- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334727895
作品紹介・あらすじ
「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」。-斬新な画風と発言で大衆を魅了しつづけた岡本太郎。この書は、刊行当時、人々に衝撃を与え、ベストセラーとなった。彼が伝えようとしたものは何か?時を超え、新鮮な感動を呼び起こす「伝説」の名著、ついに復刻。
感想・レビュー・書評
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魂を揺さぶられる。魂を揺さぶられろ。
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2023年度【芸術学部 彫刻専攻】入学前知トラ「課題図書」
OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/346172?locale=ja&target=l -
前半は怒られてるような、又は怒られてる人を見てるような気まずさと「やはりこの文章は一時代前に書かれたものだナ」と批判したくなる気持ちが掻き立てられるけど、後半に向かうにつれてアツ〜くなっていって勇気づけられる。
何より岡本太郎の説明能力が高すぎる。美術系の人とばっかり話してると、美術教育を受けてない人との話し方が分からなくなるし、本当に全然伝わらなくて辛く寂しくなるものだけど、岡本太郎は芸術家が絵を描く時何を考えてるのか、何にワクワクしてるのか言語化するのがうますぎる。今後引用できるように何本も線引いちゃった。 -
専門的な言葉や根拠となる事例も並べつつ芸術の歴史と見解を述べていてハッとさせられた。
・流行の「創造」と「模倣」の二つの要素が時代を進めている
・新しいといわれればもう新しくない
・芸術なんてなんでもない。人間の精神によって創られたものではあるが、道端にころがっている石ころのように、あるがまま、見えるがままにある、そう言うもの。 -
もともとは貴族階級の占有物であった芸術が、資本主義の台頭によって一般階級のものとなった。と同時に、パトロン(お得意様)に向けて依頼された肖像画をできるだけ綺麗に優美に描くという、職人芸的な絵画は終わり、「きれいであること」「上手であること」はもはや芸術の条件ではなくなった。
そのうえで岡本は「今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはいけない。ここちよくあってはいけない。」と宣言する。うまいから、きれいだから、ここちよいからという絵画の絶対条件が全くない作品で、しかも見るものに緊張を与え価値観を根底から揺さぶるような作品こそがほんとうの芸術である。
私は鹿児島市立美術館に行った際、ジャン•フォードリエルの「雲」という作品を前にした際、はじめて本当の意味で芸術に対峙した感覚があった。いわゆる抽象画で何が描かれているかはよく分からないが、なぜか心が激しく揺さぶられ、緊張なのか感動なのか自分でも分からない感情に支配されて、しばらくその場から動けなかった。芸術のもつ凄まじい力を実感させられ、それまでの自分の芸術鑑賞は型に当てはめて分かったような顔をしているだけの「八の字」的なものだったのだと気付かされた。
岡本はまた、すべての人が絵を描かなければならないと主張する。うまく書こうとしなくていい、でたらめでいいから、自由な気持ちで書くことが大事であると。
私も思い切って書こうとしてみるとこれが非常に難しい。どうしても「うまくなければならない、きれいでなければならない」と言った刷り込みがあるためか、鉛筆を書く手が止まってしまう。そうしたしがらみ、見栄や世間体、社会性に縛られた精神を乗り越えるために、苦しみもがきながら戦って自由を獲得し、自分の精神、人間性を積極的に打ち開いていかなければならない。そのようにして創造された芸術には、魂を根底から揺さぶるようや強烈な根源的驚異があるのだ。
すばらしい読書体験でした。1954年に書かれた本でありながら、内容はとても新鮮で、今を生きる自分にグサグサささりました。必読書だとおもいます。 -
いわゆる指南書ではないと著者は言っているが、この本のおかげで、今まで食わず嫌いしていた現代の抽象芸術や超現実派の作品を見るのが楽しくなった。
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印象に残ったことは2つあった。
一つは、芸術とは何かということ。芸術とは新しいものを創造するということだから、ここちよくあってはならない(まったく新しいものに対して、ひとは違和感や不安をおぼえるはずである)、きれいであってはならない、うまくあってはならない。
もう一つは、絵はすべての人の創るもの。うまく描こうと思わず、自分の内面をそのまま表現すればよい。まず描いてみるということが大事である、ということ。
これは、「言語化」という言葉に少し似ていると思った。人間は言葉を使って思考するが、その漠然と考えていることや感じていることを、言葉化してアウトプットするのは思考するのとは別の作業である。岡本太郎が言っているのは、自分の内面を、言葉ではない表現でアウトプットせよということかもしれない。自分の思考のうち、言語化できるものは一部だけである。感情や感覚的なものは、言語以外(絵画、音楽など)のほうが表現しやすいのかもしれない、と思った。 -
普遍的、かつ不変の芸術論、言い換えると芸術における真理だと感じました。
芸術とは心に波紋を広げるような何かを訴えかけるパワーがあるもの。
技巧的な上手さや写実的な美しさは模倣であって芸術ではない。優劣ではなく性質の違いで、伝統芸能などは後者にあたり、家元や師匠の技の模倣を良しとし、オリジナリティや新たな表現などは求められていない。
真の芸術とは内なる感情を思いのまま吐き出したような(表現を借りると)「いやったらしい」もので、きれいな風景画よりもそっちの方が心に残る。
印象に残った部分
・芸術は自由であるべき
・子どもの画は究極に自由であるが芸術足り得ない
・それは色々な困難や制約、自分でも気づいていないような固定観念を乗り越えた先に現れるもので、子どもの画に表れるものではないから
後半は日本の伝統そのものにも話が及んでいました。伝統とは既に完成を見たものではなく流動的であり我々が作っていくものという話。
内容というか、岡本太郎の想いが濃いので消化まで時間がかかりそうだが面白い本だった。