- Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334790998
感想・レビュー・書評
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「星新一ショートショート・コンテスト」でデビューし、以後も活躍を続ける作家・井上雅彦監修による、全編書き下ろしのテーマ・ホラーアンソロジーのシリーズ。それが「異形コレクション」。1998年にスタートして以来、2011年の48巻(!)までそのすべてを氏が企画・監修し、総勢200人以上の作家が参加した伝説的なシリーズながら、震災の影響を受け、その後は長く企画を見送られていました。
しかし昨年、9年ぶりに満を持してのシリーズ再開が発表され、49巻目となる『ダーク・ロマンス 異形コレクションXLIX』は、大きな反響とともに迎えられました。
ホラーアンソロジーを謳うものの、その収録作は幻想ファンタジーにSF、伝奇にミステリと常にバラエティ豊か。モードファッション界でトレンドだった「ダーク・ロマンティック」に着想を得たという今回のテーマ――『ダーク・ロマンス』への豪華な執筆陣によるアンサーもまた、いずれ劣らぬ粒ぞろいの作品群です。
ヴィクトリア朝時代イギリス。芸術家の卵たちが暮らす屋敷にやってきた、肖像画を描いて欲しいという黒い面紗(ヴェール)で顔を隠した貴婦人を巡る不穏な昔話(「黒い面紗の」篠田真由美)。“ホラー映画の現場で怪現象が起こる”ホラー映画を撮影する現場。相次ぐトラブルやスタッフの降板により製作は遅れに遅れ、「呪われている」と噂される映画の参加オファーを受けた編集マンは、映像に不可解な影が映り込んでいることに気づく(「禍 または2010年代の恐怖映画」澤村伊智)。草原の民である部族に生まれた少年は、毒草を飲まされ倒れているところを美しく艶やかな謎の青年・ゲンギケイに助けられた。東の国から逃げ延びてきたというゲンギケイは乗馬や狩り、話術にも長け、以来部族に溶け込んでいたが……(「兇帝戦始」伴名錬)。小さく貧しい港町で、異形生物の化石掘りとその加工で生活する紗奈。街の外の世界と学問への憧れを抱く少女は、浜辺で出逢った見知らぬ女性に「あなたのような子を探していたの」と告げられる(「化石屋少女と夜の影」上田早夕里)。
他、菊地秀行や平山夢明に真藤順丈と、ベテランから新鋭まで贅沢な顔ぶれが並ぶ、目眩がするほど絢爛たる、まさに“異形”のショーケース。
昨年は記念すべき50巻となる『蠱惑の本』が、そしてこの6月には早くも51巻『秘密』も刊行されるとのことで、スタイリッシュにリニューアルされた装幀とともに、今後がさらに楽しみなシリーズ。震えて待ちたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ホラー。短編集。
タイトルから恋愛ものを予想していたが、意外とそうでもない。
"ロマンス"には"物語"や"小説"の意味もあるようでした。
苦手な作品もいくつかあったが、好きな作品がメチャクチャに好きで、十分に満足できる内容。
大好きなシリーズなので、復刊はとても嬉しい。
以下、好きな作品。
櫛木理宇「夕鶴の郷」
"異形"と"ロマンス"と"恐怖"。タイトル的に想像していた内容はまさにこれ。
牧野修「馬鹿な奴から死んでいく」
魔術、魔女、アクション。ダークファンタジー的な作品。パンクな雰囲気が心地良い。長編でも読みたい世界観。
図子慧「ぼくの大事な黒いねこ」
バイオSF猫ミステリ。世界観が素晴らしい。結末の意外性も良い。
平山夢明「いつか聴こえなくなる唄」
理不尽SF。本書での個人的ベスト。著者の短編でも「独白するユニバーサル横メルカトル」より好き。
上田早夕里「化石屋少女と夜の影」
考古学SF。妙にノスタルジック。ベタな展開ながら、とても良い物語でした。 -
十五人の作家による短編集。
「異形コレクション」の復刊とのことで、奇妙な味、あるいはホラー、ファンタジーが揃っている。
「夕鶴の里」は、かの「鶴の恩返し」「鶴女房」、舞台「夕鶴」を下地にした、恐怖の物語である。
知らない土地で助けられ、うつらうつら……。
夢現の中見たものに叫びが止まらない。
山に潜む異形のもの。
いったいなんなのか。
閉鎖的な、しかし開かれた村に潜む恐ろしい物をえがいている。
「ルボワットの匣」は人を死に至らしめる、決して開けてはならぬ箱のことである。
一家に代々語り継がれる人殺しの箱。
しかしその箱を開いた時の旋律はなんとも甘美な調べだという。
その箱が災いを成す理由、その箱に魅入られたものがどうなるか。
聞こえないはずの美しい音色が聞こえてくるような物語である。
「禍 または2010年代の恐怖映画」は、いかにも現代的な物語。
低予算で作り上げる映画、しかし呪いがかかったかのように怪しい出来事が続く。
どこまでが映画で、どこまでが現実なのか。
本文中のSNSに記載されるハッシュタグも穏やかでない。
「ストライガ」は、エロスが招くなにかにぞわりとする。
愛は手に入れたら満足か?
愛するものがどんな姿になっても愛せるか?
愛は無限か?
愛とは何かを問いかける少女の微笑みは、危険なものだと私の体が信号を発する。
ファムファタル、そんな言葉では収まらないほどの妖しい愛の形は、まさに、異形。 -
1998年から続く、作家井上雅彦が監修するホラーアンソロジーシリーズ49冊目。
2011年の休刊から9年を経て復活。
復刊で初めて知ったシリーズ。復刊から矢継ぎ早に出ているようで(既に7冊!)、装丁が好みだし読んでみようかな~
「ロマンス」の定義がよくわからなくなる感じだったけど、恋愛色の強い話は少なめ。(恋愛以外に空想的な物語って意味もあるらしい。物語なら広義すぎて何でもありじゃない?って気もするが。)
櫛木理宇「夕鶴の郷」、上田早夕里「化石屋少女と夜の影」が好き。 -
ストライガ、ヤバい、人の感情って最早恐怖ですね
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遂に復活。じっくり焦らず読んで行こうと思う。
でも、異形コレクションで小林泰三さんの作品が読めないのが悲しい。 -
最近、SFアンソロジーを読む機会が増えたが、いくつかの作品解説の中に出てくるのが、この「異形コレクション」だった。異形って何だろうと思うよりも、この異形シリーズをどうやってゲットできるかから始まった。近所のどの書店でも扱っていない。新宿に行く機会があったので大手書店に行ったら、なんと最新作5冊がまとめてゴロっと置いてあったので大人買いした。待てよ?Amazonで楽に買えたかな。何でも今回読んだ49巻は2011年の震災で休刊して以来9年ぶりの復刊とのこと。
ホラー作家を中心としたアンソロジーのため、SF作品はそれほど多くはない。当初、ホラーアンソロジーに何故SFが含まれるのか疑問だったが、よく考えたらSFのショート・ショートの中にも内容によってはホラー作品と同じく背筋が凍るようなオチで終わるのもある。今回、SF作家は上田早夕里、伴名練、牧野修の3名。上田早夕里の作品はいつも通り素晴らしいストーリー展開であるのに対し、伴名練の作品はいつも通りダメダメ。
毎回一定のテーマでアンソロジーが編まれるようで、今回は「ダーク・ロマンス」。恋愛に関するテーマであることは間違いない様だが、序文を読んだ限りはこの「ダーク」のイメージがピンとこない。今回の本では何が「ダーク」なのかを探す旅になりそうだ。
さて、いつもどおり作品の感想を簡略に述べる。
〇 櫛木理宇「夕鶴の郷」
典型的な「砂の女」ストーリー。性描写がちょっと生々しい。ホラー作品ではこういうのが多いのかな、SFでは少ない。
〇 黒木あるじ「ルボワットの匣」
各所にちりばめられているクラッシックの名曲で、登場人物がピアノトリオ。そのためか私にとっては非常に読みやすかった。そして、不倫につきロマンスとホラーが同居しているので、「ダーク・ロマンス」の模範解答とも言える。
〇 篠田真由美「黒い面紗の」
わからない。
〇 澤村伊智「禍 または2010年代の恐怖映画」
呪われた映画作成現場というのはよくある話なのに。
〇 牧野修「馬鹿な奴から死んでいく」
ベストSF2021にて既読。
〇 伴名練「兇帝戦始」
伴名練の作品はどの作品もダメだね。
〇 図子慧「ぼくの大事な黒いねこ」
そうなの。
〇 坊木椎哉「ストライガ」
百合の極み。愛が無くなると怖いな。でも幸せなんでしょう?
〇 荒居蘭「花のかんばせ」
言葉使い悪いね。
〇 真藤順丈「愛にまつわる三つの掌篇」
パス。
〇 平山夢明「いつか聴こえなくなる唄」
パス。
〇 上田早夕里「化石屋少女と夜の影」
本書の中で一番感動した。ハラハラドキドキ。化石って地味だけど、地球の歴史にも関係してくる。まさにSFの世界での活劇。アニメ、映画化しないかな。
〇 加門七海「無名指の名前」
パス。
〇 菊地秀行「魅惑の民」
ナチスっぽい感じだけど、戦争の悲惨さを短編小説で描くのは限界がある。実際の戦争はリアル地獄。戦争の恐怖、恐怖の描写は、文字にするのはとても難しい。その戦争に直接かかわった人が小説家であっても、心理描写を正確に書き留めるのは難しいだろう。ましてや、加害者が小説家だったら・・・
〇 井上雅彦「再会」
伴名練も同じだけど、編者は小説を書かない方がいいな。サポートに徹して、色気を変に出して俺も小説書けるんだよ感を出さない方が好感が持てる。
さて、残り4冊を続けて読もうか迷っている。SF作家だけつまみ食いしようか?それだと折角買ったのにもったいないな。ちょっと時間をおいて新鮮な気持ちになったらまたこの異形の本を手に取るだろう。 -
恥ずかしながら、異形コレクションが復活していることを、最近知った。編集序文を読むにつれ湧き上がる胸の高鳴り。開始12pを読んだだけで星5。
‥‥感謝。