私にとって神とは (光文社文庫 え 1-3)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334708474

作品紹介・あらすじ

「いったい神なんか本気で信じているのか」とか「あんたにとって神とは何か」とか、数々のご質問を私が整理して、それに私なりの考えを、できるだけわかりやすく話して、それを文章にしたのが、この本である。

感想・レビュー・書評

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  • 大変わかりやすい遠藤周作流に説き解かれたキリスト教。いや、カトリックと言うべきか。私自身カトリックだが、このような視点があるということが驚きで新鮮だった。特にキリスト教と仏教の比較がおもしろい。執着を捨てる仏教と執着は愛のたまものだから受け入れて認めよ、というキリスト教。愛と憎は同じである。感情を殺すことなく、生に執着して汚さも直視しろという言葉が胸に響いた。マザーテレサが「愛の反対は無関心」とおっしゃっておられたのが本書を読むとよくわかる。

  • 宗教に関心のない一般的な日本人を代表するような質問者に対して、わかりやすくキリスト者としての自身の考えのべている。

    神は存在ではなく、働きだという言葉がなぜかしっくりきた。

  • めちゃくちゃ良かった。高野山に行ってから、信仰や宗教というものの"実態"とはなにかを知りたいと思っていた。しかし「仏教とは」とか「わかりやすいキリスト教」といった本はなんだか表面的でしっくりこない。
    やはり実体験を伴った個人の思想や解釈、その欠片を集めたものが宗教というモザイク画になっていくのだろう。宗教や信仰というものは、思っている以上に曖昧で融通の効くものらしい。
    本書はキリスト教の立場から見ているが、仏教との比較もあるし、キリスト教のここはちょっと嫌みたいな意見があけすけに聞ける。
    宗教に対しての意識が変わる一冊。「沈黙」と同時に読み始めたがおもしろくてこちらが先におわってしまった。

  • 中高時代はプロテスタントの学校に通っていたのに、キリスト教がなんなのかちっとも説明できない自分が残念で勉強として読んでみる。遠藤周作のわかりやすい解説で目からうろこなのは、新約聖書の福音書は、各民間信仰をベースに書かれているため、なにが真実かはわからないということ。いってしまえば壮大な二次創作?!という。遠藤周作も強調しているのは、神とは存在ではなく、「働き」という言葉になんとなくしっくり。また民間信仰ベースだからこそ、自分にとってしっくりくるイエス像があってもいいのではないか?と私には読めた。父性的なイエス、母性的なイエス。神とは非常にパーソナルなものだ、という解釈に聞こえた。

  • キリスト教徒だった遠藤周作が語る神と信仰についてのエッセイ。キリスト教の理念はどうにも馴染めないけれど、遠藤周作が語るそれは不思議なほどすっと入ってくる。日本人流に「仕立て直した」からであろう。「信仰というのは90%の疑いと10%の希望」であるとし「神は働きによってそれを感じる」と言う。「神というのは、存在を証明することはできない、しかし、その働きを感ずることはできるものだ。神は、目の前に置いて見えるものではありません。対象として証明することはできません。しかし、背中からだれかが押してくれているという感じ方でとらえることはできます。あるいは無意識の中で、神が働いているという感じでとらえることはできます」と何か目に見えない力を遠藤周作は神や信仰だと述べる。これを自分の感覚に置き換えると色々な人との繋がり、「縁」ではないかなと。イエスが起こした奇跡についても遠藤は「奇跡とは常人のできぬ愛の行為」だと言う。イエスはただひたすらに愛の行為を行った。遠藤周作が見ているイエス像は数々の奇跡を起こした超人でも何でもなく、何処までも深い愛情を持ったひとりの人間だ。そんなイエス像に私は親しみを感じる。

  • 無宗教の日本人にわかりやすくキリスト教(カトリック)を説明してくれている。キリスト教徒でありながら、キリスト教をどうも身近に感じることが出来ない日本人の気持ちをよくわかってくれている。

  • キリスト教とはこういうものという呪縛から解放され、自分の心と向き合わせてくれるお守りのような本の一つになりました。

  • 神は背中を押す。

  • 作家の目線で、聖書を史実か伝承か、効果的な創作としての一面などを説明してくれていて、私には非常に分かりやすい。聖書の別の一面を見ているようだった。
    ハッとすることが多い内容だった。特に、清浄であるということ、つぐなうということ。日本の文化として当たり前に受け入れてきたことがキリスト教の考え方との違いを生んでいるなんて、考えたことがなかった。
    著者の小説をより深く楽しむ手助けになる、興味深い一冊だった。

  • 2000.01.01

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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