オムニバス (光文社文庫 ほ 4-20)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334795511

感想・レビュー・書評

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  • 誉田哲也『オムニバス』光文社文庫。

    7編収録の姫川玲子シリーズの短編集。

    姫川玲子の推理と取り調べを間近で見る部下の中松、日野、小幡らの視点を交えて描かれる異色の短編集。

    珍しく過激な事件は描かれず、そういう点では少し物足りなさを感じる。反面、姫川玲子の何時もと違う一面が垣間見えるのが面白い。


    『それが嫌なら無人島』。タイトルの意味は様々な解釈が出来そうだ。一番悪い奴は誰なのか。一見、悪そうに見える奴よりも、大人しそうな奴の方が悪だったりするのはよくあること。個人情報が簡単に犯罪に利用されるという怖い時代。葛飾区青戸の女子大生扼殺事件。女子大生の部屋の指紋から浮上した被疑者は、既に別件で本所署に留置されていた。勝俣に呼び出された姫川玲子は、本所署の案件には触るなと強要されるが、その理由については何も語らなかった。★★★★

    『六法全書』。姫川玲子の類稀なる推理力の一端が描かれる。そんな姫川の行動に感心しつつ、なかなか納得出来ないでいる部下の中松だったが……自殺した男の家の床下から身元不明の女性の腐乱死体が発見される。自殺した男の不可解な行動の謎を解き明かす姫川玲子。★★★★★

    『正しいストーカー殺人』。またも姫川玲子の推理力が光る。最近よく耳にするストーカー犯罪。ゲームやアニメばかりやって、リアルな世界で異性との付き合い方を知らない奴等が増えているのか。マンションの非常階段から男性が転落死した事件。現場に残されたDNAから第三者の関与が疑われた。さらに現場から採取した足痕から、ある女性の存在が浮上する。女性は転落死した男性からストーキングの被害を受けていたと主張するが。★★★★

    『赤い靴』。姫川玲子のまた違う一面が垣間見える。首を締められ、腹部に刃物で刺したような男性の死体。同居する女性のケイコが自首して来たが、何も語らなかった。ケイコの取り調べを行うことになった姫川玲子と日野利美。★★★

    『青い腕』。『赤い靴』の続き。姫川玲子は過去の事件を掘り起こす。『赤い靴』で珍しく外れたと思われた姫川の勘は……ケイコはなかなか全てを語ろうとせず、未だに素性が判らなかった。姫川玲子と日野利美は死亡した男性の母親と面会するために静岡に向う。★★★★

    『根腐れ』。何故か姫川玲子が、覚醒剤所持で逮捕された美人女優の取り調べを行うことになる。その女優がひた隠す真実とは。佐藤青南の描く楯岡絵麻のような姫川玲子の取り調べに注目。★★★★★

    『それって読心術?』。珍しく事件は起こらず、洒落たバーで姫川玲子が検事の武見とデートするという話。姫川にも束の間の幸せな時間があっても良いのだ。★★★★

    本体価格800円
    ★★★★

  • 姫川班の日常って感じやな。
    それをそれぞれの視点で語る〜の短編集!
    最後のは、別モンとして。
    そう大きな事件ってのはないのかもしれんけど、前作とかのリンクとかもあり、姫川さんの才能は遺憾無く発揮してる!
    でも、この人のは、真似してできるものではないというのも痛感してしまう。
    捜査方法が理屈やないのよ。これが!
    何かの拍子に「ビッ!ビッ!」ときて分かるみたいな勘というか、感性というか…
    勘というのも、今までの経験の中から脳が勝手に導き出すという話もあるから、経験積まんとアカンのかな?
    半分、犯罪者みたいなとこあって、犯罪者側の心理が分かるんやろな。死神とまで言われてるのも、周りの人が亡くなるだけやなくて、この辺にもネーミングの由来があるのかもしれん…

    流石に人気モンだけあって、事件ない時も臨時で取調べだけの応援とかもある…まぁ、取調べだけでは終わらんのも確かやけど…

    最後の短編集だけは、別モンで、事件は起こらんけど、次への布石?
    公私共…

    武見検事と…

    それと…
    う〜ん!
    「ドルチェ」も読まなあかんか…

    もう準備は完了してるけど!

    新展開も面白そうな予感(^_^)v

  • 姫川玲子シリーズの9冊目(シリーズの内、ひとつ読んでいない)。
    玲子さん視点の4つと姫川班のメンバー中松、日野、小幡の視点での話の計7編の短編集。
    相変わらず筋読みが冴えわたる玲子さんだが、その直観力や行動力に対する部下3人の心の声がなかなか微笑ましい。

    解決した目の前の事件が過去の事件の謎を呼び、現場から押収したパソコンに入っていた大量のテキストデータが2つの話をつなぐ「赤い靴」と「青い腕」が読み応えがあり。
    覚醒剤所持で自首してきた売れっ子女性モデルを木っ端微塵にする「根腐れ」に玲子さんらしさが溢れて一番好き。
    前作の感想に『初めて登場した検事の武見と玲子さんがどういった関係になっていくのか、かなり心配』と書いたが、最後の「それって読唇術?」を読めば、まあ、それなり。話としては、魚住久江巡査部長の姫川班への合流予告のサプライズに持っていかれたみたい。

    「ドルチェ」を読んでなくて、読まねばと思うところが、既に作者に転がされているようで、いささか癪(と思って登録すれば、“この本を読み終わった人は、次にこの本を読んでいます!”の一番に「ドルチェ」が出てきたので、みんな同じかと笑ってしまう)。

  • 忖度なしでストレートな感じがやっぱり読んでて痛快。姫川シリーズ10作目ぐらいでしょうけど過去のことぐしゃぐしゃ言わず、そのまま楽しめます。ユーモアもあります。もう公表されてるマリスアングルでの魚住さんとのコラボ待ちきれないです。

  • 女刑事・姫川玲子シリーズ第十弾。7つの短編を収録したオムニバス。同僚からの視点で描かれた話もあり、楽しませてくれるが、やはり姫川さん推理は鋭いし面白いし最高。

  • 警部補姫川玲子がタフで魅力的。
    無人島:責任感強過ぎて道を踏み外す
    六法全書:同時死亡の推定
    赤い靴・青い腕は連作
    根腐れ:嘘付きのプロを取調。自己犠牲。

  • 姫川シリーズ短編集。
    視点が作品ごとに変わっていくので飽きないし、セリフのキレが良くて、読んでいて気持ちいい。

  • 苺シリーズ文庫最新版♫
    連作短編?


    -------------------読間レビュー----------------

    【それが嫌なら無人島】
    冒頭「これは俺からの厚意だからな」と、姫川を呼び出して現在扱っている被疑者の関連事案には触るなと警告する勝俣。

    きな臭いな。と思いつつ、この一編からはその警告の意図が全く分からず。連作短編を読み進めれば分かるのかしら?
    でも、待てよ。レンタルビデオ店がどうこう、個人情報がどうこうって、、、デジャヴ的に見覚えがあるような?
    前作「ノーマンズランド」で勝俣が扱ってたネタってこと?  記憶が曖昧(苦笑)
    ま、前作を引っ張り出すまでではないからこのまま読み進めようっと。

    【六法全書】
    第二期姫川班のキャラクター掘り下げの回ってか。
    中松さん目線からの姫川描写を通して、姫川の現状、中松の姫川観が浮き上がる。

    数日捜査を共にした間に彼女に心酔した(?)所轄署の女性警官はこの後の物語に絡んでくるのかしら?

    【正しいストーカー殺人】
    短編3編連続で「死亡者が“クズ寄りの人間”」ってのが、読んでいてイマイチスカっとこない(苦笑)

    が、まあ、もともとこのシリーズは(何作目からだったか…ブルーマーダーくらいか?)途中から、ミステリとしての面白さよりも「姫川玲子の物語を追うこと」を重視した読み方になってるから、何も問題は無し。
    最後に井岡くんが出てきてニンマリ♫

  • ひさしぶりの姫川玲子シリーズ。

    短編なので、事件も軽め。
    『ジウ・サーガ』から来ると、やっぱり軽め。

    中松、日野、小幡の視線から描く、姫川もちょっと軽め。

    ただ姫川の刑事としての勘、洞察力はさすが。

    最後には『ジウ・サーガ』、『ハング』とのコラボが、思わずジロウ、と。まだジロウじゃなかったか…

    東京地検・武見との関係はどうなっていくのだろう。

    さらに、次作からは魚住久江が姫川班に加わるのか⁉︎
    どんなことになるんだろう。
    どんな化学反応が起こるのか⁇

    ということは、『ドルチェ』、『ドンナ ビアンカ』も読まないと…
    姫川も読むんだろうな、魚住久江を知るために。

    完全に誉田哲也に嵌められている。

  • やっぱり、安定の面白さだ。

    本書は短編が7編収録されている、その名の通りオムニバスな作品。視点人物も、玲子だったり、11係のほかの面々だったりと様々だ。
    前作『ノーマンズランド』の続きである「それが嫌なら無人島」をはじめ、もちろんどれも面白かった。

    長編でドーンと一件の事件を描くよりも、こまごまと所轄署の応援に行ったりする話が多いためか、視点人物の独白がコミカルだったり、そもそも事件の捜査ではなく、人間関係の織りなす布のようなものをメインに据えていたりと、カラーもさまざま。
    そしてサラッと次への布石も描かれていて、声を出して驚いてしまった。
    嬉しい悲鳴には違いないが、また復習しておかなければならないこともあり、いっそのこと姫川玲子シリーズも読み返したくなってしまい、収拾がつかなくなりそうだ。(笑)

    個人的な余談。
    改めて気づいたのは、私自身が玲子の年齢に追いついてしまったということ。『ストロベリーナイト』から誉田哲也ワールドに足を踏み入れた時、たしか高校生くらいだったような、、と思うと非常に感慨深い。

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著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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