子どもの最貧国・日本 (光文社新書 367)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334034702

作品紹介・あらすじ

家賃を払えず、児童養護施設に預けられる3歳のミヤと4歳のシン。生活保護の申請を受理してもらえず、給食の時間までぐっとお腹が鳴るのを堪える小2のタクヤ…今や7人に1人の児童が経済的に困窮しており、ひとり親家庭はOECD諸国中で最貧困である。日本は、アメリカと並ぶ最低水準の福祉となってしまった。しかも、日本だけが事実を無視し、対策を取らず、貧困の子どもたちを社会的にネグレクトしている。本書は、この問題に対して私たちの認識を研ぎ澄ますために書かれたものだ。日米の児童福祉の現場経験をふまえ、理論・歴史・統計などの多角的な視座で実態を検証し、解決策を考える。

感想・レビュー・書評

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  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90188016

    (推薦者:経済経営学類 藤原 一哉先生)

  • ■学んだこと
    ・貧困問題は自然によってできあがったものではない。社会が作り上げたものなので解決できる
    ・ひとり親家庭はOECD全体で見ても、二人親家庭と比較して3.8倍貧困率が高い。日本は5倍以上の差が現れている
    ・スウェーデンは2/3のひとり親が正規雇用であるのに対して、日本は40%以下でしかない。
    ・日本の母子家庭の就業率は83%、OECDに加盟している国々の中でも高水準。ワーキング・プアが多いことを示している
    ・北欧の国でさえ、政府が介入する前の貧困率は日本とさほど変わらない→日本は政府による福祉の介入が足りない
    ・日本は貧困問題に対して、自己責任論・人的資本論を押し付ける文化がある。貧困問題は世襲が影響(ゲームのルール)している。貧困家庭は子どもを進学させるための費用を賄うことができず、学力の低下を招く。→低収入
    ・2008年のNHKのニュース報道によると、教員の83%が家庭の経済力の差が学力に影響していると答えた。
    ・JELS2003、御茶ノ水女子大学 学力不足は子供の努力不足だと思われていたが、かなり家庭背景に影響を受けていることがわかった。
    ・世帯の所得以上に、親の学歴・職業が大きな影響を与えていると思われていたが、所得のほうが影響が大きいことがわかった
    ・米国保健福祉省 第3回調査  所得が中央値以上の豊かな家庭に比べて、25倍の高さで児童虐待・ネグレクトの危機に晒されている、貧困ラインと中間的な所得の過程を比べても約3倍の危険性
    ・家族の所得が子供の知能に与える影響力は、子どもが幼いときには大きく、思春期には小さく、成人後に大きくなる。
    ・経済的困窮によって、保護者が子育てに気を配れなくなり、発達に悪い影響を与える。保護者のストレスに繋がり、うつ状態になってしまい、子供の発達に悪い影響を与える
    ・マクラナハンの研究 ひとり親家庭という構造的な問題ではなく、ひとり親家庭であることに伴う経済的理由が、高校中退率、ニート率、10代妊娠率に影響を与えている。
    ・松本伊知郎氏 2000人の親に調査 子供のことで家族内外に相談相手がいない割合 低所得家庭に割合が偏っている
    ・貧困の構成要素は、経済的でもあれば心理的でもあり、個人的であれば社会的でもあり、過去のことでもあれば現在のことでもある。どの問題もその他を増幅させ、しっかりと結びついている。
    ・相対的所得仮説は、発展途上国では経済的に豊かになると、平均寿命は伸びるのですが、先進国ではそうはならない。先進国間で、平均寿命の違いを規定するのは、実はジニ係数等によって測られる相対的な所得格差なのです。

  • 思索
    社会

  • 2008年刊。◆日本の子供貧困度、各国との比較、貧困原因、貧困による影響、児童養護施設や生活保護の意義、諸外国の貧困対策の参照等広範な叙述。◆貧困原因が子育て層の就業難・減収にある点、貧困の影響として学力等の格差や児童虐待という指摘は他書にもある。◇が、①ハワイ?の研究者によれば「学力と所得との相関関係は直線的でなく、低所得になるほど傾斜が大となる」点、②低所得者の抑鬱状態の多くは経済問題に依拠するが、僅かな援助でストレス解消、③低所得者は小さな経済的変動が生活基盤を崩壊させる危険大など注目すべき記述多。

  • 2008年に初版の本。この時点では、社会全体に子どもの貧困問題への認識が広がっていないという記述があります。子どもの貧困について、この数年間の変化は大きいと思いました。
    一方で、日本で実際に子どもの貧困の解決への具体的な手立てがとられてはじめているかというと、はなはだ疑問。
    著者は日米での自身のソーシャルワークの経験と、子どもの貧困にかかわる調査研究をしょうかいしながら、子どもの貧困の事例や、原因、貧困のもたらす害悪、対策などについて記述しています。わかりやすかったです。

  • まず著者が基本的に「プロ」の福祉関係者であるという点、そして統計等の基本を学んでいる人物であるということから、記述内容が徒らに主観に走らず、客観的で説得力に富んでいるという点で、安心して読める。
    もちろん、いわゆる「ライター」という現場主義の人たちが歩き回って集めた現場の事実にも価値はあるけれど、まず問題の根本がどこにあるのかという点を「知る」ためにはこのような書き手のものから始めるのがやはり妥当だと思うので。
    子どもの貧困が叫ばれてもう数年は経つと思うけれど、この本に書かれた内容が未だ現実味を十分持って受け取れるということは、状況が一切好転してはいないことの証左だろう。
    だとすれば次はルポルタージュのような現実を捉えたものでこの問題について考えてみたいと思う。

  • 本書での筆者の一番の主張は、日本という国は子供の貧困率が高いにも関わらず、政府はそれを取り上げず、社会的ネグレクトを行っている、ということである。

    私も本書を読むまでは、子供の貧困に対する問題意識は希薄であった。むしろ、日本は豊かな国で他国の子供の同情すらしていた。

    外国のかわいそうな子、というような映像はTV等でよく流されるが、自国の問題はどの程度の意識をもって見ているだろうか。

    本書ではデータの多面的な分析から、貧困が子供に与える影響や、経済的支援の効果がどの程度あるかを示している。

    恐らく、筆者はこの書籍を通じて一人でも多くの市民の意識を改善するために執筆したと思われる。

    御一読ください。

  • 学力・心身・社会におよぶ諸影響 ―
    http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334034702

  • 一言でいうと、ヒンボーは子供にとってどれぼど悲惨かを、データを参照しながら丁寧に裏付けた本。

    とても、教科書的な、内容。

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著者プロフィール

沖縄大学人文学部教授。専門は子ども家庭福祉。主な研究テーマは、子どもの貧困、子ども虐待、保育政策、外国人の子ども。「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人。主な著書は『子どもに貧困を押しつける国・日本』(光文社新書、2014)、『子ども虐待と貧困』(明石書店、2010)など。

「2022年 『外国人の子ども白書【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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