新聞記者、本屋になる (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334045616

感想・レビュー・書評

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  • 新聞記者時代の話も本屋の話も、どちらも興味深く読んだ。
    記者の知り合いが身近にいて個人的に詳しいため、記者時代の話はとくに「わかるわかる」となった。

    何かに受賞した本やベストセラーの本を一切置かない本屋さん。一体どんな本が並んでいるのか。ちょっと行ってみたくなった。東京は遠いけれど。

    本屋は正直どこも同じだと思ってきた。個人の書店、田舎なのでなかなかないけれど、見つけたらとりあえず入ってみようと思う。
    偶然の出会い、わたしも好きだ。
    本の出会いだけでなく、本屋との出会いも体験したい。

    そして本屋に限らず、編集者やライター、出版社もまだまだいろいろあるんだなあ。本の分野で活躍している人が本当にたくさん、そして幅広く存在している。知らない世界だった。

  • 私の密かな夢、本屋を開くこと。
    本屋さんが開店するまでや
    人との交流やイベントなど、
    勉強になることが多かった。
    何歳からでも始めるのに遅いことは、ないんだ。

  • 独立系本屋が大好きなので、その開業記となると興味津々だ。どういうきっかけで、どういう過程を経て開業までこぎつけたかは人それぞれ、だからこそ惹かれる。
    まして著者は元新聞記者、定年前の58歳で子供は3歳、書店経験0からのスタート。そこからどうやって軌道にのせていったのか、気にならないわけがない!巻頭の書店のカラー写真の素敵なこと。天井の高い店内は中二階があり、壁面は作り付けの本棚。うっとりさせられたところで、第一章は新聞記者としての歩みから語られる。スポーツ取材で活躍してきた著者が本屋開業に舵を切るのが本当に意外だけど、異業種での経験がこんな風に書店業に生かされるのかと、逆に元書店員である自分には新鮮に映る。
    本を大切に扱いながらも、効率や粗利も意識しつつ、できないことはしない。取捨選択の潔さにはっとさせられる。ビジネス的側面から語られるエピソードも興味深く読んだけど、様々な出会いのエピソードや、さりげなく紹介される本にもそそられるものが多く、自分の視野もぐっと広がったなという気がしている。
    いつか、是非、店を訪れたい!

  • ◉極私的話
    還暦まであと2年。正確には22ヶ月。個人事業主ゆえ別に定年(退職)があるわけでない。まだまだ働きたい。それも、クライアントからお座敷に声がかかってこその話。そのためには面倒臭いおっさんにならないようにしないと。とは言え、還暦前のザワザワ感、なんだろ?

    〈還暦60歳=赤のちゃんちゃんこ着用〉のあの映像がチラつく。最近はTシャツとか天狗パンツとか…数多ある還暦グッズ、あの類いのプレゼントは勘弁して欲しい。もう、すでに決めてる。麻布テーラーで上質な生地で赤のギンガムチェックのボタンダウンシャツをオーダーしようと決めてる。自腹で。

    とにかく、いよいよ齢60か…という感慨に、否が応でも浸らなければならない流れには閉口するなぁ。

    その一方で、まだ還暦にもなっていないのに、意識は明らかに選書に顕れている。〈シニア〉〈定年〉〈定年後〉〈第二の人生〉…そんなキーワードが勝手に立ち上がり、随筆・評論・ノンフィクション・小説を串刺しにしている。

    読書遍歴を振り返れば、常に同時代&同世代モノを読んでる。本を貪り読み出した高校生の頃は近現代の青春小説一辺倒。実篤の『愛と死』に涙し、漱石の『三四郎』に黙考し、宮本輝の「春の夢』には胸をえぐられた。ゆえに『おっさんが綴るおっさんが主役の小説、おっさんの心象風景を綴る随筆』に行き着くのは自然の流れではあるんだけど。

    ◉さわり
    まずは著者の紹介。東京外大イタリア語学科卒業後、読売新聞社に入社。1社を経て毎日新聞社に移籍。主にスポーツ畑を歩み、論説委員を務め社説を執筆。定年目前の58歳で退職、書店開業。

    本書の前半は、脱サラに至るまでの『私の履歴書-僕は新聞記者だった-』。終始飾ることのない素直な坦懐が綴られる自叙伝となっている。

    第2章からは書店開業編となる。なんと言っても気になるのは、『なぜ本屋なのか?』。その問いに対しては『自分でもよくわからない』と語る。

    えっ、そんな緩くていいの?!と思わずツッコミを入れてしまった。著者は晩婚で、3歳のお子さんがおり、開業資金は退職金を含めて自己資金でまかなうという計画。当然のこと妻は猛反対。そらそうでしょ〜な、これからお金がいる時期に突入するというのに、トラの子の退職金を投入。何と言っても書店は薄利の商売。

    それに加えて、無類の活字好きでもなく、ご本人も学生時代によく読んだ作家に片岡義男や森村誠一、社会人になってからは池波正太郎に司馬遼太郎を挙げている程度。そんな御仁が書店開業。

    ただ、この方やると決めてからは書店経営に関する資料を渉猟し、書店巡りをし、着々と計画を立て、実現に向け奔走。退職するや金髪に染め、所謂ブンヤからブックストアの店主のキャラクターに宗旨替えをし、浅草からも近い田原町に、新刊書をメインに扱うもベストセラーはあまり扱わない、直接仕入れ(買取)による返本なしを旨にした〈Readin’Writin’BOOKSTORE〉を開店。

    以降、ここをまさしくベースキャンプに、前職の経験を活かしたライティング講座やトークショー等のイベントを年100回以上開催し、ハンドドリップのコーヒーやアルコールの提供をするために食品衛生の許可も取り、本をテーマにした企画と寛ぎ感溢れる店づくりを精力的に行なっている。

    ◉私見
    人生の折々で答えを出す、決断を下すということは決して沈思黙考の末に、あるいは座して答えを捻り出すばかりではない。曖昧・茫洋・不明瞭なことは人に教えを乞い、意見をぶつける…ってことが発見や自信につながったり、道が拓けたりするかもしれない。要は大事なのは問題意識と行動。

    街場から書店が姿を消していくことで気づかされたのは、『書店は街のインフラ』だということ。そんな寂しい現況下に、小さくても個性溢れる書店がポツポツと出現しているのは嬉しい。

    そんな意気込みに溢れたのが本書。著者は語る。自分が本屋を始めた理由より、本屋を始めた方法を伝えることの方が意味があるのでないか…。書店開業の怒涛の奮闘と商いは飽きないであることを記したほろ苦開業記。こんなステキな書店がある街に暮らす方はホント幸せ。うらやましいの一言。

  • 本屋経験無しの状態で新聞記者から本屋へ。
    開店前からその後までが綴られる。
    どこか淡白ながら、楽しんで暮らしと商いをされている様子がうかがえる。

  •  私は都心の大型書店に14年勤めていた。業務量は膨大だったが、販売・接客と在庫管理に集中していればいい。財務のことや仕入れ計算は担当の部署がやってくれる。個人経営の書店ではそうはいかないだろう。
     現在所属する就労移行支援事業所でブックカフェを開業する話が持ち上がっており、事前になるべく最近書店を開いた人の話が知りたくて本書を読んだ。「自分一人でできる範囲のことをする」というポリシーに徹し、シンプルで居心地のいい店を作って日々営業しているのがゆったりとした文面から伝わってくる。それでも本の売上だけではやっていけないという事情もあり、多くのイベントの開催や、飲み物や雑貨などの併売を一人で切り盛りしていて本当にすごいと思う。
     著者が言っている通り、本屋を始めることは簡単だが、続けていくことはとても難しいだろう。買い切りで仕入れれば返品作業は発生しないが、棚の回転率や新陳代謝は下がる。売れ筋の本は小さい書店が注文してもなかなか入荷しない。書店業界の利益率の低さも昔から言われていることだが何も変わらない。不安材料ばかりだ。
     それでも本書を読んで、自らの選書眼をたのみに小さな本屋を営んでいる著者を羨ましいと思う。文化的な仕事がしたい。街の人々の生活に溶け込み、日常を豊かにする本屋を地元に作りたい。一週間くらいで読み終えられる手頃な新書だが、新聞記者時代の仕事内容の話も面白いし、書店の実務が詳しく綴られていてとても参考になった。唯一残念なのは著者が本屋を始めようと思った理由をあえて語っていないこと。いろいろな縁があって開業に至ったとのことだが、なんだか核心に触れることができないモヤモヤ感が残った。

  • 蔵前に勤めていたころ「本屋はじめます」の名刺を常連のコーヒー屋さんから「葵ちゃん好きそうだから」と譲りうけたのが、最初の思い出。
    開店後何度か足を運んだのと、最近は元新聞記者の友人を案内したり。大好きで紹介したくなる書店であり空間。

    >特ダネをとるために不可欠と言われる「夜討ち早駆け」が嫌で嫌で仕方なかった。

    >地震が夜中にあったら崩れ落ちてくる本の下敷きになるのは間違いない。

    二度見するようなことがさらっと書いてあって面白かった。
    会社に対して「この仕事がすごく嫌だ」言っちゃいけないという気持ちで過ごしている自分にも気づいた。

    >彼ら彼女たちは本屋を作ることを面白がってくれていたが、やりがいを搾取するようなことはしたくなかった。

    かっこいいと思った。これがかっこいいではなく、本来こうあるべきなのかもしれないけど。クリエイターの働き方を見ていると会社員としての仕事でさえも搾取されているように感じる。

    >だから店は積読本の集積でもある。

    本屋さん大変って話を沢山きくけど、これ見たらすごく魅力的に感じてしまった。
    紹介されていた本のタイトルも素敵だったな。

    >ツイッターは「信頼」や「共感」を得るのが目的ではないが、結果として「信頼」や「共感」を得ているのかもしれない。ツイートを見て、わざわざ店に足を運んでくれる人たちが少なからず いる。そして、本を買って
    くれる。

    この直後に読んだ本では「ソーシャルメディアの目的は信頼を得ること」と書いてて面白かった。という個人的なメモ。

    >教訓めいたものを引き出すのであれば、始めるのに遅すぎるということはないとと、心に引っかかったことがあったらそのままにしないで一歩踏み出してみるというと。

    引っかかること多すぎて何からどこに踏み出そうかしら。

  • 本が好きだから本屋になったわけではない
    というところが変わっていて興味深かったかな。

    町には本屋が必要だ、という観点から
    「場所」としての本屋を維持したいと。
    第二の人生をそこに定めたのは
    羨ましいし、すごいなぁと思います。

  • 本を読まない本屋があってもいいじゃないか。
    今どき本を読む人は稀で、本にはインテリアとしての要素も求められているという考え方から装丁が仕入れ基準の1つというのが面白い。
    異業種からの参入だからこその斬新な切り口。
    カフェ併設の本屋に近い発想かもしれない

  • 新聞記者だった著者が、一から本屋を立ち上げ、続けていく様子を綴った一冊。
    うーん、癖が強い。

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