- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751456
作品紹介・あらすじ
周囲の期待を一身に背負い猛勉強の末、神学校に合格したハンス。しかし厳しい学校生活になじめず、学業からも落ちこぼれ、故郷で機械工として新たな人生を始める…。地方出身の一人の優等生が、思春期の孤独と苦しみの果てに破滅へと至る姿を描いたヘッセの自伝的物語。
感想・レビュー・書評
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ハンスの生き方よりもハイルナーの生き方の方が健康的だと思う。
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中学生の頃に母親がこの本を買い与えてくれ(訳者が異なりヘッセ翻訳者として高名な高橋氏であったが)、読んだのが初めての記憶。しかし読んでいる途中は主人公のハンスがかわいそうでならなかった。その感想は今も変わっていない。
好き嫌い関係なく、そしてなんの疑問も持たない(持てない)子供に勉強をさせるのが本当に正しい教育の姿なのだろうか…
私自身も親からの期待を裏切れずに過ごした塾漬けの毎日に嫌気がさし、勉強嫌いになってしまった人間だからそう思うのかもしれない。
やはり今でも読んでいて辛い物語で、結果的にヘルマン・ヘッセという素晴らしい作家を10年以上も遠ざけてしまうことになったのは残念でならない。少なくとも本書はヘッセ諸作の中で、中学生に読ませる本ではないのではないか。親が子供に与える本の大切さはもっと認知されてしかるべき問題だと思う。 -
ノーベル賞作家ヘルマン・ヘッセの代表作のひとつ。大人たちの期待と詰め込み教育に押しつぶされる少年の軌跡。
悲痛な話だ。日本人に特に人気があるというのも、少年ハンスにはどこかしら共感するものが多いからだろう。繊細な感性と周囲の視線。友情と恋愛における齟齬。思春期における様々な問題のすべてが、何かをかけ違えたようにうまくいかなかったら、誰もが同じような苦悩に埋没してしまうかもしれない。そのリアリティと、教育のあり方に対する糾弾は、今の日本人にとっても他人事ではないと思えた。泣ける体力のあるときに読んでおきたい名作。 -
ヘッセが1905年に発表した自身の学生時代を描いた自伝的な長編小説。初めて読んだのは、中学生の頃に新潮文庫から出ている高橋健二訳でしたが、今回は新訳で。しかし、100年以上前の作品が、今も読む度に新しい感動を生みだすという持っている力に本当に驚かされる。ハンスの周りにいた大人たちがもっと色々なサインに気づいていれば、彼は死なずに済んだんだろうと思うとやるせない気持ちになる。新訳はかなり読みやすいので多くの人に読まれると良いな。とは言うものの、四苦八苦しながら、あえて旧訳で読むという選択肢も面白いと思う。
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はじめ読んだのは高校のころだったと思うけど、新潮の高橋建二訳だった。
そのときはやたら内容が重苦しくかんじられたし、読後感がアレなもんで「こなくそ!」てな気分になった。
新訳で読むヘッセ。いいです。
再読だからもちろん物語は破滅という終局に向かっていくことはわかっているんだけれど、全体としてはそんなに暗くなくて、なおかつハンスが最後に感じる抗いようのない徒労感みたいなものにも難なくついていけた。
あとハンスの自然や遊び、あるいはハイルナーに寄せる友情やエンマへの恋慕といった瑞々しさは、やはり新訳に分がある。 -
ヘッセは小学校の教科書に載っていた短編を読んだきりで道徳的ないささか説教くさい作風と思い込んでいた。
しかし改めて本作を読んでみて、模範的な人間になることを啓蒙しているのかと思いきや、個性を廃して国家に都合のいい人間を育てようとする社会への批判が込められていることに気づいて読み方がくるりと変わってしまった。
周囲の過剰な期待と失望に抑圧された主人公が束の間の安らぎを得る自然や風景の描写が圧倒的に美しい。 -
純文学でこんなに面白いと思ったのは初めてだった。
少年だから年齢も性別も私とは違って共感は出来なかったけど、一人の人生を生きたという読後感。
場面の情景が浮かぶ様な美しい描写。
胸が苦しくなる精神疾患状態の主人公の描写。
今度は違う翻訳でも読んでみたい作品。 -
読んで良かったと思える作品
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おとなは、子どもに過度の期待をすることでつぶしてしまうこともある。
教育とはかならずしも人間を幸せにはしない、という感じの小説。
名作と呼ばれるだけあって、説得力がある。