母親ウエスタン (光文社文庫 は 35-1)

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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334768560

感想・レビュー・書評

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  • よくまぁ、こんな話が思いつくなぁって思う。
    家政婦ではなくて、流れの母親。そんなんある?って感じでした。様々な理由で母親がおらず、家族が回らなくなった家庭にそっとは入り込んで、妻ではなく母親の役割を望む。男性から見ても女性から見ても稀有な状態ですよね。逆の方が実例としても物語としてもよっぽど多そう。。
    現代軸が有理くんとあおいちゃん。序章がこの2人の話からだったから、初めはさきの想像が全然できなかった。中盤になって、だんだん広美さんの思惑がわかるようになると、どんどん物語が面白くなってきてするする読み進みました。
    月末に子供が関わってこなかったのも締まりが良くて、なんだか最後にすごくスッキリしました。
    とある女性の一生、とくくるとよくある女一代期かな?って思いますが、実際には他にはない小説です。

  • 母親を失った機能不全家庭にどこからともなく潜り込んで最高の母親役をしてはまたどこかへと去る女の物語。

    母の務めを果たしては立ち去ることで心を救ったかと思えばかえって残酷な仕打ちをしていたり、恨まれているようで感謝されていたり。「母親」という役割は本当に奥深い。自らも母親になり親と子どちらの立場もわかるようになってから読んだ為より一層ラストが味わい深かった。

  • するすると読んだ。
    最後は広美さんが良い形で報われて読後感がよかった。

  • 2つのストーリーを交差させながら過去と現在を行き来する。それでいてわかりやすいストーリー。
    奇抜なタイトルの意味は読了すればすぐに理解できる。

  • 3最初2つの物語が区切られながら進んで行くので時系列とか話の理解に戸惑ったけど途中で糸が繋がるようになってきてそこから引き込まれて面白かった。
    広美は捨て猫のように何かしら問題を抱えている母親がおらず父と子供たちで暮らす家にすっと入り込んではしばらくするといなくなる。
    広美は何を考えているのか何を求めていたのか。

    以下心に残ったフレーズ。
    「だけど、あおいを悲しませたりしないから安心して」
    もう十分悲しんでいることが、祐理には伝わっていない。それがあおいには何より切ないのだった

    あーこれ恋愛あるあるーと思った

  • けっこう面白かった。ストーリーは、主人公「広美」の行動や思いを、過去と現在で交互に展開させながら進んでいく形式。
    過去では、「母親のいない子供(たち)」の世話をするために、好きでもないその子供(たち)の父親と付き合い、そして数ヶ月、数年たって別れていく「広美」を、その父親の観点から描いている。また現在では、「世話してもらった子供たち」のうちの1人で、苦学しながら教員か公務員を目指す「祐理」とその恋人「あおい」が、「昔をあまり覚えていない広美」に対して抱く、深い思いや感情を描いている。
    「広美」が何故、縁もゆかりもない「子供たち」を母親代わりに世話をするのか?はあまり重要ではない。小説の最後の方でその理由が分かるが、けっこう平凡で、ある意味期待外れだった。
    それより、世話の必要なくなったとたん、「広美」は彼ら父子から離れていく。子供たちは「広美」がいなくなることに納得していないが、父親たちの方は何故か「広美が何時かは自分達の前から姿を消す」ことが分かっていた。勿論、何故自分達の前に表れ、何故突然に自分達の前から姿を消すのかは分からないにしても。
    読んでいると思うことは、「広美」にとっては「子供を世話すること」が大事で決して「その子供が好きなわけでも、ましてやその子の父親が好きなわけでもない」ということ。だから、子供たちが大きくなって「広美」に会いに来た時、本当の母親かと聞かれても「いいえ」と簡単に完全に否定する。そして感謝する彼らに「助けてもらったのはこちら」と彼らの感謝も拒否する。この「広美」の行為と思いは、何だろう?自分の実の子供に対する贖罪とか、子と無理やり離された不条理に対する彼女なりの抵抗とかは、何か安易だ。
    よく分からないが彼女は「世話する子供」がいないと自分自身を生きられないのかもしれない。
    最後の最後、「世話の必要のない」大人についていった「広美」は何かを吹っ切れたのかもしれない。

  • 何を求めて転々と他人の家族に入っていったのか。別れた子供と会うためなのか。母親として転々とする中で、小さな子供は本当の母親だと誤解してしまう。でも広美はそうは思っていない。子供の心は正直だし素直だ。一緒に住もうと言ってもまた消えてしまう。なんとなく広美の気持ちもわからなくもないが。すっきりしなかったなあ。

  • 映画化したら見てみたい。

  • 慣れきった日常をキラキラした時間に変えるのは、外からの視点が必要。母親不在で壊れかけている家族に、野良猫みたいに、そっと入って来て、何とか持ち直した頃に、またそっと出てゆく。母親不在の荒れた家族に、ふらりとやって来て、またふらりと去っていく話。

  • 幼子の世話や育児を目的に、使えるものは何でも使い、時には自分の体も使って、その父子たちの中へ入っていく。

    それはまさに流れる者のように続いていく。

    読後は想像していたのと違うな〜と正直戸惑ったけど、日にちが過ぎるにつれて、主人公が自分の子供を育てさせてもらえなかったことから、困っている家族、特に父子家庭の子供を放っておくことができなかったんだろうなと。
    彼女の抱えるこころの傷やくやしさ。
    最後、少し明るい未来が見えて良かった。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回「NHK創作ラジオドラマ大賞」を受賞。07年『はじまらないティータイム』で、第31回「すばる文学賞」受賞。他の著書に、『母親ウエスタン』『復讐屋成海慶介の事件簿』『ラジオ・ガガガ』『幸福レシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』『ランチ酒』「三人屋」シリーズ等がある。

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