- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334752804
感想・レビュー・書評
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とても読みやすかった。澁澤訳よりも言葉が平易で、すらすら読める。訳者あとがきでも言及されているが、特に若い人が読むならこちらの方が手に取りやすいだろう。もちろん好みの問題だけど。題名どおりのシーンで始まる話は、家族愛を呈している様子から、段々と様々な異性間の愛情を炙り出していく。ビグア大佐の行動や内心の葛藤は滑稽だが、それで終わらないのは、大佐や奥さん、そして疑似家族の子ども達それぞれの孤独感がうっすらと、しかしきちんと書かれているからだろう。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/742375
不幸な子どもを見つけてさらい、自分の家の”家族”にしていく大佐。
そのうちの1人に家族以上の感情を抱いてしまい…。
ハッピーエンドじゃないんだろうな、と思いつつ気になって最後まで読み進めてしまいます。 -
誘拐した子供たちを慈しみ、養育しているビグア大佐。奇妙だが穏やかな疑似家族の生活は、一人の少女を引き取ったことで変わってしまう。少女への欲望に駆られながらも父としての権威を保とうとする大佐の姿は、話が進めば進むほど悲喜劇の様相を呈する。そして、子供たちはというとこれっぽちもそんな彼の思いどおりになってはくれない。いびつな話のようでいて、大佐と子供たちの思いの噛み合わなさ、それでもお大佐が子供たちに向ける思いはしごく真っ当な父と子の物語のようにも見えた。
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「ぐりとぐらと視姦、そして絶望」みたいな話でした、良い意味で。
主人公ビグア大佐の変態さとかネジの飛び加減がもうリアル「お巡りさんこの人です」なんだけど、文体が全てのなまぐささを漂白しちゃってるから、なんだかビグア大佐可愛らしく見えてくるし、むしろさらわれて大佐のこどもになって楽しく暮らしたいぜ!
あと、この話の素晴らしい点は後半になるにつれてじわじわと作者の悪意が文章から滲み出てきてラストでピークになるところ。意地悪な展開好きとしては非常に清々しい。ビグア大佐には気の毒だけど。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/742375
不幸な子どもを見つけてさらい、自分の家の”家族”にしていく大佐。
そのうちの1人に家族以上の感情を抱いてしまうことで、話は進展していきます。
きっとハッピーエンドじゃないんだろうな、と思いつつ気になって最後まで読み進めてしまいました。 -
フランスの詩人シュペルヴィエルの名作は童話のように始まる。パリの街で捨て子や放置された子供たちを攫って自分の家族を作り心優しき父親となったピグア大佐だが、新たに迎えたマルセルという少女が美しい女性になるにつれて親心と恋愛感情のせめぎ合いに苦しみ始める。マルセルは大佐の子供のひとり、乱暴なジョゼフに無理強いされて妊娠してしまう。大佐はジョゼフを追い出しマルセルの将来を考えて一家でアメリカに引越そうと船に乗るが水夫の中にジョゼフがいて、いつのまにか彼女はジョゼフに好意を持ち2人は結婚するという。まさに父親殺しのテーマ。大佐の心はここで完全に壊れる。これは苦しい。この年になると若者目線より完全に大佐の心にシンクロして悪夢のような絶望のラストへ。もう息ができない、窓を開けてくれ!悪酔い
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原書名:LE VOLEUR D'ENFANTS
著者:ジュール・シュペルヴィエル(Supervielle, Jules, 1884-1960、ウルグアイ・モンテビデオ、詩人)
訳者:永田千奈(1967-、東京都、翻訳家) -
乙女心さっぱりわからない
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憂いを帯びたエロスが、小説の舞台ロンドンの霧のように作品全体を包んでいる印象の残る一冊。
あとがきに書いてあった、続編も気になるところ。
同じシリーズから出して欲しい。 -
マルセルにどうしようなく惹かれながらも、あくまで父性をもって接しようと奮闘する大佐。欲望に打ち勝とうとする描写等、滑稽といえば滑稽なのだけど、本人の真剣さと切迫感、それによって行動がちぐはぐになっていく様が切なく哀しかった。大佐を大好きになったわけじゃないけど、良くも悪くも根が真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐな人なんだと思うと、余計にラストが辛くなる。