- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334035396
作品紹介・あらすじ
21世紀の大学生は、70年代の暴走族レベル?入試問題や教育関連の統計データの分析から、新たな視点で教育問題に対する処方箋を提示する。
感想・レビュー・書評
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大学生が勉強をしない、学力が低下している、と教授らは嘆くが、自分たちが入試制度を変えたり基礎学力をつけるための対策を取ったりしないから、とのこと。
該当世代かどうかはさておき、比較的若い世代がミスしただけで「ゆとり世代が〜」云々と責められることにずっと違和感を感じていた。原因がゆとり教育にあったとしても、その世代に生まれた人に罪はない。また、生まれた世代の人口により、大学入試の難易度は変わる。センター入試など変わったらしいが、合理的で底上げを図るような制度改革はまだ先なんだろうな。
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【要約】
・大学生の学力の低下、ではなく、学力が低い人でも大学生になれるようになった
・「勉強」の最終終着点は大学入試
・大学入試は志願者を序列化するだけ(学習事項の習熟度ではなく順序が大切
・「勉強」は順序を測る物であり、競争そのものである
・勉強のための「勉強」であり、学問の追及のための「勉強」ではない(そのように捉えられるような仕組みではない)
・「ゆとり教育批判」により、点数至上主義が強まる
・入試の結果よりも大学における初年度教育の出来が専門教育に繋がる
・学びための大学ではなく、入るための大学、ととらえ大学生になっていった人が親となり、次の世代を育てる
・「ゆとり教育批判」に対し、小学校、中学校、高等学校個別での小手先の「改革」
・「日本型教育システムの終焉」とその後の始まりの中で「私たち自身に何ができるか」を考える
・議論の出発点は「大学教育」または「選抜試験」
・「名ばかり大学生」=勉強しない大学生
【感想】
・物事を捉えるには、全体を線でつなげて考える必要がある
・「ゆとり教育」から次のステップに以降した現在の「勉強」は?
・大学の教育、大学入試が今度どのように変化していくのか、またそれに伴い大学生協はどのような取り組みを目指していくのか -
現在の大学入試、ならびに教育のあり方について考えさせられる一冊。
AO入試枠が増えつづける私立大学と、筆記試験の難易度が右肩上がりの国立大学。
「大学で何を学ぶかが大事」なんてきれいごとは、もはや言ってられないレベルにまで、教育格差は広がっている。
現実的な問題点を突きつけるのみでなく、解決策についても検討していて、現状批判にとどまらない点がすばらしい。 -
タイトルを見ると安直なゆとり批判の本かと思いきや、大学生およびそれを取り巻く環境の問題点を「ゆとり」の一言で片付けず資料を元にわかりやすく指摘している良本だった。最近の若者の学力が問題なのは「ゆとり世代」だからではなく、少子化・大学増加・AO悪用による「勉強させない環境」にあることがわかった。と同時に日本の教育行政に危機感・末期感・無力感をおぼえた。
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少子化の影響で誰でも大学に入れる。現役大学生としては確かにこのまま学校に通っていても・・と思うことがある。日本の大学は入ってしまえば出るのは簡単。アメリカの大学は入るのは簡単だが、出るのがものすごく大変。だから一生懸命勉強する。学力低下の根本にはゆとりが大きく関わっていると思う。日本の学力低下を正すには根本からの改革が必要だろう。
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【書誌情報】
『名ばかり大学生――日本型教育制度の終焉』
著者:河本 敏浩[かわもと・としひろ](1967-) 予備校講師。
発売:2009年12月16日
定価:814円(税込み)
ISBN 978-4-334-03539-6
シリーズ:光文社新書;436
判型:新書判ソフト
NDC:377.21 大学の歴史・事情
●「ゆとり教育」が学力低下の原因なのか?
●小学校・中学校のカリキュラムをいじれば、学ぶ意欲が増し、学力は底上げされるのか?
●そもそも学力低下は本当か?
●『分数ができない大学生』の恐るべきあやまちとは?
●暴走族、校内暴力、援助交際、学級崩壊の原因はすべて同じ?
●突然、モンスターペアレントが大量に現れた理由は?
●学力日本一の秋田の大学進学実績はなぜいまいちなのか?
●大学入試の点数は、入学後の成績とまったく関係ない?
〈https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334035396〉
【簡易目次】
はじめに
1章 学力は本当に低下しているのか?
学力の現状
大学生の増員と少子化
二一世紀の大学生は、七〇年代の暴走族レベル
定員を絞ればいい?
2章 競争の激化は何をもたらすか(狭き門の問題
管理教育
荒れる女子高生
いびつな競争のかたち
3章 「学ぶ意欲」を奪うシステム
受験の現代史
絶望的な学力格差
4章 学力日本一・秋田の大学進学実績はなぜ伸びないのか?
秋田は成功事例なのか
勉強をやめる高校生
難しい試験の意義は?
奇妙な論理、奇妙な大学生
5章 日本の大学システムの問題点
名ばかり大学生は今日も行く
まとめと展望
おわりに――学力論から大学論へ -
現代の大学生には十分な学力を持たない層が含まれるとかそれ以前の中等教育の話など面白かった。
さてさて、このような現状で大学入試や教育はどのようにあるべきか。 -
「いつやるか?今でしょ!」で有名な全国チェーンの予備校・「東進ハイスクール」の講師を19年も務め、現在は社団法人全国学力研究会の理事長であり、また私立医学部向け予備校の代表を兼ねる傍らで『医学部バブル・最高倍率30倍の裏側』という著書を出したという、大変にお忙しい河本センセイの本。学力が低く、勉強する気もない「名ばかり大学生」を大量に入学させた上に、全く勉強させないまま社会に送り出すという世界にも類を見ない日本の大学システムの問題点についてあれこれと意見する。戦後60年以上の長きに渡った日本型教育システムが終焉に向かいつつある中で、今後どのような教育制度が築かれていくのかについて言及した一冊。
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Rメモ:160
2009年12月20日初版。
サブタイトルは「日本型教育制度の終焉」。
日本の大学制度への批判と、教育改革の方向性への提言。
小中学校に問題を求める姿勢では学力のない大学生:「名ばかり大学生」はいなくならない。
彼らにとって大学生はアガリであり、そこで勉強する動機はまったくない。
それは社会の側がそういったシステムを作ってしまっているから。
後半に紹介されている東北大学の取り組み:積極的で内容あるオープンキャンパスの事例は非常に興味深い。