名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)
- 光文社 (2008年8月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334034696
感想・レビュー・書評
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ミュージカル〝エリザベート 〟が大好きで、関連書籍を何冊か読んだ。絵画という切り口も面白そうと思い手に取った一冊。
ハプスブルクが生まれてから終焉まで、代表する絵画とそれに纏わるエピソードが書かれており、周辺国の情勢や裏話等飽きずに楽しく読めた。
どうしても印象的な話や悪い噂ばかりが独り歩きしてしまうけれど、実際はどうだったのかという解釈も非常に面白く勉強になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
13世紀初頭、スイス・アルプス地方の田舎伯爵ルドルフのもとに、偶然転がり込んだ「神聖ローマ帝国」皇帝の座。・・・以降約650年の長きに亘り、ヨーロッパ史の栄枯盛衰を綴ったハプスブルク家、その家系に生きた人物たちが描かれた名画の数々・・・<狂女フアナ><マリ-・アントワネットと子どもたち><エリザベ-ト皇后><マクシミリアンの処刑>などを通して、『怖い絵』シリ-ズの著者が語る、歴史に翻弄された波乱万丈の人間たちの悲話に感慨もひとしお。
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世界史、西欧の歴史
複雑に絡み合い栄華を紡ぐ。
代表的なハプスブルク家の物語を中野京子さんが語るこの書。
史実に基づき淡々と語るものの中には、なかなかレアなものもあったり、何より語り口が毒舌混じり。
そこがたまらなく好きだしより興味を持つ。
ハプスブルク家はマリアテレジア、マリーアントワネット、エリザベートと有名な女帝と政略結婚の妃がある。
最後には第一次世界大戦の引き金となる事件で締めくくり。
読みやすく絵画が奥行きを出すこのシリーズはとても好みの本。 -
ハプスブルグ家の主要人物の生き様を絵画から読み解く。
・序章
第1章 アルブレヒト・デューラー『マクシミリアン一世』
第2章 フランシスコ・プラディーリャ『狂女ファナ』
第3章 ティツィアーノ・ヴィチェリオ『カール五世騎馬像』
第4章 ティツィアーノ・ヴィチェリオ『軍服姿のフェリペ皇太子』
第5章 エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』
第6章 ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』
第7章 ジュゼッペ・アンチンボルド
『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』
第8章 アドルフ・メンツェル
『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』
第9章 エリザベート・ヴィジェ=ルブラン
『マリー・アントワネットと子どもたち』
第10章 トーマス・ローレンス『ローマ王(ライヒシュタット公)』
第11章 フランツ・クサーヴァー・ヴィンダーハルター
『エリザベート皇后』
第12章 エドゥアール・マネ『マクシミリアンの処刑』
ハプスブルク家系図(抄)、主要参考文献有り。
年表(本文関連事項)、取り上げた画家プロフィール。
西洋史の中で大いなる地位を占めるハプスブルク家。
650年も続き、広大なる地域を支配した一族です。
しかし、その内情は・・・12の物語と関する絵で語る人物伝です。
つくづく平凡な自分は、一般庶民で良かったと思いましたね。
王となれば、権謀術数の真っただ中に身を置き、
血族にも信を置けず、孤独に付き纏われ、神経をすり減らす。
家系の維持の為の子作り・・・世継ぎ大事、青い血の維持のために
「血の純潔」を保つために、叔父姪結婚のような近親相姦までも!
産まれても早世、病死、急死、精神を病んだり、幽閉されたり、
暗殺・・・凄惨たる生き様です。
それらを簡潔な文章ながら、分かり易く書いているところが良い。
絵も描かれた背景も、的確な説明で、はっとさせられる事が
多かったです。暗い目や仮面のような顔、そして、
ハプスブルク家系特有の顔・・・なるほど!
「王でもなく大貴族でもなく、貧しくてもいいから一介の
騎士として気楽に生きたかった」というフェリペ二世の言葉が
なんとも真に迫って、虚しさまでも感じてしまいました。 -
親族間での結婚を繰り返した結果としての『ハプスブルク家顔』という、突き出たアゴと膨れた下唇の組合せが並ぶ絵にウケた。
表紙のエリザベート皇后は美しいとの一言。
マリーアントワネットを評したツヴァイクの言葉が残酷だ。
“ときおり芸術家が、世界を包括するような大きな題材のかわりに、一見小さな素材を取り上げて自らの創作力を証明するように、運命もまた、どうでもいいような主人公を探し出してきて、もろい材料からも最高の緊張を生み出せることを、また弱々しく意志薄弱な魂からも偉大な悲劇を展開できることを、わざわざ証明してみせることがある。そのような、はからずも主役を演じさせられることになった悲劇のもっとも美しい例が、マリーアントワネットである。” -
ブルボン王朝に続いてハプスブルク家12の物語。
ハプスブルクといえば、マリア・テレジアとマリー・アントワネット。マリア・テレジアは「少女時代のマリア・テレジアの肖像画」がすぐに思い浮かびます。美人さんだという印象。今回肖像画のタイトル改めて調べて「少女時代」ということに驚く。でも、マリア・テレジアの肖像画の中で一番綺麗だな、と思うのです。でも少女時代ということだとロリコンみたいなことになりそうだ。
違いますよ。
ブルボン王朝で書いた婚姻関係の複雑さの原因は、ほとんどハプスブルクにあるのではないでしょうか。それがあってこその650年という王朝の長さになったとはいえ。
ただ、ルイ14世のような世界を謳歌したという印象はないです。マリー・アントワネットやエリザベート、マクシミリアンの最期のせいではなく、歴史の表舞台に颯爽と現れた英雄という印象がないせいかもしれません。
いや、マリア・テレジアは英雄ではあるのだろうけど、隣のフリードリヒ大王の方が色濃く写ってしまいます。
ま、それも知ってゆくにつれて変化してゆくことですね。その感情の変化を楽しむことができるのも歴史の楽しみ方だと思います。
「ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世」のインパクトの強烈さ。この1枚の強烈さに勝る絵画はないでしょう。表紙のエリザベートの美しさもすばらしいですが、野菜や果物で描いたという衝撃には敵わない。 -
スイスの小国からのしあがり、神聖ローマ帝国の皇統となり、スペイン王家、ドン・カルロ、マリアテレジア、マリーアントワネット等、様々なドラマを生み出した血統をたどる。
有名な肖像画が図版でも多く紹介されていて、イメージしやすい。こんなストーリーが背後にあったのかと驚くばかり。
ベラスケスの描いた傑作ラス・メニーナス。
中央に描かれた可愛いマルガリータ王女もその後叔父に嫁ぎ(近親婚)、早々に亡くなっているという。
なんだか切ない。
中野さんの生き生きした文章に引き込まれ、一気読みしてしまいました。 -
中野京子さんの本は読みやすく絵画に詳しくない私でも楽しく世界史に触れることができるので、大好きです。650年も続いたハプスブルク家。よそ者の血を混ぜるくらいなら例え短命でも親戚同士の結婚をしたり、息子の婚約者を父親が帰って奪ったりすることも厭わなく、領土拡大のための政略結婚日常茶飯事で日本の比じゃない。エリザベートとシシしか知らなかった私には大変勉強になりましたし絵画から歴史を探るのがとても面白かったです。
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ルーブルやプラド等ヨーロッパの有名な美術館に行く前に是非読み返したい作品。
ヨーロッパを長く支配したハプスブルク家をモチーフにした絵画を通し、成立背景や絵の題材とされたし人や時代について解説されていて、実際に絵画を見る際に新しい視点で楽しめた。
特に『狂女ファナ』や『ラスメニーナス』は、知識のあるなしで見方が変わった。