菊花ひらく 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(十) (光文社文庫 な 43-11)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334794286

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  • 読み終って心がほんわかとしてきます。

    3年前に鎌倉のはずれの村からやってきて、お江戸日本橋の菓子屋・二十一屋で働く小萩は、つきたてのお餅のようなふっくらとした頬に黒い瞳、小さな丸い鼻。美人ではないが愛らしい顔立ちの娘だ。此度、好きな職人の伊佐と祝言を挙げ。いままでよりも菓子への取り組みが違ってくる。

    【異国の風にときめく甘さ】
    阿蘭陀風の菓子の注文に応じる二十一屋の若旦那・幹太と小萩。イチジクを入れてカステラのように焼いた甘い菓子を作り上げる。

    【帰らぬ人と月見菓子】
    お恒は、許嫁をに死なれて三年。祝言を前にして想いを断ち切るために月見菓子を注文してきた。小萩は、想いを断ち切らなくても……想いを残したままでいいのではと。時が解決してくれるとお恒に話す。

    【重陽の節句に菊の香を】
    若いころに二代目を継いだ紅屋藤兵衛は、当時、借金だらけの紅屋を菊の鉢植えに例えて「花は自分の鉢から逃れられない。この中で精一杯生きる」と師匠から聞いて、己もこの紅屋から逃げない覚悟を決めた。

    【火の用心と亥の子餅】
    幹太は、芸者の千波を好きになり夜帰ってこなくなる。二十一屋の仕事はきちんとこなしていく。そんな時、日本橋で火事があった、その火事のなか千波が歳を取った老人に抱かれて出て来るのを小萩は見る。小萩は、あぁぁ、千波は爪の先まで芸者なんだ。夢を売る商売なんだと……。

    【読後】
    テンポがよく、美味しそうで、食べたくて、唾が出てきます。早く読むのがもったいない……。此度は、美味しいお菓子に幹太の恋がいろどりを添えています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    菊花ひらく ー 日本橋牡丹堂菓子ばなしシリーズ10作目《文庫本》
    2022.09発行。字の大きさは…中。2023.06.03~05読了。★★★★☆
    異国の風にときめく甘さ、帰らぬ人と月見菓子、重陽の節句に菊の香を、火の用心と亥の子餅、の短編4話。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    《日本橋牡丹堂菓子ばなしシリーズ一覧》
    10.菊花ひらく     2023.06.05読了
    09.あたらしい朝    2022.08.05読了
    08.あしたの星     2021.10.22読了
    07.かなたの雲     2021.04.08読了
    06.はじまりの空    2020.09.08読了
    05.それぞれの陽だまり 2020.03.13読了
    04.ひかる風      2019.07.23読了
    ※1作目~3作目までは、ブクロク登録前のため登録していません。

  • 小萩庵に依頼する人々の心に内在する想いを受け、
    相応しい菓子を考案する小萩の、成長する姿を描く。
    異国の風にときめく甘さ・・・阿蘭陀好みの材木商からの依頼。
      遥かなる異国に想いを馳せ、皆で工夫して菓子を作る。
      異国の如く、俺たち菓子の世界は広くて楽しいんだよ。
    帰らぬ人と月見菓子・・・月見菓子を注文した女性の想い。
      十五夜の明るい満月は彼女の心に相応しいのか?
      亡き許嫁との思い出は、何時か月の流れと共に変わる。
    重陽の節句に菊の香を・・・菊を愛でる宴の客への土産菓子。
      それは商いでの苦難を乗り越えさせてくれた一鉢の菊と、
      与えてくれた相手への感謝に。花はなくともそこにある。
    火の用心と亥の子餅・・・炭屋の主からの玄猪の菓子に悩む小萩。
      しかも幹太が恋?更に火事が!炭屋の人々と水桶を
      運んだ小萩が見た人物とは。爪の先まで深川の女なのだ。

    新刊が出て読もうとしたら、なんと既刊2冊の未読に気づく
    痛恨のミス。慌てて読んだのが、この第十弾です。
    伊佐と夫婦になり、長屋暮らしにも馴染んできた小萩。
    小萩庵には様々な菓子の依頼が来るようになりました。
    季節は秋。物語を彩るのは風物と菓子の姿。
    小萩が持ち込む難題を創意工夫して作り上げる店の面々の姿。
    恋はすれども居る世界の違いを知り、成長する幹太の姿。
    さり気ない心遣いが温かい須美の姿。
    養う子どもたちへの考えを吐露する勝代の姿も。
    そして様々な客たちの想いを語る姿。
    火事の話はハラハラドキドキしたけど、終わりは安穏に。
    でも、勝代が暗躍する曙のれん会の今後が、心配です。

  • 2022年9月光文社時代小説文庫刊。書き下ろし。シリーズ10作目。異国の風にときめく甘さ、帰らぬ人と月見菓子、重陽の節句に菊の香を、火の用心と亥の子餅、の4つの連作短編。はじまりの2話がどうもおもしろくなくて、中だるみかなとおもったものの、3、4話めの商売仇の勝代や、芸者の千波、火事の話が興味深くて良かった。どう続けてくれるのかが楽しみです。

  • 安定のあたたかさ
    人それぞれに 幸せの形がある

  • 小萩の成長が感じられる。

  • 異国の風にときめく甘さ/帰らぬ人と月見菓子/
    重陽の節句に菊の香を/火の用心と亥の子餅

    おいしいお菓子をごちそうさまでした
    人と人のつながりを暖かく思える牡丹堂界隈が大好きです

  • 炭屋さんのお話が良かったです。
    ただ、幹太さんとお結ちゃんはどうなるのかな…

  • このシリーズは当分いいかな……。
    いったん読むのをお休みしよう。

  • 時代物ってあまり読まないけど、この著者の作品は読みやすくて好き。

    読み始めたきっかけは和菓子が好きだったから。
    他の作品も読んでるし、この牡丹堂ももう10冊目。
    さらっと読めるけど、なにか心に刺さるときがあって。
    今回タイトルにもなっている菊花ひらくの話の最後、
    真面目に努力した人間が報われて、嘘ついて欺いた人間は引きずり落とされるのが、勝代いいなと思ってしまった。

    昔の日本て、しきたりとか身分とかあって
    そこから実力主義的なところも取り入れるとなると
    難しいなって思ったり。
    未だに慎ましさが美徳だと思ったりする人もいるし、
    相当の対価を貰うのが当たり前だと思う人もいる。
    頑張っても報われない人はどうなるんだろう、みたいな小萩の思いもわかる。
    でもお給金貰うには結果出さないといけないこともある。
    現代の自分と重ねて考えたり出来る時間もいいなと思った。

  • 今回も難題でしたな

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