サイラス・マーナー (光文社古典新訳文庫)

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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754105

感想・レビュー・書評

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  • 「なりたかった自分になるために、遅すぎるなんてことはない」

    先日読んだ『夏の扉』がとてつもなく面白かったので、おかわりです
    ここでハインラインではなく訳者の小尾芙佐さんの方をおかわりするってところがもうセンス!

    ということでイギリス文学を代表する女流作家ジョージ・エリオットの名作『サイラス・マーナー』です

    エリオットの宗教観がどうのとか、彼女の結婚や人生がどうのとか、当時の女性の地位とか時代背景とか、あっしにゃ難しいことはさっぱり分かりませんよ
    分かりゃーしませんよ

    だけどね旦那
    正しい心を持った人たちが幸せな結末を迎える
    正しくない心を持った人も最後には改心する
    それだけで十分じゃございませんか
    それだけで十分人の心を震わせることが出来るんじゃございませんか

    そしてこういう物語こそ残していかなきゃならないんじゃないですかね

    南極の氷が全て溶けても残ってほしい物語でした(いや南極の氷も残ってほしいけども!)

    • ひまわりめろんさん
      あ、でもお相手の名前がジョージで、どう考えてもそっから取ってるのでお前バレたいんかバレたくないんかどっちやねん状態です
      いつの時代も謎多き女...
      あ、でもお相手の名前がジョージで、どう考えてもそっから取ってるのでお前バレたいんかバレたくないんかどっちやねん状態です
      いつの時代も謎多き女心ですなw
      2023/12/21
    • 土瓶さん
      わざと小物を置いていって自己主張する女のアレかな。
      わざと小物を置いていって自己主張する女のアレかな。
      2023/12/21
    • ひまわりめろんさん
      それ!w
      意外に当たってるかも
      19世紀も21世紀も女心はあんまり変わってないのかもね
      それ!w
      意外に当たってるかも
      19世紀も21世紀も女心はあんまり変わってないのかもね
      2023/12/22
  • 序盤、次々理不尽な目に遭わされるサイラスが不憫で、読むのが憂鬱になりかけたのだけど、第一部の終盤から話が一気に動いてまあ面白い!
    女性たちが皆良かったなぁ。
    それぞれの結末も、苦いものも含みつつも光がある。
    血縁至上主義ではない家族の描き方も良かった。
    解説も丁寧で、より今作に近づけた。

  • ヴィクトリア朝を代表する男性名の女流作家ジョージ・エリオットの代表作の一つ。寓話的な物語に心打たれる傑作。

    親友と恋人に裏切られ、信仰と故郷を捨てざるを得なくなるサイラス・マーナー。冒頭から悲劇のどん底に突き落とされる展開に引き込まれ、真面目で純朴なサイラスに愛着がわいた。不幸な境遇ゆえに彼が金貨に執着するようになってしまうのもどことなく共感できる。このまま孤独に人生を終えるかと思われた矢先に起きるサスペンスフルな事件――そこから一気に面白くなってくる。

    本作でサイラスの対比となっているのはゴッドフリーだろう。弱点はあるが決して悪人ではない彼の人生の苦悩が、サイラスとは逆の立場から物語の主題に迫っていく。さらに、潔癖なナンシーの家庭生活のあり方が当時の社会通念をよく表現していて、本作の寓話的テーマを陰となって浮かび上がらせている。

    寓話的といったが、繊細な心理描写は現代的でもあり、時代的背景もあって、小説として非常に面白い。「めでたしめでたし」で軽くすませられない、ヴィクトリア朝文学ならではの本物の感動があると思う。読後感は最高。

  • 光文社古典新訳文庫には本当に助けられる。古典を今息をしている言葉で、というコンセプトどおりだ。本作でそれを感じたのは、たしかに翻訳で田舎ことばなどは使っているが、さほど時代錯誤的ではないし、成長していくサイラスの娘エピーの言葉使いがとてもあたたかみを感じるように表現されているので、共感も強まる。だいぶ前に読んだ当時は、地主ゴッドフリーは嫌なやつでしかなかったが、今回は彼やその妻の苦悩も少しはくみ取れた。子供を育てることで変わったサイラスはもちろん、車大工一家たちや、周囲の人達の情にも胸が熱くなる。

  • 素朴な話。若い頃親友に貶められ、故郷を去ることを余儀なくされてしまった。流れ着いた見知らぬ土地で他人と交流を持たないように生きてきたが、ある時全財産が盗難にあってしまった。リアル泣きっ面に蜂状態。そこに突然迷い込んできた幼女二歳を養育することを自分の天命と信じる。この人物が表題の人。今までぬらりひょんと、人にされるがままに争いごとに目をつむり生きてきたが、育ててきた子供と離れることになり、初めて自分のエゴを他人に向けて発射する。それは愛ー、たぶん愛ー、きっと愛ー。。。

  • 確か中学生の教科書に載っていて気になっていたのに今日まで読まず。人間は社会的な動物で、孤独でも一人きりでは生きてはいないし、生きてもいけない。マーナーの若かりし頃の辛さもエピーとの出逢いで幸せになっていく。我が子以上に大切に育てた子の幸せを願う父の愛の深さに涙が出そうになった。すごくきれいな物語。少し心が疲れたときに読み直したいかも。

  • 友人に裏切られ、免罪をかけられ、婚約者も失ったサイラス・マーナー。神にも人間にも絶望したサイラスを救ったのは何か?

    金を蓄えることだけが彼の唯一の救いとなるが、そんな金も盗まれてしまう。孤独で寂しいマーナーからこれ以上何を取れば気が済むのかと言いたくなるほどの不幸。しかし、これを後に本人が、不思議な軌跡だと言う。

    エピーという1人の赤ん坊が彼の人生を救った。19世紀は科学の目覚ましい発展(ex. 進化論)によって聖書の非論理的な神話性に疑問を抱く時代であった。著者エリオット自身、もともと福音主義者だったが、22歳に聖書を合理的客観的に解釈する高等批評に触れ、宗教観が一変する。

    そんなエリオットが「孤独を救済するのは一体何か」と言う問いにアプローチする中で生まれたのが『サイラス・マーナー』なのかもしれない。

  • 時代における女性云々の解説には興味がないが、キリスト教云々には感じることがある。
    サイラスが無実の罪を着せられて故郷を去り、後年そこを訪問して事実を知ろうとしたとき、そこはすでになくなっていた。神の下した罰で燃え尽きたソドムの町ように。ダンスタンにも同様である。
    パリサイ人のごとき信仰の礼拝堂は跡形もなく、苦しみの後に下された愛と思いやりという最上の恵みはキリストへの信仰を象徴するかのようだ。
    しかしながら、読書とは登場人物の悲しみや苦しみにこそ深い共感と追究心がわくもので、幸せになった彼らにはよかったね、という軽い感情程度しかわかぬものなのだな。
    喜びにこそ感動が大きくあってほしいのに、情けないものだ。

  • 良い話だとは思うけど、個人的にはそこまで引き込まれなかった。

  • 全ての、親友や恋人から裏切られ絶望の淵に沈んだ人たちに――
    全ての、悪党にだまされて大切なものを盗みとられた人たちに――
    全ての、あわれな母なし子を自分の子供のように慈しみ育てた人たちに――
    そして全ての、貧しくて心の美しい人たちに――幸いあれ!

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著者プロフィール

George Eliot(Mari Anne Evans)1819-1880.
筆名は男性、本名メアリ・アン・エヴァンズという女性。英国小説史における、もっとも傑出した知性、リアリズムの作家と評されている。
彩流社からの邦訳・関連書に『急進主義者 フィーリクス・ホルト』(冨田成子 訳、ジョージ・エリオット全集 6、2011年)、『スペインのジプシー 他2編 とばりの彼方、ジェイコブ兄貴』(前田淑江、早瀬和栄、大野直美 訳, 玉井暲、廣野由美子 解説、ジョージ・エリオット全集 9、2014年)、『牧師たちの物語』(小野ゆき子、池園宏、石井昌子 訳、惣谷美智子 解説,、 ジョージ・エリオット全集 1、2014年)、『ロモラ』(原公章 訳、ジョージ・エリオット全集 5、2014年)、『詩集』(大田美和、大竹麻衣子、谷田恵司、阿部美恵、会田瑞枝、永井容子 訳 ジョージ・エリオット全集 10、2014年)、『サイラス・マーナー [付]ジューバルの伝説』(奥村真紀 訳、清水伊津代 訳・解説、内田能嗣 解説、ジョージ・エリオット全集 4、2019年)、『ダニエル・デロンダ(上・下)』(藤田 繁 訳、ジョージ・エリオット全集 8、2021年)、『テオフラストス・サッチの印象』(薗田美和子、今泉瑞枝 訳、2012年)、『ジョージ・エリオット 評論と書評』(川本静子、原 公章 訳、2010年)、『エドワード・ネヴィル  G・エリオットの少女期作品とその時代背景』(マリアン・エヴァンズ 著、樋口陽子、樋口恒晴 編訳、2011年)、『ジョージ・エリオット 時代のなかの作家たち 5』(ティム・ドリン 著、廣野由美子 訳、2013年)ほかがある。



「2022年 『フロス河畔の水車場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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