花氷: 松本清張プレミアム・ミステリー (光文社文庫 ま 1-57 光文社文庫プレミアム 松本清張プレミアム・ミ)
- 光文社 (2018年9月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334777180
感想・レビュー・書評
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女性遍歴も多く、色んな稼業を経て不動産業に携わる粕谷。国有地払い下げを企て、過去の女性と偶然再会したのを契機に、銀行員、その支店長、代議士、その派閥のボスなどに近づく。
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不動産ブローカーの粕谷為三は、一攫千金を狙って、策を弄し、女を使って、銀行員、代議士、官僚に接近していく。
1966年、腐敗した政界裏面を描いた作品というが、とにかく主人公が悪い奴で、女性に暴力をふるい道具としか思っていない。同情すべき点も共感できるところもない。
主人公がどこでつまずくか、それを楽しみに読んだ。 -
久しぶりに松本清張の小説を読んだ。昔はすごく好きだった。松本さんの小説に出てくる今の言葉で言えばサイコパス。この小説も自分が大金を手に入れる為に女を利用する、悪知恵を働かせるサイコパスの男が主人公。どこで主人公がつまづくのか、破滅するのかと読み進めた(松本さんの小説は悪人は最後に必ず破滅するから) ラストはやはり主人公の一攫千金は叶わない。悪人は徹底的に破滅するストーリーだからスカッとするかな。たまに読みたくなる。松本さんの小説って。
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粕谷というのは労働が嫌い、人に使われるのが嫌、だが目端が利くので自信がある、職をあれこれ変えながら、挙句に詐欺まがいのことをしてしのいでいる男。今は不動産ブローカー。国有地払い下げで儲けようと欲に駆られている。
作者は描いていないがきっと姿かたちのいい男なのだろう、今でいうイケメン、もてるから3人の女性をうまく操り(だから氷の中に凍らせた花=「花氷」にたとえられて)利用しながら、金融界、政界、官庁にと必死に画策するストーリー展開。悪なのに惹かれてしまう女性もだめだなあと思うが、また、その女性に操られる男性も哀しい。
清張さんだから結局悪事は成功しないのだし、書かれたのが1960年代、昭和どっぷりで古めかしいとはいえ、近々でも似たようなことはありそうなのが読ませるというもの。
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清張作品はたくさん読んでいるけれども、まだまだ読んでいないものがたくさんあるのに驚く、と共に60年代当時の清張さんの創作活動がすごかったのだと知る。 -
主人公はアカン奴だし、女に暴力ふるうわで、最初読むの辛かったけど、とにかく最後まで読み切らせるその手腕はホンマに凄い。