阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや? (光文社新書 1254)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046613

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通り、阪神はなんで優勝でけへんのか、について、元新聞記者の著者が、さまざまなテーマ、視点から分析してまとめられていました

    同じテーマで他にもたくさん本は出てますが、ここまで合点がいく内容は正直ありませんでした

    最も印象に残った内容は、タイガースが万年最下位に低迷していた、いわゆる「暗黒時代」に起こった、監督人事問題のときに、トラ番記者として経験したスポーツ各紙に蔓延る派閥の話

    この頃、既に私もなぜかクソ弱いのにタイガースファンだったので克明に覚えてますが、まさか裏であんなことが巻き起こっていたとは…

    他にも、高卒若手が育たない理由や、ドラ1のプレッシャー、繰り返されるトレードや補強の失敗、ファンや球団内部のことなど、トラ番記者時代に培った人脈を充分に生かしながら、OBへの豊富な取材も織り込みながら、非常に緻密に分析され読み応えのある内容でした

    私は、「暗黒時代」がちょうど少年期だったので、最もタイガースの試合を観ていて、その時代に特に重点を充てた内容だったことも、面白いと感じた理由かもしれません

  • マスコミがあることないこと書きまくり、ファンがぎゃ〜ぎゃ〜騒ぎ、タニマチは夜の街に選手を連れ回し、OBは現場に口を出し、スカウトは有望株の選手獲得に手をこまねき、ファームは一軍で通用する選手を中々育てられず、監督招聘時は長期政権を約束しながら、芳しくないと見るや監督ひとりにその責任を押し付ける…。

    阪神のスカタンぶりは、ファンになった小4の1973年当時から既に語られていた記憶があるから、その年季の入り方は只者じゃない。

    例えば、〈阪神社会党説〉〈阪神相撲部屋〉〈優勝したら銭かかるから2位が一番〉〈たけし軍団より弱い阪神〉〈阪神は大阪の恥や〉等、すらすらと出てくる。極め付きはオリックスに入団した田口荘は、ドラフト直前に〈阪神に行きたくない10ヶ条〉を提示…。

    ここまでボロカスに言われながらも毎年300万人を動員。ある意味、究極のブランドとも言える。『我々は提供する商品・サービスには日々革新に裏打ちされた自信と誇りの元、お客様を決して裏切りません』と高らかに謳うのがブランド。

    その定義に照らせば、真逆も真逆。リーグ優勝は1950年の2リーグ制になって以降、わずか5回。ちなみに巨人は38回。

    そんな体たらくにもかかわらず、開幕ダッシュを果たせば、早々と10月の前売りを先買い、いざ観戦となれば車中からユニホームを着用、選手毎の応援歌を諳んじ、かつてはジェット風船をひとり何個も膨らませ、勝てばもちろん六甲おろしを放吟、負けてもヤケにならずきちんと阪神電車を整列乗車。

    これまで書かれた阪神タイガース論って〈繰り返されるお家騒動-監督の首のすげ替え・スター選手の放出等-を例に取り暗黒史を紹介し、優勝どころか常勝チーム化できない温床は球団運営にあり〉と筆は向かうが、本書は一線を画す。

    著者は元サンスポのトラ番記者。阪神の表も裏も知りつくすも、グラウンド外の暗闘はあくまでも遠目にとらえ、歴史・看板・風土・戦略・育成・苦悩・誤解・派閥・アレの9の枠組で、元選手たち(谷村・遠山・野田・中込・山村・薮・藤田…)らの生の声にフォーカス。関西という独特の風土に根づいた超人気球団の戦士たちの悲哀・重圧・懊悩・戸惑いを抽出。

    いずれも、それは生々しく、えげつなく、掛布以降の生え抜き高卒野手が育っていないのも〈さもありなん×むべなるかな〉って思ってしまう。

    タイガースの元敏腕スカウトは語る。ドラ1ともなれば技量に加え、『看板』の重さに耐え得る図太さが不可欠で、例えを出すなら井川慶の〈マイペースさ〉と鳥谷敬の〈ストイックさ〉が成功へのファクターであると。藤浪が突如伸び悩んだのは、結局のところ看板の重さだったのか…。

    350頁にわたり綴られた『負の歴史』は、阪神というソフトウェアと大阪・関西というハードウェアと不適合が招いたとも読める。

    15年ぶりに再び指揮を執る岡田彰布は、生粋の大阪人であり、1979年ドラ1。看板の重圧を嫌というほど知る御仁は、はたしてどんなタクトを振り、いかなる戦績を残し、次なる指揮官を育てバトンを渡すのか…。ファンは今日の勝利に酔いながらも、なんとしても良質なソフトウェアとして作動してよ!とひたすら願っている。

  • マスコミがあれこれ書くから、ファンがうるさすぎるから、タニマチが選手を連れ回すから、OBが口を出し過ぎるから、スカウトがいい選手を獲れないか、2軍で若手を育てられないから……

    定説のように言われる「阪神が優勝できない理由」に切り込み、自身の経験とインタビューをもとに9つの枠組みで分析する

    《熱烈阪神ファンの元トラ番記者だから書けた「新・阪神タイガース論」》──帯のコピー

    著者はスポーツライター
    サンスポ時代には「トラ番」(阪神担当の番記者)も経験

    2023年4月刊
    2023年ペナントレースで18年ぶりの“アレ”が実現した今となっては歴史的な新書

    遠山、野田、藤田、藪、中込……懐かしい名前が並ぶ

    〈この本を貫き通しているのは“阪神愛”です。〉──「序章」より

    熱烈なトラキチとしては続編『阪神タイガースはなぜ優勝できたのか』も書いてほしいところ

  • 元サンケイスポーツ記者でもあるスポーツライターがトラ番記者という経歴と経験を生かしたルポ。タイトルとは裏腹に、これまでのタイガースの弱さをドラフト、育成、ファンやメディア、そして派閥といった観点で考察。特にかつてのドラフト1位選手への取材は見事。特異な環境にある阪神タイガースが改めて分かる。同時に、今年優勝してしまった阪神タイガースは本書に書かれた課題が少しクリアになった結果でもあろう。

  • 阪神タイガースを取り巻く状況を記者の目から率直に書いた名作。縁起だからということで書くことになったそうだが、本当に優勝してしまった。

  • ひと昔前のタイガースといえばゴシップ、派閥。発信する関西メディアとのっかり関西人。現在のタイガースの欠点というより、ひと昔前のタイガースの問題点に切り込んでいる。今のタイガースにどこまで当てはまるのか?

  • サンケイスポーツ記者によるプロ野球のチーム「阪神タイガース」をドラ1元選手、マスコミなど、阪神タイガースを取り巻く「熱烈な」関係者に取材をし、阪神タイガースとは何かを浮き彫りにした著書。
    優勝争いをこれまで何十年にもわたって行い、1985年の日本一、2005年のセリーグ制覇以来優勝から遠ざかっている阪神タイガースがどうして優勝できないか、読んで感じたことは、阪神タイガースというコンテンツがマスコミを通して発信され、多くの関西人に愛されていることに尽きると感じた。阪神がここまで注目されることになったのは、阪神タイガースの盛者必衰感が人生にも置き換えやすいうえ、感情移入しやすいことにあるように感じた。マスコミも一般のファンも勝てば褒める、負ければ辛辣なコメントを送る。なんとも関西人らしいが、その関西人の思いも“どこか”理解できるのは、自分も関西人だからだろう。

  • 阪神ファンではないが著者の喜瀬さんの本が好きなので読みました。

    阪神のドラ1という異常なプレッシャー、人と人の距離が近い独特な関西という風土、暗黒時代の失敗ドラフトなどが理由に書かれていました。

    ドラフトに関しては改善されていますし、情に流されない岡田監督の就任で優勝する条件は整いつつありますね。
    私がファンのヤクルトも負けないように応援していきたいと思います。

  • <目次>
    序章   歴史
    第1章  看板
    第2章  風土
    第3章  戦略
    第4章  育成
    第5章  苦悩
    第6章  誤解
    第7章  派閥
    終章   アレ

    <内容>
    元サンスポの阪神担当記者(いまや立派なプロ野球系のライター)のよる、自分の経験を踏まえた元選手やスカウトなどへの取材による、阪神タイガースの歴史(?)。最後の阪神の歴代監督と順位表を見たんだけど、1947年~優勝がわずか5回、日本一が1回というのは驚愕…。

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1254/K

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト

「2021年 『稼ぐ!プロ野球 新時代のファンビジネス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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