薔薇の奇跡 (光文社古典新訳文庫 Aシ 4-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (583ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753443

感想・レビュー・書評

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  • 159Pまで頑張ったが、挫折。イケメンがいっぱい出てくるのに(苦笑)、読めば読むほど苦手意識がわいてくる。回想録型の垂れ流し系文章があわないのか……?ただ、欠点がいっぱいあって受け付けないというわけではないので、もしかしたらいつか再挑戦するかもしれないということで、現時点での評価はなしにしておく。

  • 堀口大學訳がとうの昔に絶版なのでもう忘れかけていたんですが古典新訳文庫が新訳だしてくれたので読むことに。ジュネの翻訳は日本語で読んでるだけでも難しそうなのがわかるし、刑務所用語(隠語?)として頻出する「猛者」とか「ハゲタカ」とか「ヒモ」とか、それだけですでになんかもうニュアンスでしか理解できない(苦笑)(まあヒモはヒモですけど、ここではどっちかっていうと「ノンケ」のニュアンスかと解釈)さらに難解でもってまわった比喩、どんどん横道に逸れて飛躍してゆくイマジネーション、回想はランダムで時系列バラバラだし、もう、ぐっちゃぐちゃのパズルのピースの山を前に茫然、みたいな。ではなにも伝わらないか、というとこれが伝わってくるのだから凄い。

    舞台はフォントブロー中央刑務所。30歳のジュネは20歳の美しいビュルカンに夢中。さらにジュネの憧れ(?)の死刑囚アルカモーヌへの一方的な妄想と同化、かつてジュネが15歳のときから入所していたメトレー少年院時代の兄貴分で恋人のディヴェールとの再会、などを軸に、ジュネの思考と回想はメトレーとフォントブローを行ったり来たりする。基本的にジュネはとても面食いなのか好きになる相手は全員美形(笑)脇役だけれど、一番美形だといわれている「夜明けのルー」もとても魅力的な人物だった。

    少年院の回想は、そこが少年院であることを忘れて、萩尾望都的ギムナジウムの少年たちを思い浮かべてしまう。刑務所であろうが学校であろうが、少年たちの間で繰り広げられる駆け引き、力関係、今風にいえばカーストやマウンティングなどはいつの時代のどこの国でも同じ。ジュネ自身もメトレーの少年院を甘酸っぱい青春のノスタルジーの場所として回想している。

    対して大人の刑務所フォントブローは糞尿描写も性描写も露骨で不潔でにおってきそう(苦笑)でもそこで生きる囚人たちは、ジュネにとっては写真に写したら薔薇にしか写らないほど美しいものだった。ものすごくアホっぽくて軽いサブタイトルをつけるならさしずめ『薔薇の奇跡~わたしの愛したイケメンたち~』みたいな感じ(笑)いやふざけているわけではなくて、これはジュネにとっての薔薇たちの記録なんですよ。

  • すべてを忘れてただ「私」を信じようとする試み。ルソーに端を発しジイドへと引き継がれた私小説の形式はここでジュネに託された。

    不思議な小説だ。穏やかな湖面に時々大きな気泡がポコンと湧き出るように、永く続く語りの最中に突然鮮明な映像が強く喚起される。そんな場面がいくつかある。例えば、中庭で起こったちょっとしたいざこざを遠巻きにただ眺めているビュルカン、冷たいバールの感触、川べりで裸にされた四百人の少年囚たち、などだ。たえず交錯するメトレー少年院の頃の記憶と監獄の描写。嗚呼、ただただ美しい。

    ちなみにジュネが拝借したのはあくまで私小説の「形式」であって、私小説そのものではない。ここでは凶悪犯を収容するフォントヴロー刑務所での獄中生活が濃密な幻想性を伴う筆致で描かれているが、ジュネ自身にフォントヴロー刑務所に収監された経験はない。

  • 入手困難だった本書が新訳で復刊。調べてみると、堀口大學の旧訳からこっち、復刊や新訳が無かったようだ。ジャン・ジュネの小説は割と入手が容易なものが多いので意外だった。
    現在、主人公が置かれている刑務所と、思い出の中の少年院がシームレスに繋がり合って、独特の作品世界を作り上げている。本書もある種、ゴシック的な側面があるとも思う。俗っぽさと幻想味が同居している。しかし、その『俗っぽさ』にフォーカスしてしまうと、ツッコミ待ちだとしか思えない内容ではあるw

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