「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実 (光文社新書)
- 光文社 (2019年7月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334044220
感想・レビュー・書評
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最初はまあそうだろうなって内容から始まって。
マッチングアプリによって出会いの機会が広がるとかね、女性は男性に経済力を求めて、男性は女性に容姿を求める、とかね。( ˙˾˙ )チッ
以下、メモと雑感。ネタバレ含みますが、作品は楽しんでいただけると思います!
「母乳育児」に関する研究結果はとても興味深くて。結局、母乳の方がいいんじゃん、という残念な気持ちと、母乳育児がSIDSを減らしているという衝撃の事実!
ミルクで育った子どもと、母乳で育った子どもに、16歳時点での知能発達に差異が見られなかったとしても、母乳で育った子どもが、6歳時点での知能テスト・先生の評価がよいのなら、幼少期に自己肯定感をあげる一助になるかもしれない。
一方で、行動面で母乳育児の効果を認められなかったこと、知能発達の評価が長期的には有効でないという結果は、一部のお母さんを安心させる。
日本の男性の育休制度がとても素晴らしいということ。諸外国からの評価はとても高いのに、使う人がとっっっても少ないという現実。
父が育休を取ると、収入は減る。けれど、子どもが16歳時点で、育休を取らなかった父の子どもと比較すると、偏差値が1アップしている。生後1年間の親子のふれあいが、その後の長期にわたる親子関係に大きな影響を及ぼす。また、最初の、たった1ヶ月の育休で、ライフスタイルが変化して、家事と育児に使う時間が増える。
母の育休については、3年はとりすぎ。日本はちょうどいい。だから、父が育休を取って収入が多少落ちても、そこは母がフォローできるよね。
心理学社会学では、子を持つことが離婚につながりやすいと言われているけれど、経済学では夫婦関係が安定するという研究結果が出た。
どんな立場で論じるかによっても結論は違うんだ。
幼児教育の知能面に関する効果は8歳時点でほぼ消失。しかし40歳まで調査を続けると高校卒業率を上げ、就業率を上げ、所得を増やした。生保受給率、警察の逮捕率も減らす。問題行動を減らせるようになった!
それは犯罪を減らすことになるので、幼児教育をしたことで受ける利益が、本人だけでなく、社会全体の利益となる。
4大卒の母と比べて、学歴が低い(高卒未満)と、子育ての幸福度はマイナス、しつけの質もマイナス、保育園に通うことで、子育てストレスを大きくマイナスへ、幸福度をプラスへ。また、攻撃性と多動性も、大きくマイナスとなった。
個人的には、やっぱり母乳神話はほんとだったんだー、という残念な気持ち、
学歴が子育てに深く関係しているという裏付け。
幼児期に、心身の発達を満たしてあげること、それが約40年後に上記にあげたような効果をもたらすのであれば、費用対効果抜群!
医療費とか、生活保護費、収監費用の低下につながるわけだから、高齢化に伴って高齢者にかかるお金がクローズアップされがちだけど、やっぱり子どもにお金をかけないと。
保育園は、これだけ社会に寄与する存在で、それなのに、お給料が壁となって、保育園ができても保育士が集まらない。これだけの人材を作り出す専門職であるにもかかわらず。それが、なんだかとても悔しい。
少子化なのに、待機児童がいるというこの国に、昨日からスタートした幼児教育・保育の無償化はどれほどの効果を生み出してくれるのか…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結婚、育休、保育園など、子育てを視野に入れた家族にとっての幸せを経済学的アプローチで考察した一冊です。
経済学的といっても金銭的な価値をはかるというものではなく、どのような行動がどのような結果に結びつくのか、各種統計データを用い、そこから考察することで浮かび上がらせようというもの。さらには、母乳で子育てすべき、3歳までは母親が育児をすべき、といった昔から語られている定説(あるいは迷信?)の信憑性についても明らかにしています(結果として、単なる思い込みにちかい、というものも明らかになったようで…)。
個人的に感銘を受けましたのは、エビデンスにもとづき、そこから明確になった事実とそれに対する考察を加えるという、きわめて科学的な態度で構成された内容であること、またそのような書籍でありながら、一般の幅広い読者にわかりやすく伝えることができる文体で丁寧に解説されている、この両方のバランスに優れている点です。この点を重視し星5つとしています。 -
講義を受けてる教授が書いた本。結婚、出産、子育てに関連する様々なトピックについて、次々に経済学の観点から見ていく内容。
国内外問わず様々な論文を噛み砕いて説明しており、いい意味で「学者さんの書く文章」感が強い。神話なのか事実なのかはっきりしない社会通念を、データを正しく用いて白黒つけていく様はお見事!
大学のお陰でこの領域の基礎教養はわりと身についている気がする。 -
これまで"常識"として考えられていたことがそうではないということを、様々なデータを用いて述べられている。
子育て然り、離婚然り、家族に様々な影響を与えるものであり、そういったものが先入観やイメージで語られるのは良くない。
なぜならば、それは家族の幸せだけではなく、中長期的な日本社会の在り方にも関わってくることだからである。
社会を形成する個々人は、それぞれの家族に所属している。その家族の一員を取り巻く環境が整っていなければ、健全な社会というのは成り立たない。
そういった意味で、家族の幸せを追求することはとても大切なことである。
日本ではまだまだ浸透していない育休については、一歩先を行く欧米の知見が紹介されているが、こういったものをどんどん取り入れるべきだ。
当然、日本と諸外国では、働き方についての考え方や環境は異なるが、参考にすべき点は多くあるであろう。
様々な"ファクト"を示した点において、本書は一読に値する。 -
データを元にここまでの範囲はこのデータによって証明されています、といった感じで正しいとか間違っているとかの話をしないフラットさがスッキリしててよかった。
なんか感情入ると疲れるから、家族の問題は特に。
経済学はどの本も日本のデータ不足を嘆いてるのが気になる、こういうところにしっかり国家予算割いてデータ蓄積して意味のある改革をしてほしい。
母乳育児よりも子供の知能面では父親が育休をとった方が効果があるとか、国のお金を母親の育休を充実させることに使うよりも保育園の質を高めるのに使った方が子供の発育に効果的とか、家庭の資材に頼る仕組みを改善できるとか、母親の学歴による影響も最小限にできるんだ、という議論されてほしすぎるーーー。
しかし経済学関連の本めちゃくちゃ面白くて経済学好きかも。
前書きでざっくりと目次説明しているのが導入としてかなりわかりやすいし、カテゴリも結婚・赤ちゃん・育休・イクメン・保育園・離婚に分けて書いてあるので好きなところだけ読めるようになってるしかなりおすすめ。 -
あんまり惹きつけられる内容ではなかった。
既知の内容の再確認が多すぎるのと、経済学ってゆうか社会学を語りたかったのか?って印象。 -
とても読みやすく、面白かった。赤ちゃん、育休、保育園の経済学。
母乳育児は長期的にみて子どもの人生に大きく変わりがない。(ミルクで育つ、もしくはミルクを足しながら育った子どもでも十分に健康、人並みの知能で生きているわけだし、母乳で育った子ども全てが必ずしも全般的に優れているわけではないし)であれば、必要以上に母乳にこだわり、家族が疲弊したり、子どもの要求を満たしてあげられないのにミルクに頼ることをしないのは、安定した育児にならないのでは。もう少し世の中のお母さん達が楽に、肩の荷を降ろしてミルクに頼ってもいいという雰囲気があるといいのにと思う。ミルクを足しているという時点でどこか感じるうしろめたさ、母親失格?、ああ母乳足りないのねかわいそうね、という感じ、変に昔からの経験値?だけで広まっている〇谷式のやり方など(助産師さんにもよりますが)一掃できないものか。今そうやって母乳育児に追い込んでいく人達に、最新の調査結果を見て方針を変えてほしい。儲かるからといって、下手に母乳育児を軌道に乗せられない母親を追い込んでほしくない。
個人的には、高齢出産と母乳育児についての調査結果などが見たかったのですが、それがなくて残念。
・母乳育児で最も信頼性が高い科学的根拠は、1996年にベラルーシで行われた調査。
これを参考に。偏りがない調査。
これからすると母乳育児で生後一年間の胃腸炎と湿疹が減少。乳幼児突然死症候群も減少。
・母乳育児が肥満、アレルギー、喘息防止は6歳時点で影響を与えていない。11歳、16歳でも同様。
・母乳育児が知能・行動面に対する長期的な効果も確認できず。
・母乳育児は生後一年間の子どもの健康面に好ましい影響を与えるが、それ以降については長期的なメリットが確認できず。
・母乳育児を行うかどうかについては、母の選択が尊重されるべき。
・今までの母乳で育った子供と、粉ミルクで育った子供を比較する研究だと、母乳で育った子供のほうが健康で、知能面の発達も優れていることがしばしば報告されているが、これは、必ずしも母乳育児が健康増進や知能発達に役立つことを意味しない、なぜなら、母乳で育った子供と、粉ミルクで育った子供の家庭環境が大きく異なるから。子育てに熱心で、学歴の高いお母さんほど母乳育児に積極的であるから。母乳で育ったこどものほうが発達面で優れていたとしても、それが母乳育児によるものなのか、経済的に豊かな家庭なのか、お母さんの高い知能が遺伝したのことによるのかはっきりとわからない。
・赤ちゃんの出生体重が重いと、大人になってから健康で」あるだけでなく知能指数も所得も高くなる傾向がある。
・帝王切開が増えていることに驚き、儲かるから?不必要な帝王切開は赤ちゃんと母体に悪影響なのできちんとした理解を。
・育休は一年がベスト。三年は長すぎる。逆効果。
・保育士の力は子どもの成長にとって有益、必ずしも母親が子育てを担う必要はない。分業。保育のプロの力。
・パパの育休の制度は世界的にみてもトップクラス。パパの育休が、その後の夫婦関係にもいい影響を与える。
・ジェームズ・ヘッグマン 「幼児教育の経済学」
・幼児教育の効果について、
・体罰がよくないと考えられているのか。それは親が体罰を行うことで、自分の葛藤や問題を暴力によって解決してよいという誤ったメッセージを伝えることになってしまう。
・保育園は家族の幸せに貢献している。 -
諸外国の研究やデータが沢山紹介されていて、
結婚や子育てに関して、視野を広げる事の出来る一冊。
結婚や子育てに不安を抱えている方や、
子育てに日々取り組んでいて、
定量的な証拠が欲しい方に、
是非オススメです。 -
母乳育児は生後一年の子どもの健康にはプラス、その後は影響なし
生後母親と過ごす時間の長さは子どもの将来の進学状況や労働所得に影響なし(保育園の環境が良ければ愛着理論は母親である必要なし)
父親育休
ノルウェーやスウェーデンの研究では、父親が約一ヶ月の育休をとった場合、所得が2%減り、16歳時点の子どもの偏差値が1あがる。
またケベック州の研究では、育休改革後に父親の子育てや家事の時間はそれぞれ15-20分増えた。アイスランドでは離婚率が下がった。(一方でスウェーデンでは3年以内で増加するも5年後では変化なし=離婚が前倒しされた)
日本の研究では、保育園に通うと、母親の学歴が低い(高校を卒業していない)場合は子どもの言語発達を促し、多動性や攻撃性を改善させる。一方で母親の学歴が高い(4大卒)場合、言語発達と多動性は改善されるものの攻撃性はやや上がっている。