定年前と定年後の働き方~サードエイジを生きる思考 (光文社新書 1255)

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  • 光文社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046620

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  • 日本社会全体の少子高齢化が進む中、企業に対していわゆる「定年」を延長することが求められ、65歳までの雇用確保義務が課されるようになっている。
    これを終身雇用・年功賃金という従来からの雇用慣行と整合させるために、多くの企業において役職定年・定年再雇用といった制度が採り入れられている。
    これらの制度は企業の立場からは「福祉的雇用」として捉えられ、役職定年者・定年再雇用者は賃金が下げられ、技能継承のみやればよいとの低い期待が与えられることでモチベーションが低下していくケースもままある。

    一方で、役職定年者・定年再雇用者の幸福感・仕事への熱意は全体として低くないという調査結果が出ている。様々な喪失や衰えがあるはずなのにも関わらず、このような全体傾向が生じる現象を「エイジング・パラドクス」と呼ぶ。
    要は、定年後の境遇の変化に対する受け止め方には個人差があるのだ。
    そして、その個人差を生じさせる要因は、好奇心の有無や自身のキャリアへの関心があるか否かにあり、シニア労働者には心理的要素としての「働き方の思考法」を身につけることが重要な意味を持つ。一方で、企業組織側にはそれを考慮した上でのシニア社員に対する処遇が必要である。
    以上のような著者の考えが事例とともに解説されている。

    自分も企業組織の管理職の立場にあり、マネジメント対象となるメンバーにはシニア層の方もいるので、彼らにモチベーションを保って年齢に相応しい活躍をしていただくやり方については日々頭を悩ませている。
    また、自分個人としても、定年を意識してこの先のキャリアをどのように送っていくかを真剣に考えなければならない年齢を迎えていることもあり、この本で扱われている論点を他人事でなく関心をもって読んだ。

    個人にとって必要な「働き方の思考法」とは。
    まずは企業組織に蔓延るマッチョイズムへの囚われから脱却すること。
    自身の情熱・動機・強みがどこにあるのかを熟考し「自己の成長と専門性の追求」にフォーカスして主体的に職務を再創造する(ジョブ・クラブティング)。
    その際には、独りよがりな「周りの見えないジョブ・クラフター」にならないよう全体性とのバランスに留意して、周囲から受け入れてもらえるようにする。
    そのための実践として、スキルシェアサービスを利用してのギグワークや副業フリーランスを通じて業務委託という働き方に慣れること、越境学習となる場に積極的に身を置くことでホームとアウェイを行き来し葛藤を通じた自己調整を経験することなどが推奨されている。

    一方、企業組織側は、賃金を引き下げなければならないという認識に引っ張られて、シニアの自己評価を徒に下げるようなことがあってはならない。
    シニアに対しても責任のある仕事を与えて権限委譲し、業務目標を主体的に設定してもらって支援を行い、正当な人事評価で報いることが大切である、と。

    モチベーションの低下したシニアを企業が低い待遇で囲っておくというのは、誰も幸せにならない話で、社会的な損失は甚大だと思う。
    まずは個人が自らのキャリアを自律的に考える素地を広げていくことが重要で、企業側にもキャリア自律を促す取り組みがもっともっと必要なのだと再認識した。

    • おーい粗茶さん
      こんにちは。私は今年定年退職なので読んで見ようと思いました。
      こんにちは。私は今年定年退職なので読んで見ようと思いました。
      2024/01/14
    • rainygreenさん
      おお!レビュー読んでいただき嬉しく思います。ありがとうございます。
      定年なんですね。よきサードエイジを送っていただくために、少しでも参考にな...
      おお!レビュー読んでいただき嬉しく思います。ありがとうございます。
      定年なんですね。よきサードエイジを送っていただくために、少しでも参考になれば幸いです。
      2024/01/14
    • おーい粗茶さん
      ありがとうございます!
      ありがとうございます!
      2024/01/15
  • 「定年前と定年後」をどう働くのか――。50代以降のシニアが直面する問いについて、人材育成・キャリア形成の研究者が考察。高齢期を「人生で最も充実した幸福な時期」とするための働き方・思考法を、理論と実例の両面から説く。


    第1章 シニアへの見方を変える ── エイジズムの罠
    第2章 幸福感のU字型カーブとエイジング・パラドックス
    第3章 エイジング・パラドックスの理論をヒントに働き方思考法を考える
    第4章 主体的な職務開発のための考え方── ジョブ・クラフティング
    第5章 組織側のシニアへの取り組み
    第6章 シニア労働者の働き方の選択肢
    第7章 シニアへの越境学習のススメ
    第8章 サードエイジを幸福に生きる

  • 私には、有効な示唆は無かった。

  • シニアの幸福な働き方は、どんなものか。離脱理論、活動理論、継続理論を元に、SST(社会情動的選択性理論)やSOC理論(選択最適化補償理論)を紹介しながら、シニアの幸福感を高める働き方を探求。

  • ・気になるワードとして、「プロボノ、シニアセカンドキャリア推進協会、ライフシフト社、フリーランス協会、インディペンデントコントラクター協会」
    ・シニア目線というか、それを活用する側目線の理論的解説のようだった。シニア目線としては、「そうみられている」を意識させるような内容。

  • ■書名

    書名:定年前と定年後の働き方 サードエイジを生きる思考
    著者:石山恒貴

    ■感想

    TOPPOINTで読了。

  • 少子高齢化と長寿化の進行は、人生100年時代と呼ばれる環境の変化をもたらした。労働力調査によれば、2021年の労働力人口は日本の職場の3割以上が55歳以上の労働者で占められていることを示している。だが、これまで日本ではシニアの働き方に対して組織側の施策に焦点があたることが多く、個人の働き方としてどのような戦略をとるべきかについて論じられてこなかった。また「定年後の生き方」を解説するものは多いが、継続して働き続ける方法を解説したものは少ない「定年前と定年後」をどう働くのか?ここでの働き方に「人生でもっとも充実した幸福な時期を実現する可能性がある」と説く。◎目次 はじめに
    【第1章】シニアへの見方を変える ─エイジズムの罠
    【第2章】幸福感のU字型カーブとエイジング・パラドックス
    【第3章】エイジング・パラドックスの理論をヒントに働き方思考法を考える
    【第4章】主体的な職務開発のための考え方─ジョブ・クラフティング
    【第5章】組織側のシニアへの取り組み
    【第6章】シニア労働者の働き方の選択肢
    【第7章】シニアへの越境学習のススメ
    【第8章】サードエイジを幸福に生きる

  • 筆者が大学の先生らしいので、文体もなんとなく、学術的な感じで難しく感じた。もう少し一般の人向けに噛み砕いた表現や内容にしたらもう少し良かった。

  • 固定観念に縛られることはないんです。
    どう生きたいかですね

  • まもなく50を迎える。サードエイジ。今までの仕事から離れるのは恐い。が、向き合い、どうするか考えるためになる。シニア向け、働き方に通底する本だ。

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著者プロフィール

石山 恒貴
法政大学大学院政策創造研究科教授。
一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。
一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。

「2022年 『越境学習入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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