劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043735

感想・レビュー・書評

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  • <どんな本?一言で紹介>
    働く人にとって「老いる」とはどんなことか。
    新しい時代の波に乗るため、「老化」しないように、さび止めをしよう!

    <どんな人におすすめ?>
    年金支給される年齢まで、働く人。
    50代60代の上司の考え方を知りたい人。

    <読んだら、どんなことが分かるの?>
    これまでの日本のサラリーマンの考え方の変遷と、
    ビジネスマンとしての老化防止する方法。

    ・「オッサン」の定義。「オッサン」は年齢で決まらない。
    ・50代・60代のビジネスマンは「大きなモノガタリ」のなかで20代を過ごした最後の世代。

    ・組織における、リーダーの質が低下するメカニズム
    ・「劣化したオッサン」に立ち向かう武器

    ・「オッサン」に必要な武器

    <日々の生活、仕事などに活かせるポイント>

    1.サーバントリーダーシップの発揮
    「オッサン」は、これまでの支配型リーダーシップではなく、「支援する」ことでリーダーシップを発揮できる。懐の深さを発揮し、人脈・金脈・ポジションパワーを使って、若手・中堅リーダーを支援していく。

    2.劣化予防は「劣化しない知能を身につける」こと
    「オッサン」が、サーバントリーダーシップを発揮するには、若手に対して深い思考を促すような、本質的な問いかけが必要。そのためにの「教養」が不可欠だ。

    3.80年に一度の革命的変化
    人材に一流、二流、三流があるとするならば、一度でも二流がトップに立ってしまうと、よほどのことがない限り、その組織に一流の人材が入ってくることはない。
    人材のクオリティは世代交代するにつれて、三流に収斂していく。組織が大きく古くなればなるほど、この劣化はより顕著にあらわれる。

    (一度劣化した組織は、時代の大きな変革期によってガラガラポンするほかない。)

    <感想>
    現状の会社が、劣化した組織だなって感じたなら、何か対策を考えないといけない。いいきっかけになる本だ。

  • 山口さんの少し前の書籍。
    ある人が薦めていたので、読んでみました。

    タイトルからは、そんなに期待していなかったですし、
    読んでいて少し論理展開に無理があるなぁ…と思いながら読んでいたのですが、
    さすが山口さん、山口さんの思考をなぞるのが途中から楽しくなってきました。

    確かに、細かい点で突っ込みたいところは色々とありましたが、
    それでも山口さんがこれまでインプットしたリベラルアーツから、
    この考えを抽出されたのかと思うと、とても興味深く読めました。

    ・明治維新・太平洋戦争と革命ともいえる変革は、80年周期で起こっていると考えると、次は2025年(もう、すぐそこ!)。
    ・権力者に圧力をかける方法は、オピニオンとエグジット。何もしないのは、権力者に同意しているのと同じ。
    ・イノベーションには大物とバカが必要。
    ・人が最も変化しやすいのは、新たな経験と自身がもつ既存の理論とがぶつかるとき。(ジェームズ・E・ズル))
    ・なにかにチャレンジをするということはそれまでにやっていたなにかを止める、ということ。
    ・オッサンが再び輝く方法:サーバントリーダーシップと学び直しによる自身の社会的な位置づけのパラダイムシフト

    個人的には、オッサンにも問題があるだろうけど、
    イケてない若者もたくさんいて、
    オッサンからすると突っ込みたくなるような気がしないでもないです。
    イメージ、経営者になるような人は、オッサンでもそれなりの見識と価値観をお持ちなような気がしますが、
    窓際部長で生き残ろうとしている人は、
    確かに本に書かれているようなオッサンに当てはまるかな、という心象。

    加えて、悩ましいのは、若者の中で本物のイノベーションを生み出すバカ者を見つけるのが、
    至難の業ということ。加えて、バカ者のアイデアも百発百中という訳ではないだろう。
    イノベーションなんてそんなもの(裏で失敗がたくさんある)、
    というのは重々承知している前提で、この問題は、
    オッサンの質が低いという著者の主張と本質は一緒なような気がする。
    ひるがえって、(日本と比べて)アメリカではイノベーションがたくさん生み出されると仮定すると、
    アメリカにはオッサンがいなからイノベーションが起こるのではなく(多分、アメリカにも相当数のイケてないオッサンはいるはず)、
    一定母数の大物(バカ者をサポートする人、アメリカの場合はVC)がいることではないか、と個人的には考える。
    イケてないオッサンの中の一定割合(ただし、割合は限りなく低い)で大物がいるとすれば、
    大切なことは母数を増やすこと、つまり人口が多い国(あるいは、マーケットの大きな国)の方が結局は有利ということか。。
    なんてことを考えながら、本を読みました。

    細かい賛否はあるかもしれませんが、
    こういうスタンスが取れるような人にはなりたいと思います。

  • タイトルは少々軽いイメージを与えるが、内容は非常に骨太であり、得るものが多い著書であった。
    オッサンというっても全てのおじさん世代を指しているわけではなく、古い価値観を捨てられない世代が現代の社会を停滞させていることを論破している。そして、今の停滞した日本社会をどのように変えていけばよいかについても示唆している。
    ちなみに本書では現代社会の問題点を浮き彫りにすることを主眼においており、タイトルにある「処方箋」については後に出版された「ニータイプの時代」に詳しく記載されていると感じたので、ぜひセットで読むことをお薦めしたい。


    本書でのオッサンとは、1.古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する、2.過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない、3.階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る、4.よそ者や異質なものに不寛容で、排他的、と定義している。

    本書の主要なメッセージは以下の4点。
    1.組織のトップは世代交代を経るごとに劣化する。
    2.オッサンは尊重すべきだという幻想を捨てよう。
    3.オピニオンとエグジットを活用してオッサンに圧力をかけよう。
    4.美意識と知的戦闘力を高めてモビリティを獲得しよう。

    そしてそのカギとなるのは「良質な仕事体験」と「社外での活動」ということになる。

    されば才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思ひくづをれて、止ることなかれ。とてもかくても、つとめだにすれば、出来る者と心得べし。(本居宣長「うひ山ぶみ」)


    20代は人生を決定づける10年であり、この時期にその後のキャリアを形成するための知識やネットワークの構築、マインドセットの書き換えを作る。日本人の多くはこの時期に会社の中に閉じこもって会社の中でしか通用しないスキルしか身につけていない。

    オッサンは70年代に絶滅した「教養世代」と、90年代以降に勃興した「実学世代」のはざまに発生した「知的真空の時代」に大学時代を過ごしている。


    組織のリーダーは構造的、宿命的に経時劣化する。

    人事評価では能力や成果が正規分布していることを前提にしているが、実際はパレート分布しており、三流が数の上で圧倒的多数はである。「数」がパワーとなる現代市場や組織において、構造的に最初に大きな権力を得るのは、大量の三流から支持される二流となる。そして、少数の二流の人間は、実際は誰が一流なのかを知っているので、周辺の一流の人間を抹殺してしまう。こうして、二流のリーダーが率い、三流のフォロワーが脇を固める一方で、一流と二流の人材は評価されなくなってしまう。さらに二流のリーダーが引退し、脇を固めていた三流のフォロワーがリーダーとなり、組織の劣化は不可逆的に進行してしまう。これが現代の日本の多くの組織でおきている事象である。これはリーダーだけの話ではなく、採用や人事でも同様のことが起こっている。

    これは「選出」だけでなく、「育成」でも同様であり、「凡人」には「凡人」しか育てることができないため、組織の劣化に輪をかけてしまう。

    これはエントロピーの増大であり、大きくて古い会社ではより顕著に現れる。東証一部より東証二部の株価が大きく上回っているのが、その証拠である。


    社会で実験を握っている権力者に圧力をかけるとき、そのやり方には「オピニオン」と「エグジット」がある。オピニオンとはおかしいことにはおかしいと意見すること。エグジットとは、権力者からの影響から脱出すること(つまり転職など)。

    一連の不祥事を起こした企業に身を置きながら、オピニオンもエグジットもしないということは、権力者を支持していることと同義である。

    この2つを実行することで会社内での立場が悪くなることを気にしないためには、汎用性の高い知識やスキルなどの「人的資本」と、信用や評価といった「社会資本」を身につけ、自分の「モビリティ」を高めるしかない。
    日本企業に長くいると、この二つの資本が会社内に閉じて形成されることになるため、まったくモビリティが高まらない。そのためには、副業や兼業など社外での活動が有効的。


    現代社会では環境の変化が速いため、年長者の経験や知識、スキルに基づく判断力はすぐに役立たなくなってしまう。それにも関わらず日本社会では年長者は尊重されなければならないと無条件に考えている。合理的な根拠がないにもかかわらず信じるという行為を「信仰」という。この信仰に依拠しているのは「儒教」という宗教です。実際に国によって年長者に対する考え方は異なるのです。

    組織のポジションと能力や人格には、統計的にあまり相関がないことが分かっている。ほとんどの企業の人事評価は、だれが高い評価を得るかはあらかじめ決まっており、その基底評価と帳尻が合うようにして、評価制度という茶番は運用されている。
    仕事ぶりや能力は昇進や人事評価にあまり関係がないことが分かっており、出世した人は、強欲で権力志向が強く、プライドを捨てて上司にオベッカを使ったから出世したということになる。このような人を敬う必要があるのだろうか。

    これは20世紀前半までは社会変化のスピードが遅かったため、年長者の経験やスキルが頼もしい知恵として重宝されてきたが、その後に急速に社会が変化してきたため年長者のそれらはあまり価値のあるものではなくなってきた。むしろ「大胆な直観」や「緻密な分析・論理」が重要となるが、これらは全般に年齢の若い人のほうが得意である。

    知的パフォーマンスのピークが若年化する社会において、年長者は「劣化しない結晶性知能を身につける」必要がる。これからのリーダーに求められるサーバントリーダーシップにおいても重要であり、若手に対してコーチングやメンタリングを行い支援しようとすれば、実務的な知識よりも、より深い思考を促すような本質的な問いかけをおこなうための「教養」が必要になる。そして、この教養とはリベラルアーツであり、古典に学ぶということに他ならない。

    これに対して従来の「支配型リーダーシップ」とは、自身の経験に基づく有能さであり、だからこそ「思考し命令するのは自分」であり、「命令に従い実行するのは部下」という組織になる。しかしこのモデルは環境変化が激しい時代にはふさわしくない。


    人間の成長は学習という概念と深く関連しており、学習は「経験の質」に関わってくる。「経験の量」は成長にとって重要ではない。つまり、成長するためには「新しい経験の密度」が必要になる。

    個人の能力開発には「70:20:10の公式」と呼ばれるものがある。これは、個人の能力開発の70%は、実際の生活経験や職業上の経験、仕事上の課題と問題解決によって発生する。これを一般的に「直接学習」という。次の20%は、職場や学校などで、模範となる人物(ロールモデル)から直に受ける薫陶(対人的学習)や、観察と模倣から起こる。これを「間接学習」という。残りの10%は、学校や研修などのフォーマルなトレーニングとなる。

    つまり、個人の成長のためには「職場でよい経験」をすることが決定的に重要だということを示している。しかし、実際には良い業務経験を積めるような重要なポジションを年長者が占拠している、そしてリーダーシップの停滞がある。後者について、良いリーダーは良いアジェンダを設定する。良いアジェンダは良い業務体験に直結するので、リーダーによるアジェンダ設定の巧拙は、部下の業務経験の質を左右する。


    権力は「情報の独占と支配」によって、その生命を維持してきた。しかし、「情報の普遍化」によって、これからは「権力の弱体化」が進む。一方で弱体化する権力は躍起になってその支配力を強めようとする。


    これからは学びの密度を上げることが重要になる。つまり「同じ入力に対して、より良い出力を返せるように自分というシステムを変化させること」が重要である。そのために「色々なことにチャレンジする」が大切であり、何かをチャレンジする、ということはそれまでにやっていたなにかを止める、ということでもある。つまり「なにかを止めないと、なにかをチャレンジできない」ことがチャレンジの難しさの本質。
    常にチャレンジし、失敗を経験することで良質な結晶性知能が蓄積されれば、そのような知能や経験は、その人が世の中を生き抜いていくうえで大きな武器になる。一方で、退屈ゾーンやリラックスゾーンにとどまっていれば、大きな失敗もなく安定しているかもしれないが、環境変化に対して脆弱な不安定な人生になっていしまう可能性がある。

    それになりに頑張っているが、しっくりこない、なにか違う気がするという人は、「逃げる勇気、負ける技術」がないからかもしれない。

  • オッサンは年齢というわけでなく、変化を嫌い既得権益を守り進歩せず排他的な者を象徴している。
    このオッサン組織に、ノーを突きつけるのがオピニオン、駄目ならエグジット、それを担保するモビリティ能力を身に付けるんだよ、と云うハナシ。

  • 社会インフラ整備とともに年長者はデータベースとしての役割を終え、加齢に応じてやるべきこと(普遍的なもの)を再考する必要がある。30-40代は読むべき。とても面白いがゆえに、ロジックにやや飛躍感があり星4つ。

  • タイトルがイマイチで長い間積読になっていたが、読み始めたら面白くてあっという間に読んでしまった。こうして複雑な概念をバカでも理解できるように整理して提示してくれる頭の良い人に感謝。論理展開がイチイチ合理的で、外資系コンサルの経歴に納得。世代論の分析も元広告マンらしい視点だ。
    敢えて自分を棚に上げて言えば、身の周りにも「劣化したオッサン」の例を悲しいほど見ることができる。同時に数は圧倒的に少ないものの、「味のあるオッサン」もまた存在する。不思議なのは味のある若者というのには出会ったことがなくて、この「味」が結晶性知能という概念の一つの表出なのだろう。
    ちょっと引っ掛かるのは、安易に転職を勧めすぎること。いくら失敗は人生の糧だといっても、日本は一度失敗したら敗者復活が極めて難しい社会なのだから、家族を路頭に迷わせてまで挑戦する事がQuality of lifeに繋がるかどうかかなり疑問である。著者のような極一部のタレントに恵まれた人たち限定の話に思える。

  • 教養のないオッサンがセクハラ、パワハラを
    やりがちなメカニズムを喝破。
    自分も気をつけよう…。

  • タイトルは挑発的だが、内容はごく真面目な論考である。

    本書で槍玉に挙げられているのは日本の50~60代の男性。なので、私自身(54歳)も年齢的には範疇に入る。
    ただし、本書における「オッサン」の定義は、次のような行動様式を持つ人である。

    1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
    2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
    3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
    4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

    私自身は、「1」についてはちょっと危ういが、それ以外はセーフかな。そもそも、「過去の成功体験」も「既得権益」も権力も持ってないし(笑)。

    1~4にすっぽりあてはまる困ったオッサンは昔からたくさんいたわけだが、たしかに最近、オッサンたちの劣化ぶりが白日の下にさらされる出来事が増えた。
    それはなぜかという背景要因を、著者はさまざまなデータやエピソードの積み重ねであぶり出していく。

    そして、①そういうオッサンにならないために何を心がけるべきか、②そういうオッサンに周囲がどう対処していくべきかという、二方向の「処方箋」を提示していくのだ。

    山口周の著作の多くは広義の「ビジネス書」だが、クズ本が多いこの分野にあって、金を出して読むに値する数少ない書き手の一人である。

    本書は、大局的な日本社会批評であると同時に、これからの時代にふさわしいリーダー論であり、組織論であり、さらには幸福論でさえある。

    会社員のみならず、私のようなフリーにとっても示唆に富む好著。

  • 人に勧められて読んでみたが、ほとんど興味がわかず、途中で読むのを断念。

  • 成功体験と既得権益に固執するオッサン社会というのは、名著イノベーションのジレンマを噛み砕いたような、わかりやすい論旨です。引用のバリエーションや文章そのもののうまさもあり、さすが、売れっ子さんだけはある。
    嘆くだけでなく、きちんとオピニオンとイグジットの対処法もあり、組織で閉塞気分な方には響くのではないか。

    ただね、やっぱり年をとると感覚や運動神経や適応力は落ちてしまうのよ。それを単なる経験だけでは代替できないとする社会がはたして幸福なのだろうか。資本主義と自由経済の文脈の中では難しい部分もあり、社会システム含めて考えないといけないのでは。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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