エンタメ小説家の失敗学~「売れなければ終わり」の修羅の道 (光文社新書 1239)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046460

感想・レビュー・書評

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  • 本はあくまで商品の一つということを知る。小説家は書きたいものを書けるわけではなく、編集者の意向を考慮しなければいけない。
    著者の文章は自分には読みやすい。

  • 興味深く読めました。

    この本の読者は、「小説を書いていてデビューしたいと思っている人」になるのでしょうか。もしくは「平山氏のファンが作品の制作秘話を知りたいという動機から読む可能性」もありますね。

    私の場合、今回初めて新人賞に応募できそうな長編小説を書き切ったので、「自分にもこの本を読んで失敗を学ぶ資格はあるかな」と半ば遠慮がちに手に取りました。

    結果的に大いに役立った助言がありました。

    「編集者に言われて結末を変えたが、中途半端になってしまい後悔している」という失敗エピソードです。
    どこで役に立ったかと言うと、書き切った長編小説に対し、ランサーズの添削サービスを受けた時です。サービス提供者は、それこそ編集のプロの方でした。
    添削の結果、「このアドバイスの全部を聞く必要はない」と前置きされたとはいえ、コアの設定部分を「これは辞めた方がいい」と言われてしまったのです。
    しかし私が書きたかった動機と密接に関わる設定だったので、添削通りに設定を変える気持ちは湧かず……。
    本書の「落とし所を見つけて、抗えばよかった」という平山氏の後悔を思い出し、「そっか、作中でなんでこの設定にしたのか、嫌というほど強調すればいいんだ」と思い直しました。それが私の思いついた「落とし所」でした。
    結果、添削前とは比べ物にならないほど完成度を上げる事ができた上に、自分の信念も守る事が出来ました。

    そもそも、なかなかデビューなんて出来ないし、本書のアドバイスが役に立つ人材そのものの人数が限られているとは思うのですが、お金さえ出せば「プロの編集者」とはやり取りできる。
    真剣に小説を書いている人は読んで損はないと思います。他の書き手には、また違った「失敗エピソード」が役に立つのではないでしょうか。

  • 残念ながらこの著者の本を読んだことはないので、自己分析についてはなんとも言えないのだが。

    文芸志向の著者が、そちらのデビューが全く芽がでなかったため、エンタメの賞に応募したところ入選。

    ところが、エンタメにはエンタメの売れるべき筋があって、それに馴染めない上に、中途半端に水に染まってしまったために、文芸にも帰れなくなった。

    そんな感じなんだろうか。

    おそらく、自分の描きたいものを表現できる筆力をお持ちであったことが「不幸」の一つなんだろうな。

    自身も書いてらっしゃるように、おそらく、エンタメには向いてないのに、エンタメデビューして、評価されてしまったことが今に至っている。そこに徹することもできなかったのに、「書けて」しまった。そのくせ、文芸志向、かつ、読みたいものではなく読ませたいものを書くという芯を外すこともできなかった。

    全く才能なければ、そんなところまで行かずに済んだんだろう。

    そんな人は山ほどいるだろうな。
    むしろ、同じ志向の人たちと、同人誌でも続ければ良かったのかもしれない。
    漫画でも音楽でもそうだが、才能と努力だけでは生きていけない、本当に大変な世界であり、そこに挑戦されたことは、尊敬に値する。

    後に続きたい人は、ぜひ読んでもらいたい。

    つか、著作、読んでみよう。

  • 何ともやるせない恨み・辛みの羅列だな~…ってちょっと引きかけたけど、これがまたかなり的確な後悔論で(って何かよく分からん表現になってるけど)、実に楽しめる。少なくとも、前に読んだ”~億を稼ごう”とかよりよほど現実味があるし、創作と真摯に向き合う姿勢を強く感じる。そして、個人的にどちらの小説が読みたいかというと、間違いなくこちら。そういえば、どちらも小説作品を読んだことはないから、読み比べてみるのも一興かも。とはいえ、まずは平山瑞穂作品から。書評で気になった作品が2つ手元に積読(つんで)あり、近いうちに読んでみよう。ちなみにそれは”ラスマンチャス”と”3.15”。本書でも特に重点的に述べられていた作品だし、ちょうど良かった。

  • 「こうすれば売れる小説が書ける」と銘打った小説入門は多いが、これは逆に、華々しくデビューした作家が、作家生活の中で重ねてきた「しくじり」を振り返った本だ(笹倉明の本とか、類書もないではないが)。

    読み物としては、わりと面白い。ただ、全体に愚痴っぽくて言い訳がましい点に辟易した。

    そもそも、著者は多くの著作を持ち、小説家としては相当恵まれていたのではないか(現状はさておき)。大半の恵まれない作家ワナビから見れば「ゼイタク言ってんじゃねーよ!」と言いたくなるだろう。

    本書に多数紹介されている各社の担当編集者とのやりとりを見ても、著者が非難めいた書き方をしているわりには、大半はまっとうなアドバイスに思える(「これはたしかにひどい」と思える扱いも一部あるが)。
    ということは、編集者にも恵まれていたほうなのではないか。

  • エンタメ業界の厳しさがよく分かる。売れている作家さんによるこの手の本を読むと、売れるものを書くのは簡単なことのように勘違いしやすいけれど、そういう方はやっぱり才能があるということなのだろうと再認識した。大変な職業だ。

  • 2023年1月20日購入。

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1239/K

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著者プロフィール

平山瑞穂(ひらやま・みずほ)
小説家。1968年、東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年に『ラス・マンチャス通信』(角川文庫)が第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。著作には、『忘れないと誓ったぼくがいた』(新潮文庫)、『あの日の僕らにさよなら』(新潮文庫)、『シュガーな俺』(世界文化社)、『プロトコル』(実業之日本社文庫)、『マザー』(小学館文庫)、『四月、不浄の塔の下で二人は』(中央公論新社)、『午前四時の殺意』(幻冬舎文庫)、『ドクダミと桜』(新潮文庫)、『さもなくば黙れ』(論創社)など多数。評論に『愛ゆえの反ハルキスト宣言』(皓星社)、エッセイに『エンタメ小説家の失敗学』(光文社新書)など。

「2023年 『近くて遠いままの国 極私的日韓関係史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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