黄土の奔流: 冒険小説クラシックス (光文社文庫 い 1-8)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334779221

感想・レビュー・書評

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  • 生島治郎『黄土の奔流 冒険小説クラシックス』光文社文庫。

    過去に刊行された傑作冒険小説の再刊企画の第1弾。第2弾の胡桃沢耕史『天山を越えて 冒険小説クラシックス』を読んでみたら非常に面白かったので、本作も読むことに。

    1965年刊行の紅真吾シリーズの第1作。これぞ冒険小説のお手本というようなワクワクするストーリーに心が踊る。今の時代に読んでも面白い、このような優れた作品が1960年代に日本で刊行されていたことにも驚かされた。

    頭脳明晰で将来を期待されていた紅真吾は父親の事業の失敗により中国に渡る。父親と共に上海に小さな商社を立ち上げたが、父親の死後に事業は傾き、倒産。破産した真吾はある日偶然知り合った大手商社の支店長・沢井和彦から揚子江を船で遡り、重慶で豚毛を買い集めるという儲け話に誘われる。真吾は素性の知れない8人の猛者たちと重慶を目指すが……

    本体価格840円
    ★★★★★

  • ハードボイルドの礎を築いた生島治郎さんによる純粋な冒険小説。中国での商いに失敗し夢破れた主人公の紅真吾。破産した彼に大手商社の男から儲け話を持ち込まれる。ただそれはとてつもない危険の伴う話だった。いわくつきな男たちが金に向かって突き進むのはまさに王道そのものだが、特によいのは主人公コンビの明暗さだろう。真吾は情に厚く捨てきれない部分を沢山持っている。対して相方になる葉村は自分以外、誰も信用していない男。この2人が反目し合いながらも進むのはやはり楽しい。前半は硬派な展開ながら後半はさながらコンゲームの様相を呈していく。この対比やラストのある意味爽快な結末も「らしく」ていい。

  • 再読です。
    大傑作ですね。

    エンターテインメントとして一級品ですし、困難とその解決の道のりがテンポよく進み、読者を飽きさせません。

  • 個人的には生島氏はハードボイルドというより冒険小説の書き手で、学生時代にイネスやマクリーンがお気に入りだった頃に、よく読んだ記憶がある。今回久しぶりに氏の冒険小説を読んでみて、「血湧き、肉躍る」感じはあるなあと思いつつも、一番気になったのは主人公の子供っぽさ。ハードボイルドな男たちが、ここだけは譲れないと我を張るのではなくて、甘やかされた子供が拗ねるような感じで、突っ張る。昨今のタフガイ小説の主人公たちの多くが「大人の男」であることを競い、薄汚くて妥協的であることをむしろ誇ることを思うと、色んなことを考えてしまうね。

  • 面白い!

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著者プロフィール

生島治郎

一九三三(昭和八)年中国・上海生まれ。本名・小泉太郎。早稲田大学第一文学部卒業。五六年早川書房に入社。都筑道夫の後を受け『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン(EQMM)』の編集長を務めるが、小説執筆のために退社。六四年『傷痕の街』でデビュー、六七年『追いつめる』で第五七回直木賞を受賞。八九年から九三年まで日本推理作家協会の理事長を務めた。二〇〇三(平成一五)年死去。そのほかの作品に『黄土の奔流』『夢なきものの掟』『片翼だけの天使』などがある。

「2020年 『星になれるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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