狐と韃 知らぬ火文庫

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911805

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ高樹のぶ子さんの「明日香さんの霊異記」で興味を持った「日本霊異記」。朱川さんが「日本霊異記」をアレンジしたこの作品をたまたま知り、早速読んでみた。

    助けた渡来人女に惹かれその身を手に入れたものの女の心は母国へ向かったままの「サカズキという女」
    弟を言い争いの末殺してしまった男の罰されたいという願いは叶うのか「髑髏語り」
    父のせいで追い詰められ死んだ母にそっくりな人と出会った娘が知った真実「射干玉国」
    夜中まで霊異記編纂中の景戒の部屋にやって来た四人の霊が語る彼らの物語「夜半の客」
    など八編。

    「明日香さんの霊異記」で語られていた通り、きちんとした結末があるわけではないので寓話的。
    説法集ということだが、この朱川版「霊異記」は因果応報や勧善懲悪あるいは仏罰というハッキリした構図がないものもある。
    掴み所がないような、でも一方で生々しい話もあって、やはり寓話的。

    そんな中で「射干玉国」は巧妙な完全犯罪が明るみになる話だし、「塵芥にあらず」は庶民が富裕層に噛みつく話だが読後感が良かった。
    また話同士でリンクしているものもあり、語られない結末と後の話を繋ぐ物語を自分なりに想像するのも面白い。
    「夜半の客」で景戒が気付くように、違和感や語られない部分があるからこそ人はその裏にあるものを知りたくなり想像したくもなる。
    違和感こそ物語の肝かも知れない。

  •  あの『日本霊異記』を肉付けしてアレンジした物語集。あれだけ短い文章をよくもここまで膨らませ脚色したものだと感心してしまった。
    また、今より間違いなく道楽がなかったであろう当時の人々は、この短く簡素で怪異な物語をこのように自分なりに想像し、脚色しながら読んだのだろうかと思いを馳せた。

    さて、この『狐と鞭』は、『日本霊異記』の中から8編を抜き出したもの。それを朱川湊人がアレンジするとこうなる。全てが怪異で因果応報にまつわる話。どの話も興味深かったが、『塵芥にあらず』が特に良かったかな。
    阿久多と磐嶋のやりとりの中で、阿久多が自分の名前が「塵芥(ゴミ)」からきていると知り、それに不平を言うのだが、それを普段はいい加減な磐嶋が真剣に諌めるシーンが何とも言えない。また、磐嶋のおかげで生き永らえた商人が90まで生きたのも良かった。

    『日本霊異記』と比較しながら読むのも面白いし、これをきっかけに『日本霊異記』を読んでみるのもいいかもしれない。

  • たしかに朱川せんせいの新境地。とてもおもしろいし、味わい深い短編集です。部分的に連作になっているようです。白朱川か黒朱川かに分けるのもおかしいのですが、その中間のような気がします。いろんな人におすすめしたい。朱川作品ますます好きになりました。これシリーズになるのかしら?

  • 豪族の跡継ぎ・真桑が林で出会ったのは、異形な美しさを持つ女。真桑は女を納屋に匿い世話を焼くうち、次第に愛情を感じるようになる。ある夜、強引に女を抱いた真桑。幸福感に浸っていたが、翌日から女はまったく笑わなくなる。(サカズキという女) 細々と商いをしていた、腕の良い細工職人の広足。弟・浄足が、自分の細工で詐欺を働いていたと知り、言い争いののち、思いがけず殺めてしまう。誰にも見られていないはずだったがーー。(髑髏語り) 妻の初産を待ちわびていた広公。しかし産屋で産婆から手渡されたのは、蹴鞠のような肉の玉だった。広公は複雑な思いを抱いたまま、山の奥に肉玉を捨てに行くがーー。(舎利菩薩) 日本最古の説話集『日本霊異記』を、大胆かつ奔放に潤色! 直木賞作家・朱川湊人の新しい扉が開く!

  • ちょっと不気味な大人の日本昔ばなし?!
    妖怪のような物の怪のような不思議世界が展開します。漢字が読み辛かったり、言い回しが昔言葉なので、普段なら途中で挫折してましたが、話が面白いので最後まで楽しく読めました。
    朱川湊人作品今後も読んでみよう(^^♪

  • 先に「鬼棲むところ」を
    読ませてもらって
    しきりに感嘆させてもらい
    朱川さんの「知らぬ火文庫」シリーズを
    知りました

    さっそく、
    シリーズ一冊目の本書に
    手を出したのですが
    一冊目は
    「日本霊異記」を朱川湊人流に
    潤色した作品群に…

    これが また面白い
    この世ならぬ者たちと
    この世の者たちとの
    せめぎ具合、交わり具合が
    なんとも胸に迫ってきます

    次なる
    「知らぬ火文庫」第三弾が
    楽しみ 楽しみ

  • 平安初期に書かれた日本最古の仏教説話集『日本霊異記』を元に、
    妖しく不思議な物語を現代風にした8つの連作短篇集。
    日本霊異記』を知らないので何とも言えないのだが・・・
    朱川作品は3冊しか読んでいないのだけど、なんか雰囲気が
    昭和ノスタルジーものではなかったので微妙です。

    「夜半の客」「塵芥にあらず」「舎利菩薩」が好きです。

  • 「小説宝石」2016年度初出の8編、日本霊異記を膨らまして膨らまして…とっても楽しくなってる。
    「夜半の客」で日本霊異記編者景戒と長屋王の会話が楽しい。そこあたりから朱川さんがシュカワに変容していくのを感じた。やっぱシュカワさんのおかしみテイストもいいなあ。
    当時の人の命の軽さを思うと令和はまだましになったのかもしれないが、基本的なことは何ら変わってないな…という視点に激しく同感。

  • 面白かった。
    鞭とは?と思ったらフェティッシュな話もあり、色んなテイストが楽しめた。

  • 日本霊異記をモチーフにした連作。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱川湊人の作品

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