作品紹介・あらすじ
幼くして養父母を亡くした奈津江は、実姉と名乗る祭深咲に伴われ、実父が経営する施設"祭園"に引き取られた。そこに暮らす訳ありの少年少女たち。廃屋と化した"廻り家"と呼ばれる奇怪な祈祷所。得体の知れない何かが棲む黒い森…。奈津江の出生の秘密が明かされるとき、惨劇は幕を開ける-。閉鎖空間に渦巻く怪異と謎を描く、"家"シリーズ三部作最終章。
感想・レビュー・書評
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途中からジュブナイルホラーとして読んだが、こんな聡明な6歳いるかー おーい
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ホラーという視点を使った謎解き。
ミステリ小説のように犯人を探すというよりは、深まる謎とそれを解き明かしてゆく恐怖に中心が置かれた作品である。
とはいえ、三津田作品のファンなので、読み進めながら本当の母親はあの人ではないだようか、灰色の女は子供たちの誰かではないだろうか、と考えながらも呼んでいた。半分くらいは当たっていたと思う。
最後、私は嬉しい、良かった生きてて!という気持ちで終わるのかと思いきや「厭な笑い」という表現でその心情やその先を暗示して終わるのがなんともホラーだと思った。
最後に、やはりホラーとミステリが融合している作品はおもしろい。ちゃんと謎のままの部分(ホラー部分)とオチをつけるところは完結させているところが良いと私は思います。
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エンターテイメントなちょいオカルトミステリー。怖くはない。面白かった。
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『娯楽』★★★★☆ 8
【詩情】★★★☆☆ 9
【整合】★★★☆☆ 9
『意外』★★☆☆☆ 4
「人物」★★★☆☆ 3
「可読」★★★☆☆ 3
「作家」★★★★★ 5
【尖鋭】★★★★☆ 12
『奥行』★★★☆☆ 6
『印象』★★★☆☆ 6
《総合》65 C
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「禍家」や、「凶宅」と同様、幼い子供が引っ越しをきっかけに怪異に巻き込まれていくシリーズの一つ。
今回の主役は6歳の女の子であり、「お狐様」からのお告げにより、失くし物を探すことができるという不思議な力を持っている。父親と母親が亡くなった後に、姉と名乗る深咲から、自分の親は義理の親で、狐使いの血を引いていると伝えられ、「祭園」という孤児園のような施設に入る。
シリーズに共通する問題かもしれないが、主人公が6歳にしては大人びているが、特殊な血筋であるから、ということで一応説明はつけられている。
今回少女が対面する怪異は「灰色の女」なのだが、最初はこの「灰色の女」がオカルト的な、超自然的なものなのか、それとも現実の人間が幽霊に扮している現実的な事件であるのかを探るために物語が進んでいく。
結局これの正体は超自然的な存在の「母親の幽霊」ではなく、現実の存在「園の子どもたち」であると明らかにされるのだが、真の恐怖が襲いかかるのはその後。
まず、姉だと名乗っていた19歳の深咲が、実は自分の母親であり、父親は深咲の父親であるという。性的なことがわからない少女でも、これは怪異への恐怖ではなく、とても身近な、現実的な恐怖であるとわかる。母は少女のために園の子どもたちを殺し、少女を狐使いとして覚醒させるために、恐怖や絶望を与えているのだという。実の母が、自分のために殺人を犯していたという事実は幼い子どもにとっては恐怖だろう。これも現実的な恐怖。
さらに、心を許していた園の少年の一人が姉(母)を殺し、自分は捨てられた双子の片割れだという。現実的な母親に対する恐怖は去ったが、2人揃うと災いを招くという「陰の狐使い」が揃ってしまった。実際、目の前の「弟」は少女のためとはいえ「母親」を殺してしまったし、連続殺人事件が起きてしまったのも、自分が園に来たせいとも言える。
得体のしれない「弟」と自分に対する恐怖は、超自然的な「狐憑き」に対する恐怖。
さらに、19歳だった深咲の母親(少女から見たら祖母か?)に手を出し、13歳だった実の娘、深咲に手を出し、園の少女にも手を出していた「父親」はまだ生きている。
幼い頃の深咲とそっくりである少女が、成長した際に父親から手を出されないとは限らない。これは極めて現実的な恐怖である。
少女のために行動していた、「母親」は「弟」に殺された以上、将来少女は「父親」と「弟」、「現実」と「ホラー」、2つの恐怖に晒される羽目になるのではないか。
そんな、将来への恐怖が想像されるとても怖い話だった。
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家シリーズ三3部作最終章!……と言いながら、話自体はつながっていない。そして今回は全然怖くなかった。おそらく最初から仕掛け部分のほうが強めに出ていたせいだろう。何より、こんな6歳いるの?というくらい、子供が賢い(笑)。
正直、死んでしまった人たちの存在意義が疑問に感じられるほど薄く、彼らでなければならなかったという必然性を感じない。というか、狐がだんだんどうでもよくなっていく展開はどうなんだ(苦笑)。
3作の中では一番物足りない印象になってしまったのがとても残念。
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大好物の三津田ホラー。
でも、この作品は何か薄い印象。
凄惨な悲劇は物語の序盤から炸裂してるのに、いつもの厭味、湿度が不十分な気がした。
でも、やはりそこは三津田ホラー。肝試しのシーンは切羽詰まる怖さを堪能。
どうやって赤子だったあの子は助かったの?が最大の謎。
満足はしました。
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ホラーが読みたくなる季節になってきたので、手に取った家シリーズ3弾目。
…全く怖くない!ミステリ色強め。
更に割と早い段階からオチが読めてしまい、かなりションボリな一冊となってしまった。
ガツンとくるホラー求む。
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話の流れとかは家シリーズのなかではあんまりだったような・・・
ホラーを楽しみたいなら凶宅、ミステリーなら禍家、キャラを楽しむならこれ。
ミステリー好きな人ならこの人めっちゃ怪しい思っちゃう人がすぐに一人。
展開がむちゃぶりーと思う前半。
???「勘のいいガキは嫌いだよ」みたいな。
最後が一番すき。主人公の女の子よりも相方の男の子の方にすごく惹かれる。
あの子最強やんけ!
色々とわからない点もある。最初の祠で救ってくれたものの正体、名前だけあって中身がないファイル。
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著者プロフィール
三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。
「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」
三津田信三の作品