劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)
- 光文社 (2018年9月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334043735
感想・レビュー・書評
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山口さんの少し前の書籍。
ある人が薦めていたので、読んでみました。
タイトルからは、そんなに期待していなかったですし、
読んでいて少し論理展開に無理があるなぁ…と思いながら読んでいたのですが、
さすが山口さん、山口さんの思考をなぞるのが途中から楽しくなってきました。
確かに、細かい点で突っ込みたいところは色々とありましたが、
それでも山口さんがこれまでインプットしたリベラルアーツから、
この考えを抽出されたのかと思うと、とても興味深く読めました。
・明治維新・太平洋戦争と革命ともいえる変革は、80年周期で起こっていると考えると、次は2025年(もう、すぐそこ!)。
・権力者に圧力をかける方法は、オピニオンとエグジット。何もしないのは、権力者に同意しているのと同じ。
・イノベーションには大物とバカが必要。
・人が最も変化しやすいのは、新たな経験と自身がもつ既存の理論とがぶつかるとき。(ジェームズ・E・ズル))
・なにかにチャレンジをするということはそれまでにやっていたなにかを止める、ということ。
・オッサンが再び輝く方法:サーバントリーダーシップと学び直しによる自身の社会的な位置づけのパラダイムシフト
個人的には、オッサンにも問題があるだろうけど、
イケてない若者もたくさんいて、
オッサンからすると突っ込みたくなるような気がしないでもないです。
イメージ、経営者になるような人は、オッサンでもそれなりの見識と価値観をお持ちなような気がしますが、
窓際部長で生き残ろうとしている人は、
確かに本に書かれているようなオッサンに当てはまるかな、という心象。
加えて、悩ましいのは、若者の中で本物のイノベーションを生み出すバカ者を見つけるのが、
至難の業ということ。加えて、バカ者のアイデアも百発百中という訳ではないだろう。
イノベーションなんてそんなもの(裏で失敗がたくさんある)、
というのは重々承知している前提で、この問題は、
オッサンの質が低いという著者の主張と本質は一緒なような気がする。
ひるがえって、(日本と比べて)アメリカではイノベーションがたくさん生み出されると仮定すると、
アメリカにはオッサンがいなからイノベーションが起こるのではなく(多分、アメリカにも相当数のイケてないオッサンはいるはず)、
一定母数の大物(バカ者をサポートする人、アメリカの場合はVC)がいることではないか、と個人的には考える。
イケてないオッサンの中の一定割合(ただし、割合は限りなく低い)で大物がいるとすれば、
大切なことは母数を増やすこと、つまり人口が多い国(あるいは、マーケットの大きな国)の方が結局は有利ということか。。
なんてことを考えながら、本を読みました。
細かい賛否はあるかもしれませんが、
こういうスタンスが取れるような人にはなりたいと思います。 -
社会インフラ整備とともに年長者はデータベースとしての役割を終え、加齢に応じてやるべきこと(普遍的なもの)を再考する必要がある。30-40代は読むべき。とても面白いがゆえに、ロジックにやや飛躍感があり星4つ。
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タイトルがイマイチで長い間積読になっていたが、読み始めたら面白くてあっという間に読んでしまった。こうして複雑な概念をバカでも理解できるように整理して提示してくれる頭の良い人に感謝。論理展開がイチイチ合理的で、外資系コンサルの経歴に納得。世代論の分析も元広告マンらしい視点だ。
敢えて自分を棚に上げて言えば、身の周りにも「劣化したオッサン」の例を悲しいほど見ることができる。同時に数は圧倒的に少ないものの、「味のあるオッサン」もまた存在する。不思議なのは味のある若者というのには出会ったことがなくて、この「味」が結晶性知能という概念の一つの表出なのだろう。
ちょっと引っ掛かるのは、安易に転職を勧めすぎること。いくら失敗は人生の糧だといっても、日本は一度失敗したら敗者復活が極めて難しい社会なのだから、家族を路頭に迷わせてまで挑戦する事がQuality of lifeに繋がるかどうかかなり疑問である。著者のような極一部のタレントに恵まれた人たち限定の話に思える。 -
教養のないオッサンがセクハラ、パワハラを
やりがちなメカニズムを喝破。
自分も気をつけよう…。 -
タイトルは挑発的だが、内容はごく真面目な論考である。
本書で槍玉に挙げられているのは日本の50~60代の男性。なので、私自身(54歳)も年齢的には範疇に入る。
ただし、本書における「オッサン」の定義は、次のような行動様式を持つ人である。
1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
私自身は、「1」についてはちょっと危ういが、それ以外はセーフかな。そもそも、「過去の成功体験」も「既得権益」も権力も持ってないし(笑)。
1~4にすっぽりあてはまる困ったオッサンは昔からたくさんいたわけだが、たしかに最近、オッサンたちの劣化ぶりが白日の下にさらされる出来事が増えた。
それはなぜかという背景要因を、著者はさまざまなデータやエピソードの積み重ねであぶり出していく。
そして、①そういうオッサンにならないために何を心がけるべきか、②そういうオッサンに周囲がどう対処していくべきかという、二方向の「処方箋」を提示していくのだ。
山口周の著作の多くは広義の「ビジネス書」だが、クズ本が多いこの分野にあって、金を出して読むに値する数少ない書き手の一人である。
本書は、大局的な日本社会批評であると同時に、これからの時代にふさわしいリーダー論であり、組織論であり、さらには幸福論でさえある。
会社員のみならず、私のようなフリーにとっても示唆に富む好著。 -
人に勧められて読んでみたが、ほとんど興味がわかず、途中で読むのを断念。
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成功体験と既得権益に固執するオッサン社会というのは、名著イノベーションのジレンマを噛み砕いたような、わかりやすい論旨です。引用のバリエーションや文章そのもののうまさもあり、さすが、売れっ子さんだけはある。
嘆くだけでなく、きちんとオピニオンとイグジットの対処法もあり、組織で閉塞気分な方には響くのではないか。
ただね、やっぱり年をとると感覚や運動神経や適応力は落ちてしまうのよ。それを単なる経験だけでは代替できないとする社会がはたして幸福なのだろうか。資本主義と自由経済の文脈の中では難しい部分もあり、社会システム含めて考えないといけないのでは。