日本語は敬語があって主語がない 「地上の視点」の日本文化論 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035846

感想・レビュー・書評

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  •  著者が子どもの頃,父が読んでいた寺田一男著『英語に強くなる本』を読み,英語と日本語との違いに衝撃を受けたといいます。その衝撃の一節とは,日本語の「ここはどこですか?」を英語に訳すと「Where am I?」であったことだといいます。
     現代英語のための文法を日本語に当てはめることのばからしさを語り,「ある」文化である日本語独自の文法創造を提案しています。相撲の四股名にまで話題を広げて自分の主張を裏付けるのは,ちょっと勇み足かもしれませんが,なかなかおもしろかったです。
     今の学校の国語教育(文法教育)に違和感を感じている人には,読んで欲しいです。

  •  「自我を切り離す西洋人」と「自我をつなぐ日本人」
     西洋の〈話し手〉は〈聞き手〉と切れているのに対して、日本語では両者がつながり、同じ方向を向いて視線を溶け合わすと言えるでしょう。
     「他と区別し自立したものとして形成されている西洋人の自我は日本人にとって脅威であります。日本人は他との一体的なつながりを前提とし、それを切ることなく自我を形成します。非常に抽象的に言えば、西洋の自我は『切断』する力が強く、何かにつけて明確に区別し分離してゆくのに対して、日本人の自我はできるだけ『切断』せず『包含』することに耐える強さをもつといえるでしょう」
     英語の「I love you.」は、基本文の一つSVO構文で、動詞「love」をはさんで主語である「話し手=I」と目的語である「聞き手=you」が切り離されています。

  • 「主語」・「敬語」について、視点をポイントに考究しています。

    日本語は「対話の場、地上の視点」、英語は「神の視点」という考え方で、
    この視点は言語のみならず、庭園など文化にも及んでいます。

    この本で印象的だったのは、『「語らう」(katarau)のauは共同性を示す』という部分。
    「語源はローマ字で考える」という姿勢から、
    交互態「あう」(「殴り合う」など)が隠れていることがよくわかります。

    そうしたヴォイスや可能形にも一部言及しているので、
    予想より充実しているように思いました。

  • 敬語や日本語のあいまいさ、といわれている部分をカナダ在住で外国人にアルファベットを使って教えているからこそ解る視点で書かれている。
    この人の本をもう少し読みたいと思った。

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著者プロフィール

1951年北海道生まれ。東京大学教養学部卒業。ラヴァル大学で修士号(言語学)、モントリオール大学で博士号(言語学)取得。専門は類型論、日本語教育。
カナダ放送協会国際局勤務、モントリオール大学東アジア研究所日本語科科長を歴任。
著書に『日本語に主語はいらない』『日本語文法の謎を解く』『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』などがある

「2019年 『日本語と西欧語 主語の由来を探る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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