ヴェーロチカ/六号室 (光文社古典新訳文庫 K-Aチ 2-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754792

感想・レビュー・書評

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  • ひたすら暗いイメージで、救いなく、どこかおかしい作品群だが、妙に味があり最後の1編まで楽しく読めた。ヴェローチカの残念なラスト、退屈な話や6号室のような虚しい人生の幕切れ。カシタンカのような動物物も展開に意外性があっておもしろい。6号室での、狂人の定義とは健常者の常識から病気に仕立てられたのでは、というのも時代背景を考えれば大いにありえると思う。
    訳者の手腕かもしれないが読みやすい文体でした。

  • ロシア文学の巨匠チェーホフの短編集。表題作「ヴェーロチカ」は世話になった場所を去る時に少女から「好きなんです、あなたが!」と告白される話。ところがこの主人公の青年は煩悶し告白を袖にします。この展開が読めば読むほど奇妙で、しかし分かるようで、読み返すたびに色々な読み方ができそうです。

  • 初のチェーホフ。
    ドストエフスキーより相当に読みやすい。
    とはいえ、地続きな部分も感じる。

  • 「小説は問題を提起しても答えは与えない」というチェーホフのスタンスが相変わらず(他の作品と同じで)示されている。教訓となるわけでも無いし、決して登場人物に共感できるわけでもない。にも関わらず、チェーホフ作品に惹かれるのは、彼の生きた時代におけるチェーホフのスタンスが現代に通じる点にあると思う。革命前夜の時代、教養はあるが社会で実際に役割を持つことはできない貴族、貧しい暮らしに喘ぐ下層階級、誰もが今の社会に不満を持っているのに、どうにもならないという諦観を持ってしまっている(直接的な批判を加えることをことごとく避けているチェーホフ作品において「しまっている」という表現はそぐわないかもしれない)。作品の中にこのような人々の姿が現れているが、これは問題に答えを与えないチェーホフにも同様である。チェーホフの作品にはこの時代のロシアの抱える問題が忠実に描かれているが、そこには革命への意欲などは全く感じられない。淡々としているのである。これが現代にも通じると思い、作品には共感しないがチェーホフには共感してしまうのだ。今の時代に問題ならいくつも挙げられる。だがそれをどう解決するかといえばお手上げ。自分の無力を漠然と感じるしかない。チェーホフ作品には「冷めた」現代人に通ずるところがある気がするのだ。

  • 雰囲気が好みだった

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著者プロフィール

一八六〇年、ロシア生まれ。モスクワ大学医学部を卒業し医師となる。一九〇四年、療養中のドイツで死去するまで、四四年の短い生涯に、数多くの名作を残す。若い頃、ユーモア短篇「ユモレスカ」を多く手がけた。代表作に、戯曲『かもめ』、『三人姉妹』、『ワーニャ伯父さん』、『桜の園』、小説『退屈な話』『六号病棟』『かわいい女』『犬を連れた奥さん』、ノンフィクション『サハリン島』など。

「2022年 『狩場の悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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