SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334039615

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  • SMAPについて語ると収拾がつかなくなりそうなので…高校生の頃英語の日記を書くという宿題で、「自分はSMAPが好きなんだが、ずっと彼らをテレビで見ているせいか、彼らがただの芸能人であることはわかっているけどなんだか付き合いの長い知り合いのような感じがする」といったもはや日記ですらないくだらないことを書いたら、ネイティヴスピーカーの先生から「テレビの力って恐ろしいものですね。ジョージオーウェルの1984という本をぜひ読んでみなさい」という遥かな高みからのお返事をいただいた苦い思い出を告白するにとどめることとします(ちなみに未読)。

    や、しかし。本書を読んだら、その「知り合いかと思えてきちゃう感じ」こそがSMAP人気のミソだったのでは?私けっこう核心ついてたのでは?と思えてきました。
    奇しくも1984年生まれである私にとって、夢中になった芸能人はSMAPが初めてくらいなので、それ以前のアイドルやらスターやらとSMAPがどう違ったのかという視点は、実体験としては持ち合わせていません。
    でもこうした本やネットでの言説によると、光GENJIまでは手の届かない王子様系だったアイドル像が、SMAPからは身近でフツーで、作られていない等身大の受け答えをする男の子、というのに変わったというのが定説のようです。女性アイドルではおにゃんこクラブというのがいたり、背景には歌謡曲業界の制度変化があったり、歌番組の衰退、バラエティ番組やお笑いの隆盛があったり、SMAP自身もデビュー当初は不遇の時代があって苦労してきたという歴史があったり、まあそんなようなことがよく説明されています。

    本書でもそうした内容が述べられますが、テレビやラジオやインタビューやエッセイ本などでメンバーたち自身が語っている言葉を多くとりあげて、SMAP本人たちにとってのSMAPとは何だったのかとか、SMAPとしてどう社会と関わろうとしたのかとか、そういうようなことを語ろうとしているところが特徴的でした。
    データや事実だけでなく本人の言も確認していく肉迫感は嬉しいし、やはり「彼らもこういう気持ちのはず!だよね!」と思いたい気持ちを満たしてくれる面はありますが、それってちょっと僭越じゃないのって言いたくなったりもします。
    そんなわけでストーリー作りに恣意的な部分があった感はあるものの、そこはライトファン同士わかりあえるところでもあり、タイトル・副題の印象に反して「同じ気持ちをわかちあえた」みたいな読後感がありました(笑)

    それでいうと、冒頭の英語の先生とは少なくともあのポイントにおいては全く気持ちが通い合わなかったということになりますが、私も30をいくつか過ぎ、テレビをほとんど見なくなった時期も経て、今になってみるとテレビにのめり込んでいる若い子に「まあ落ち着け」と言いたくなる気持ちもよくわかる。アメリカではトランプ大統領誕生で1984の売り上げがあがっているというニュースも耳に新しい今こそ、ついに私も1984を読むべき時なのでしょうか…。

  • SMAPがなぜ従来のアイドルの枠を超えた人気をここまで集めたのか、平成と共に始まったSMAPの快進撃の秘密を解き明かす。それまでのアイドルはファン層が同年代だったが、彼らは幅広い老若男女に愛された。平成のクレージーキャッツ、あるいはドリフターズというとピンと来ない面があるが、確かに社会学的には同じ現象なのだろう。5人(及び独立した森克行君)の活躍の歴史を辿りつつ、SMAPが解散した今の時点で、凄く大きな淋しさを感じる。

  • SMAPが活動した平成という時代は、日本そのもの、そして暮らしが先行きの見えない不安にさらされた時代でもあった。SMAPひいてはアイドルは、社会とどのように関わったかを考えるエンターテインメント論。

    以前読んだSMAP本よりはまとまっている。

著者プロフィール

1960年生まれ。社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本、お笑い、アイドル、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を展開。著書に『社会は笑う』『ニッポン男性アイドル史』(以上、青弓社)、『アイドル進化論』『紅白歌合戦と日本人』(以上、筑摩書房)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)ほか多数。

「2021年 『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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