心の闇に魔物は棲むか: 異常犯罪の解剖学 (知恵の森文庫 t か 4-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334785284

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  • 「心の病」はどこまで危険なのか?
    常識では考えられない異常な犯罪が後を絶たない。そのたびにメディアで取り上げられ、識者や専門家が訳知り顔で容疑者の心理を分析してみせる。しかしそれらは信用に足るものなのか? そして精神医学は、こうした事件とどうかかわり、どのような解釈を示すべきなのか。気鋭の精神科医が、「心の闇」から「魔物」が這い出す様々な要因を分析する。(表紙裏)

    うーん、「想像力の欠如」かぁ…。

  • 人は理由をもとめ、物語を得ることで気持ちを安定させるという。それがかなわぬ場合は、
    紋切り型の分類を持ち出すことによって無理やり現実をを当てはめようと考えると筆者はいう。
    怨恨、色恋、物欲、名誉欲、こういった犯罪動機の定番は、人間の理性の歯止めがはずれがち
    な領域であり、かなり逸脱した行為であってもそれにどれだけ狂気が介在したのかは
    そう簡単に決められない、といっています。
    そういう立場だからこそ、安易にTVでプロファイリングする有識者を批判するのでしょう。
    科学者として、自分の方法論の限界をわきまえた議論をするのは好感がもてます。
    口はわるいですが。

    私的には、精神医学者に対して自分が過剰な期待感をもちすぎていたことがわかってよかったです。
    医者って因果関連でものごとを説明できる、って考えていたのですが、精神医学者はそうでは
    なくて了解関連、という手法で理解しているのがわかったのが収穫ですね

    因果関連:事象を、さまざまな事物の相互関連として把握すること
    了解関連:事象を、心を直感的かつ実感に即して把握すること


    いかに異様に映っても、それを行った人物の心について正気と狂気の区別がつけ難い行為が存在することを、
    われわれは知っておくべきだと筆者は言っています。常軌を逸している、というだけでは
    精神を病んでいるのかどうかの判断はつかないそうです。
    題名の問いに関しては、「心の闇に魔物は棲むが、それが現実世界に這い出してくるには、
    心から想像力が取り除かれた状態でかついくつか外的条件がそろったときだ」との答えが示されています。

    2009/10/31

  • 1996年刊行の単行本に加筆修正されたもの。
    専門用語の表記法や、
    俎上に載せられた関係者の仮名が主に変更されている模様。
    一般人に理解できないと言われる残酷で猟奇的な犯罪は
    後を絶たないけれど、それらは本当に了解不可能なのか?
    誰だって一つや二つ、
    頭の中で無残な妄想を飼育しているもんじゃないのか?
    ただ、それを飼い殺しにするのが普通の人であり、
    何らかの理由で歯止めが利かなくなって檻を開け、
    その魔物を外へ放ってしまったのが残酷な殺人者――
    ということではないかいな、と。
    で、箍が外れるきっかけを作ったのが
    心の病であるケースも多々……
    そこんとこどうしたらいいもんかね、といったお話です。
    ただ、非常に不謹慎な言い方ですが、
    単に「事件カタログ」として眺めるだけでも充分面白い一冊。

  • 春日センセイ特有のちょっととぼけた感じというか、ゆるいやさしさがあんまり感じられなかったのが残念。まあ、この内容でとぼけるのもどうかとは思うけど。

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著者プロフィール

1951年生まれ。産婦人科医を経て精神科医に。現在も臨床に携わりながら執筆活動を続ける。

「2021年 『鬱屈精神科医、怪物人間とひきこもる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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