3000年の密室 (光文社文庫 つ 12-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334732882

感想・レビュー・書評

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  • 柄刀一の長篇ミステリ作品『3000年の密室』を読みました。
    翔田寛の『誘拐児』に続き、国内の作家の作品です。

    -----story-------------
    3000年前の殺人事件!?
    密室状態の洞窟で発見された縄文人男性のミイラは、背中に石斧を突きたてられ、右腕を切断されていた。
    ―サイモンと命名された彼は、学界に新たな発見と論争をもたらすが...。
    今度はサイモンの発見者が行方をくらます事件が起きる!
    作家的想像力を無限に広げ、壮大な物語を紡いだ著者のデビュー作。
    本格推理の一到達点。

    有栖川有栖、二階堂黎人絶賛!
    -----------------------

    1998年(平成10年)に刊行された柄刀一のデビュー長篇で第8回鮎川哲也賞候補となった作品です。

     ■第一章 3000年の旅をした男
     ■第二章 背景の背後
     ■インタールード――舘川民夫と田所弘三
     ■第三章 論証――"サイモン"の素性
     ■第四章 "ヒスイ峡"の死体
     ■インタールード――白川哲也と佐々木晶
     ■第五章 死者の落とす翳
     ■第六章 広がる疑惑
     ■第七章 解法への架け橋
     ■終章 過去と未来の間で
     ■文庫版あとがきと参考文献
     ■解説 佳多山大地

    内側から閉ざされ密室と化した洞窟内で発見された片腕のミイラは、3000年前の「殺人事件」の被害者だった! しかも腕は死後切断されていた……時空を超えて開かれた密室の彼方には、いったい何が見えたのか! ミステリの新鋭が放つ渾身の本格長編推理。

    歴史とミステリの融合作品でしたね……3000年前の密室から発見された縄文人のミイラが、現代の事件にどのように関わっていくのか、その結びつきが巧妙に描かれていました、、、

    考古学に関する詳細な知識が物語に織り込まれており、古代の日本に思いを馳せながら、謎解きの面白さを楽しむことができました……考古学の知識がなくても愉しめるように、登場人物の会話や心理描写等から自然と知識が身に付くような構成となっていたので、歴史への興味が高まりましたね。

    3000年前の密室殺人と現代の事件……古代と現代が交錯する中で展開されるストーリが印象的でした、、、

    独特の作風が愉しめました……どちらかと言えば、3000年前の密室殺人の謎解きの方が興味深かったですけどね。

  • 3000年前の密室殺人よりも、サイモンと名付けられたそのミイラの身体や身につけていたものが巻き起こす論争がメインだと思った。

    現実の学説の動向はまったく分からないが、サイモンのひとつひとつの設定が、おそらく当時の学説を踏まえて、パラダイムの変化を起こすようなポイントに焦点を当てられているのだろう。
    耳や骨、石包丁についた脂肪酸などから次々と推論していく様はミステリの面白さ。
    弥生時代ではなく縄文時代後期の段階で、稲作農耕文化は開始されていたのか?
    サイモンが持っていた穂摘み具が非常に重要なアイテムとなっていく。
    結末で、なぜかスケールの大きな話をしてしまったのはご愛嬌。

    プラントオパールとか抜歯とかちょっと懐かしい。これを読んでたら、考古学の授業に少しぐらいは興味をもてたかも。

  • 3000年の密室
     第1章 3000年を旅した男
      永久死体
      時と岩の底で
      ”サイモン”の中へ
      論争の火種
      雄弁なる骨相

     第2章 背景の背後
      不穏をまとう客人
      癒やすべきもの

     インタールード 館川民夫と田所弘三

     第3章 論証 ”サイモン”の素性
      光と影の因縁
      討論会当日
      遠い足跡を追って

     第4章 ”ヒスイ峡”の死体
      消えた男の周辺
      縄文人とヤマトタケル
      失踪者への道標
      碑文文字と探索行

     インタールード 白川哲也と佐々木晶

     第5章 死者の落とす翳
      押し寄せる風聞
      それぞれの傷口
      行動

     第6章 広がる疑惑
      たたかいの場
      本当の標的
      さらなる嫌疑
      迷走

     第7章 解放への架け橋
      現代の事件の真相
      密室を閉じたもの

     終章 過去と未来の間で
      時代の残照・・・
    原書房「3000の密室」 1998年7月

    文庫版あとがきと参考文献

    解説 佳多山大地

  • とにかく長い。縄文時代あたりの蘊蓄かなり多め。半分以上読んでも事件は起こらず、あれ⁇って感じ。
    縄文時代やら弥生時代やらミイラやらの説明が多すぎて…その辺が好きな人にはハマるかも。
    密室トリックも、なんで誰も指摘しないの⁇って感じですぐわかっちゃったし。
    バーチャル、いまは現実に活用されてるからSFではなくなってきているから先見の明あり、って感じかな。
    キャラには共感出来ず、残念。

  • 高校生の頃に読んだこの本が強く印象に残って再読しました。こんなに難しかったか?と少し思いましたが、授業中もこっそり読んだ記憶が蘇り、楽しく読み終わりました。

  • もし縄文人のミイラが発見されたら? そんな仮定によるシミュレーション小説という感じ。3000年前の密室も考古学的に解かれるとでも言うか、現実の発掘現場で生じた疑問もこんな感じで解消されるのではないかなと思わせる。一応、伏線なども張られてはいるものの、明後日の方角から急に解決が降ってくる感じで、考古学上の謎の解決としては問題なくとも、ミステリのトリックとして考えるなら唐突で、アンフェアにも思える。現代での殺人の方は過去の謎と全くリンクしていない。3000年前の謎だけでは厳しいという判断で付け加えられたのだろうが、なくてもよかった気がする。

  • 密室状態の洞窟から発見された縄文人の遺体に残る殺人の痕跡。彼はどこからやって来てどうやって死んだのか。これまでの定説を覆すかもしれない大発見と学会の盛り上がりの裏で起きた、第一発見者失踪の真相は。
    一番面白かったのは縄文時代の農耕文化などに関する激論か。どこまで信じてよいかはちょっとわからないが、科学分析からいろいろわかるものだなぁと感心した。現代のミステリ部分はむしろ蛇足だったのでは。そして3000年前のミステリは、新本格くさい落ちであった。2002年の作品でありるが、科学分析なんかは最新!という感じがする(こちらがわかってないだけだが)のにフロッピー使ってるのかぁ、と。技術の進歩はすごいものだ。

  • 語り口は好みではないが、トリックは秀逸。

  • 3000年前の密室殺人⁈そんな謳い文句に惹かれ手に取った作品。しかも、柄刀一のデビュー作。
    歴史ミステリーというジャンルになるのか。仕事柄多少馴染みがあるけれど、考古学の専門用語が多くてちょっととっつきにくいかも。でも、3000年前の密室の謎は、「そう来たか〜」という感じで素晴らしい。過去、現在、未来と、“3000年”というキーワードの使い方が見事で、きれいにまとまってる。

  • サスペンス?

    3000年前の殺人事件!?密室状態で発見された縄文人ミイラは背中に石斧をうたれ右腕を切断されていた。ミイラはサイモンと名付けられ学会の新たな論争の焦点となっていくが、発見者がある日行方不明となる。

    発見者は事故か事件か?
    またサイモンが示す3000年前の密室の謎は?

    というストーリー

    うーん、微妙。考古学ものなのか、サスペンスなのかどっちつかず。ラストでうまくまとめた感じです(=´∀`)人(´∀`=)

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著者プロフィール

1959年、北海道生まれ。1994年に「密室の矢」が読者投稿アンソロジー『本格推理3』(光文社文庫、鮎川哲也・編)に採用され、以降も「逆密室の夕べ」と「ケンタウロスの殺人」の投稿作品が採用された。98年、長編「3000年の密室」で作家デビュー。代表作は「時を巡る肖像」「密室キングダム」。日本推理作家協会、本格ミステリ作家クラブの各会員。

「2022年 『【完全版】悪霊の館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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