- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334777722
感想・レビュー・書評
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ある時から急に街中に現れるようになった、イソギンチャクのような頭を持つ妙な生物。不思議で美しい曲を奏でる「それ」は、見る間に増えていった。
美しい歌声を持つ「それ」は人々を魅了してゆくが、亜紀は彼らが引き換えに人間から大切な何かを削り取ろうとしているような不快感を覚えていた(表題作)
SFを中心にホラーやファンタジー味のある10作を収録した短編集。
何処にもいないような異形の存在や未知の生物、人間に近いような人工知性などを本当にあるようなリアリティで描いていて、私たちが実際に住む世界とは全く違うのに没入感が高いです。イソギンチャクのような奇妙な生物が歌う繁華街、幼馴染の背後に蠢く赤い手、凶暴な泥棲生物の犇めく泥の海。大切な故人の情報を取り込ませたメモリアル・アバターなど、話によって変わる情景が、どれもありありと想像できます。
個人的に気に入ったのは、表題作の『夢みる葦笛』と大地を埋め尽くす冥海とそこに住む泥棲生物から逃れ、古い時代の建造物をロープと滑車で繋いで暮らす地上の住民たちの話『滑車の地』。
機械的な印象の強いSFというジャンルですが、描かれるのはどの話でも「人間とは何か」を問いかけるようなヒューマンドラマ。ゆるゆると滅亡に向かっていくような、ディストピア風の世界の中で、それでも確固たる意志と鮮やかな希望を持つ主人公たちが印象的でした。
SFといってもハードすぎず、世界観も分かりやすくて読みやすいですし、幻想的で寂しくも美しい話ばかりなので、SF初心者さんにもおすすめしたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めてのSF。非常に面白かった。これまではどんでん返しが待つミステリーなどを中心に読んできたため、楽しみ方が分かっていなかったが、表題にもなっている短編である夢見る葦笛を読んですぐ、SFの楽しみ方が分かった気がする。SFは世界観を楽しむものなんだと思う。
その世界に読者を入り込ませる表現力が見事で、次々と頭に像が浮かぶような文章であった。
また最初入り込むのが難しかったとしても、信じて読み進めるべきだ。「プテロス」がそうだったが、読み進めるうちに、当初イマイチしっくりこなかった表現が、だんだんとイメージができるようになる。
全てが傑作なこの短編集が初めて読むSFで良かった。 -
ネットで評価が高かったので読んでみました。
SFと伝奇がミックスされた感じで、昔でいうなら星新一(読んだことないですが)さんの感じに近いのかもしれません。
短編集ですが個人的には「眼神」「氷波」「滑車の地」が好きです。 -
短編集。呪術、滑車、1930年代といった"昔"をイメージさせるものに包まれて読み進んでいくと、ふいにSFが顔を出し、それまでのイメージを少しずつ砕いていつのまにか全く違う空気の中にいる――そんなふうで、おもしろい。思ってもみなかったところに繋ぎ目が合って、毎度びっくりさせられる。
そんな仕掛けの中でも、誰もが必死に生きていて、選択を迫られて苦悩したりしているのがもう、リアリティに満ちていて・・・幻想的なところもあるのに、ひとつ読み終えると物語の気迫に圧倒されたような気分になる。 -
怪談であり、ファンタジーであり、SFである。
ラブクラフト、オールディス、半村良、恒川光太郎など、いろんな小説を思い出された、多種多様な傑作。 -
本屋で一目惚れして買ったSF短編集。
近未来に対する憧れと少しの恐怖が感じられる。
上田さんと言えば、前に「ラ・パティスリー」を
読んだからその印象が強かったが、
本当はSFの人だったのか!と嬉しい発見だった。
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なんて言えばいいんだろう、とても綺麗で少し悲しげなSF!!めっちゃツボでした
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「夢みる葦笛」
「眼神」
「完全なる脳髄」
「石繭」
「氷波」
「滑車の地」
「プテロス」
「楽園〈パラディスス〉」
「上海フランス租界祁斉路三二〇号」
「アステロイド・ツリーの彼方へ」
どれも、人間とは?と問いかける考えさせられる深いお話しばかりです。かと言ってまったく難しくなく文章のうまさと物語のおもしろさに引き込まれます。 -
SFと伝奇の短編集。それぞれ短い話だが、よい話ばかり。
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どの話も好きでしたが、
特に「アステロイド・ツリーの彼方へ」と「楽園(パラディスス)」が好きです。