ロマンポルノの時代 (光文社新書 594)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036973

感想・レビュー・書評

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  • 監督を語ること、女優を語ることはすでに随分なされているため、それ以外に絞った本とのこと。

    筆者の年齢的にも黄金時代がリアルタイムではなかったためか、ロマンポルノ後半に対する記述が多く、また誰もが認める名作に対しての記述が少ない。

    リアルタイムを全く経験していなく、そしてその時代と作品と監督を知りたい自分からすれば少しずらされているイメージ。

    ただし、根岸吉太郎以降にも当然名監督・名作品は存在するため、それらに目をひらかせてくれた点で読む価値はあった。

    また、ロマンポルノ後半中心の本と言ったが、70年代前半のキネマ旬報・映画芸術におけるランキング状況をかなり詳細に、それこそ誰が評価したか、のレベルでフォローしていることは、価値ある資料整理をしてくれた、となるのであろう。

    なお途中に頻発する筆者ご自身の若き日の文章は多くは読み飛ばしてしまった。

  •  71年から88年まで続いた「にっかつロマンポルノ」に捧げるオマージュのような本。Kindle Storeで衝動買い。著者は僕よりちょうど10才年長で、80年代に活躍した根岸吉太郎や中原俊とほぼ同世代で、80年代の作品に対する思い入れも強い。僕のロマンポルノ体験はやっぱり80年代だったので、馴染みのある作品や女優が取り上げられていると、とても懐かしくなる。たとえば、片桐夕子、桃尻娘と竹田かほり、天使のはらわた、風祭ゆき、狂った果実、寺島まゆみ、山本奈津子、百合族、などなど。
     といっても、僕は、当時は女性と付き合ったこともない大学生だったし、著者のような日本映画オタクだったわけでもないので、性や愛の本当の意味も男女関係の襞も理解できないし、この本に書かれているような日本映画全体における位置づけもわかっちゃいないし、ただドキドキしながら女優たちを見ていただけなのだが。
     もし本書に取り上げられているロマンポルノ作品がそのままKindleで(DVDではなくストリーミングで)買えるなら、僕は間違いなくその何本かをポチッとしていただろう。そういう意味では、日本ではAmazon Instant Videoのサービスが始まっていないのは、僕らとしては残念だし、コンテンツ業界としても機会損失になっているのではないだろうか。

     著者が文科省のキャリア官僚だったというのも興味深いけど、「おわりに」では、それまで日本の映画などの公開に厳しい制約のあった韓国で開催された日韓文化交流のイベントで、著者が多くの日本映画とともに数本のロマンポルノを選んだときに、韓国ではおおむね好評だったにもかかわらず国内からバッシングを受けたことが書かれている。
     「(ロマンポルノを韓国で上映した人に)共通するのは、ロマンポルノという名称に対するいわれなき差別である。個々の作品を観て、下品だの下劣だの言うのではなく、最初からレッテルを貼っている。男女の情交場面を描くのがいけないというなら、ポルノと銘打たない現在の作品だって同じだろう。」
     「ロマンポルノは20年以上前、昭和と共に終焉を迎えているため、実際のそれを観ている人が少なくなっている。イメージだけで蔑まれる傾向があるのは否めない。この本を読んでくださった方々には価値をお解りいただけても、世間の眼は冷たく、単なるポルノ映画扱いされる場合も多い。」
     そして、「それが口惜しくて、ロマンポルノの味わいを持った映画を今、自分の手で作ることにした。平成のロマンポルノを作り上げ、広く公開することによって、昭和のロマンポルノの良さを再現できればと思っている。」となる。素晴らしい!
     『平成のロマンポルノ』である「戦争と一人の女」は2013年GWに公開されるようだ。さっそくFaceBookでも「いいね!」を押した。公開を楽しみにして待っていようではないか。
    http://eiga.com/news/20120911/1/

  • 80年代の頃の話は、同時代のこととして懐かしい。

  • 2016/1/28購入
    2016/2/18読了

  • よくもここまで徹底して調べたものだ。

  • 日活ロマンポルノがスタートしたのは、1971年11月。終焉は88年です。

    高評価を得た作品の多くが初期に集中しているため、ロマンポルノに関する評論は70年代初期に焦点を当てたものが多いのですがこの本は違います。16年間の変遷をきちんと概観できるようになっています。

    さらに、監督や女優に焦点を当てがちですが、脚本家にも言及し、また「男優」として1章設けているなど、全体像を把握するのに役立ちます。
    また、上映当時の寺脇氏の評論がそのまま載っていて、時代の息遣いを感じることもできます。
    http://www.nikkatsu.com/100th/rp100

  • ロマンポルノ自体に興味があるワケではないが、世相を濃く反映しているようで、比較文化論のように読むとおもしろい。沁みたのは現代の若者がセックスで他者承認を満たすという件で、沁みたのは自分自身がそうだからに違いなく、的確だと思った。筆者の経歴を知った上で読むとそれはまた別の趣がある。

  • 残念ながらリアルタイムで追いかけたことがない。後に特集上映やビデオで観た程度。16年間の変遷を概観するのには便利な一冊。

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著者プロフィール

1952年福岡市生まれ。映画プロデューサー、映画評論家、落語評論家、京都造形芸術大学客員教授。東京大学法学部卒業。1975年文部省(当時)入省。初等中等教育局職業教育課長、広島県教育委員会教育長、高等教育局医学教育課長、生涯学習局生涯学習振興課長、大臣官房審議官、文化庁文化部長を歴任。2006年退官。著書に『国家の教育支配がすすむ 〈ミスター文部省〉に見えること』(青灯社)、『危ない「道徳教科書」』(宝島社)他多数。

「2022年 『教育鼎談 子どもたちの未来のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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