世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 光文社 (2017年7月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334039967
感想・レビュー・書評
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サイエンス的な思考によって導かれる答えはもはやコモディティ化しており、ましてやVUCAと言われる昨今の世の中においては通用し得ない状況にある。そんな中私たちが立ちかえるべきアート的な思考とは?具体的な例も交えつつ説明されていて大変面白かったです。
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答えのコモディティ化とレッドオーシャンの内容が面白かった。論理的・理性的に物事を考えるよう求められた。故に「1+1=2」のような公式ができてしまい、多くの人が同じ答えに辿り着けるようになった。しかし、経営においては「差別化」が重要視されるため、このような答えには価値がなくなった。耳が痛い理屈だと思うけど、そのとおりだなと感じさせられた。だからこそ、アカウンタビリティは持たないけれど、なんだかわくわくさせてくれる「アート」に視点を向ける考え方は面白かった。
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「世界のエリート」「教養」「〇〇な人だけが知ってる/やってること」「〇〇な人は〜しかやらない」系の言葉がタイトルやキャッチコピーに入っているだけで書籍を読む気を失いがちだが、買ってあった本なので読んだら、内容は現実的だが論理性偏重なビジネス界の欠点について述べられていてなかなか面白かった。
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「美」という言語化が難しい領域を論理的に重要さを解説しています。これは、かなり困難なことだと思いますが、それをやり遂げている山口さんはさすがと思います。
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新しい価値観が得られた一冊。
期間を空けて読み直したい。 -
上司に勧められ読んだが、大変面白く、勉強になった。これまで美意識や感性はビジネスとは無関係だと考えていた為、目から鱗であった。絵には少し興味があるが、これまで哲学や詩には触れたことがなかった為、是非読んでみようと思う。
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経営における「サイエンス(科学)」の限界と「アート(美意識)」の重要性について語られる名著。
類似した書籍が非常に少なく、山口周さんらしい一冊。
これまでのような分析・論理に軸足を置いた経営、つまりサイエンス重視の意思決定では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスのかじ取りをすることはできない。
正解のコモディティ化が起きているので、サイエンスに基づく意思決定では差別化ができなくなっているということが主眼。
◯美意識を鍛えるムーブメントが起きている
・欧米のエリートがギャラリートークに参加し意識的に美意識を鍛えている
・名門美術系大学院が企業向けのビジネスとして幹部候補のトレーニングを手掛けている
◯美意識を持つとどうなるか
・自己認識能力が高くなる
・成果を出し続けるリーダーは自己認識の能力が高い。自分の状況認識、強みや弱みの認識、価値感や志向性など自分の内側にあるものに気づく力
・「悪とは、システムを無批判に受け入れること」哲学者アーレント
・学校という組織の中では、どうしたら点数が上がるのか評価が上がるのかが明確である。でも、社会に出たらそうではない。結果も評価も生きる環境で違う。だからこそ、自分で判断する力が必要
・システムの変化にルールが追い付かない世界で、自分なりの美意識をもち、システムを相対的に比較することが必要になる
・客観的な外部のものさしではなく、主観的な内部のものさしが必要。美意識を持つと、ものさしができている。そして鍛えられた美意識は美しく強い
◯美意識を鍛えるためには?
・絵画を見る:洞察力の向上(何が描かれている?今はどの状況、これからどうなる、自分はどういう感情になった)
・哲学を勉強する:気づき、哲学者の社会への向き合いかた(哲学の歴史は、疑いの歴史。システムの変化にルールが追い付かない世界で、自分なり尺度で判断できるようになる)
・誌を読む:比喩の表現が増える(詩を読むことでメタファーの引き出しを増やす。人のこころを動かす表現には、いつも優れたメタファーが含まれている)
◯アートな例
・ソニー ※昔。基準は「面白いか?愉快か?」 ウォークマンはそうして生まれた
・武芸家 松浦静山「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」論理ではうまく説明できない価値はあるが、論理で説明できない負けはない
※野村監督で有名な言葉だが、野村監督は松浦静山の言葉を用いているだけ
・アップル シンプルへのこだわりはアートの最たるもの。
◯まとめ
経営は「論理」「理性」(サイエンス)に頼るのは問題で、社会が複雑化した昨今、解は導き出せない。
ある程度のサイエンスを各々踏まえた上で「哲学」に代表される「美意識の育成・感性の研鑽」していくことが不可欠。
◯メモ
・直感はよいが、非論理的はNG。それはただのアホ
・勝負をしたらサイエンスが強く、アートが負ける。アートはアカウンタビリティが薄く、批判しやすい。故に、多くの企業では経営や意思決定において「アート」が軽視されがちになる
・理性と論理に頼ると、正解を出す技術は高まるが、みんな同じ正解にたどり着きレッドオーシャンになる
・アカウンタビリティだけでは、リーダーシップの放棄ができる。定量的で合理的な説明ができれば、それが仮に間違っていたとしても言い訳ができる -
タイトルからして、「①提供する商品に対する外面的な美意識」の内容がメインかと思っていたが、「②人間性としての内面的な美意識」についても書かれていてなるほどと思う事が多かった。
①については、自己実現欲求の市場が大きくなっているという部分について、日頃からなんとなく感じていることが上手く言語化されていてスッと内容が理解できた。
②については、自分の所属する組織について深く考えさせられる内容だった。
日本は「罪の文化」ではなく「恥の文化」だから、"考え方が美しくない違和感のある仕事"も、自分の所属する周囲の人が同じ考え方で同じ仕事をしていると、その仕事や考え方でいいんだ、と違和感を無視することになってしまう。そうしてだんだんと違和感がなくなってきた人たちが集まることによって会社の空気や風土となるんだなと思った。それが三菱自動車のような不正が蔓延る組織へと変わってしまうというのはすごく怖いなと思った。
自分が所属しているシステムに最適化することで多くの利益を享受している会社のエリートには、システムを改変するインセンティブが働かないというのもその通りだと思った。
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総じて「美意識」はとても抽象的な概念で、「自分なりのものの見方で世界を捉え、その自分の感じ方や直感に自信をもつ」ということなのかなと感じた。
また逆にそう言った"アート"の思考が弱い"サイエンス"側の人に自分の直感を論理的に伝えるためにも、サイエンス側の考え方も理解し、アートの意見をできるだけサイエンスに落とし込んで伝えるスキルが必要なのかなと感じた。 -
【星:5.0】
内容に引き込まれて1日で読み切ってしまった。
ビジネスにおいて、論理やデータなどサイエンスの重要性が強く言われる中、直感・閃き・倫理・哲学などのアート面も重要であることが論じられている。
このような主張を学者が言っているのは目にするが、ビジネス界に身を置く著者が語ると迫力が全く違う。
芸術・哲学・修辞学などいわゆるリベラルアーツといわれるものを学ぶ意義を強く認識させてくれる貴重な1冊であった。