- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334746421
感想・レビュー・書評
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浅田次郎という人の抽斗の多さには、恐れ入ります。
帯に「ここには心を包むドラマがある」とあるけど、決して「心温まる…」ばかりではない。
義理人情やちょっと不思議系、中にはなにも提示されず読者の想像のみでストンと終わるもの(「黒い森」)など、ページを読み進めていくとアソートチョコのように次々に異なる味が襲ってくる。
これまで、浅田次郎氏の作品を数多く読んできた。
「椿山課長の七日間」から始まり「鉄道員(ぽっぽや)」「プリズンホテル」などの“人情もの”、「蒼穹の昴」シリーズ「輪違屋糸里」「一路」などの“歴史もの”、「日輪の遺産」「シェエラザード」などの“太平洋戦争もの”など、長編ではいつも圧倒的で多彩なドラマを見せてくれている。
短編集は、手っ取り早く浅田さんの抽斗を“ちょこっとづつ”見せてくれるのが楽しい。
お気に入りは「適当なアルバイト」と「風蕭蕭」
この短編集で唯一の連作として登場する「僕」と「タモツ」の物語は“青春もの”として、もう少し読んでみたい。
また、「あなたに会いたい」や「冬の旅」など“少し奇談”ものも、この人の抽斗の一つ。
いずれにしても、肩の力の抜けたいい感じの読書でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この人の本初めて読んだけど、綺麗でちょっと不思議な本だった。表題作なんかはホラーなのかファンタジーなのか恋愛小説なのかどれも当てはまるような当てはまらないような物語。
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結末について考えてしまう作品集。
自分の親かそれ以上の時代背景で、当時はそれが当たり前だったのだろうと思いつつ理解出来ない情景も多い。
季節や風景の描写は美しく、日本語も美しい。
表題作は『月下の恋人』だが、私は『回転扉』が好きだった。 -
短編11篇を収録。他の短編集と比べても、本書に収録されている各作品はかなり短い。いずれも読後に余韻の残る幻想の世界を描いている。
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忘れじの宿、泣いてしまいました。
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十一篇から成る短編集。
浅田次郎さんの小説は描写が非常に繊細で、私が最も好きな作家のひとりです。
月の描写、登場人物の訛り、家族愛、奇跡の物語、といったところが浅田さんの小説のキーワードであり、本作にも随所に散りばめられています。
ただ本作に関しては、不思議な展開や、本筋には無関係な長い会話がいくつか見られ、残念ながら他の浅田作品に比べると、「読後の心温まる感」で劣るような気がしました。
おススメは「告白」。 -
「椿山課長の七日間」のイメージが強く、浅田次郎さんはこんな文章もお得意なのだと新しい発見だった。
不思議なことが起こるけど、それは「たまたま偶然」だったり「気のせい」だったりする範囲での不思議加減がとても面白かった。
人は、今自分が置かれている状況次第で、目の前で起きていること、見えていることを自分の状況と関連づけて解釈するのかもしれない。実は全然関係ないのに。
この物語で起きる不思議は、科学的に証明できるかもしれない範囲なので、摩訶不思議か、たまたまそうだったのか?その曖昧さがすごくよかった。
図書館の返却期限が迫り、後半は慌てて読んだ。この品格ある日本語をもう少し丁寧に楽しむべきであった。反省。 -
ファンタジー、読者にゆだねる結末という感じ。
さらさらっと読めるけど、最後まで読む間に忘れてしまった短編もあった。少し物足りなさが残った。 -
私の思う浅田次郎を感じられなくて残念でした
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心の物語11編
心の機微を楽しませて貰える話の数々。