与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 (光文社文庫 さ 35-1 光文社時代小説文庫)
- 光文社 (2018年6月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334776787
感想・レビュー・書評
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蔵書?
新刊(文庫・千葉1)
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新刊(文庫・下北沢1)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奈良の大仏を造った人々の想い
箒木蓬生さんの「国銅」以来
澤田さんの作品では 一番好き -
コロナ禍になってから、東大寺の大仏殿には定点カメラがおかれ24時間毎日配信されている。軽い気持ちで見始めた配信だが、朝に夕に、法要や鐘の音に祈るにつれて当時この大仏を作った人々に想いを馳せるようになった。そんな人達の苦労と、辛い日々の中での小さな幸せである三食の飯をテーマとした本。故郷から連れてこられ、暑さ寒さで辛い中に、事故と隣り合わせの肉体労働。その中で美味しいご飯を食べさせてくれることがどんなに助けになっただろう。彼らのおかげで今疫病に苦しむ私達が大仏様に救われている。
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東大寺造仏所で働く人々のために飯を作る炊屋(かしきや)の炊男(かしきおとこ)、宮麻呂。
客である造仏所の働き手たちのために、自ら材料を集めに回り、少しでもうまい飯を提供する。
ぶっきらぼうだが面倒見がよい彼の周りには、多くの人々が集まってくる。
近江の国から仕丁として働きにきた真楯もその一人だ。
真楯は時々宮麻呂の仕事を手伝いながら、次第に宮麻呂の過去を知ることとなる。
その過去には、八十歳を超えた大徳、行基が関わっているらしい。
まず、大仏建立という題材の設定が面白い。
金属を鋳る作事場の熱、大勢の働き手が飯を掻き込む炊屋の賑わい、奴婢小屋のにおい―ーこうした場面に、本当に立ち会っているような気分になる。
東大寺の大仏は二回見に行った。
恥ずかしながら、ただ、でっかいなあ、と思って見ただけだ。
そこに故郷に残した家族を恋しがったり、上役とやりあったり、組織の理不尽に歯噛みをしたりした人々いたなどと想像することもなかった。
そこだけでも、作家の想像力ってすごい、と思う。
きっと今度大仏を見る機会があったら、見る目が変わっているはずだ。
人物は大勢出てくる。
その描き分けは大変なことだろうと思う。
が、この作品ではしっかりなされていて、安心して読める。
写経所のまだ若い経師である黒主は「僕は~です」といった話し方をする。
奈良時代に?と、最初違和感もあったけれど、しかしキャラには合っている。
真楯は宮麻呂に基本的には敬語で話すが、呼びかけは「宮麻呂」というのにも驚いたが、この時代はこんなものなのかもしれないと思ったりもする。 -
当時の食生活が細かく書かれていて勉強になりました。
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奈良の大仏を作る人たちとそれを支えるご飯どころのおはなし。この時代のゴハンなんて想像もつかなかったけれど、描かれる食事はどれも美味しそうでたまらない。時代は違えど、人と人とが交わりながら働いて、労働のあとのご飯に救われて、、というのはいつになっても変わらないのだなぁとしみじみ。面白かった。
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安都雄足が出てる小説なんてあるのかよ!(驚)
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国家プロジェクトの蔭に物語
東大寺造仏所炊屋私記の人物
は生き生きと描かれて物語と
して完成している
奈良時代って面白いっす! -
大仏建造現場の炊き出し名シェフと
その周りの人達のお話。
重労働には旨い飯、と妙な真実に気が付いてしまいました。 -
面白かったー。でも、陸奥での金産出の話は複雑。それで蝦夷たちがこれからどれだけ苦しめられるか、高橋先生の陸奥三部作大ファンとしては切ない。。。