなもの語り」のスタンスにとどまろうとしているところに、むしろ好感を覚えました。

    著者は、ももクロの楽曲のうちに日本の芸能史のさまざまな引用がちりばめられていることを指摘しながらも、それらに明確な批評性はなく、「対自的」であるよりもむしろ「即自的」であると指摘します。また、ライヴにおける彼女たちの身体パフォーマンスに引き込まれることで、「セカイ系」から「サヴァイヴ系」への脱出する突破口を示しているところに、ももクロの魅力を見いだそうとしています。こうした議論は、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)や『日本文化の論点』(ちくま新書)でAKB48について論じた宇野常寛の議論を踏まえたもので、こうした文脈のなかでももクロが論じられることの必然性は理解できます。

    ただ、こうした魅力のうちにひそんでいる陥穽にも目を向けるべきではないかという気がします。著者は、丸山眞男が「歴史意識の「古層」」において日本文化の執拗低音である「つぎつぎになりゆくいきおひ」について批判的に論じたことを参照しつつも、ももクロの楽曲や身体パフォーマンスのハイブリッドなありように目を向けることで、丸山の議論に基づく批判を回避しようとしています。ところで、著者がやや唐突にも思えるような仕方で丸山の議論をとりあげているのは、おそらく椹木野衣の「悪い場所」に関する議論に基づく批判が著者のももクロ解釈に対して投げかけられるであろうということを想定したうえでのことだと考えて、ほぼ間違いないでしょう。しかしながら、ポストモダンとプレモダンが直結してしまう「日本という場所」において、批評性を欠いた即自的な自己言及や、ライヴにおける身体的な一体感を手放しで称賛することには、戸惑いを覚えます。

  • 2013年刊。著者は東京大学文学部大学院人文科学研究科准教授。◆アイドルグループ「ももいろクローバーZ」ファン(自称はモノノフ未満とするが…)の著者が、彼女らの特徴を解読しようとする書。◇ノンセクシャル(女性性の後景化)、体育会系パフォーマンス(ブラフに見せない。ライブ重視。ファンとの一体化とそそられる庇護欲)、過程の重視(成長・変貌)、アイドル・演歌・アニメーションのごった煮(集大成)等と要約可能か。◇マーケティング観点からの書を読みたかったが、美学芸術専攻の著者のジャンルではなかったかも。
    ◇正誤は別にして、ここに書かれていることくらいが、もっと詳しい人に教えてもらうための予備知識のようなものなのかもしれない。

  • 〈わけのわからなさ〉の秘密
    強烈なライブパフォーマンスを武器に「アイドル戦国時代」の過酷な競争を勝ち抜いてきた「ももいろクローバーZ」略して「ももクロ」なぜ少女達は多くの人々を魅了するのか。その魅力について、自身もモノノフ(ももクロファンの総称)を自称する著書(50代、美学研究者、あーりん推し、箱推し)が熱く語ります!!
    767.8/AN/2F-東7

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