- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334915155
感想・レビュー・書評
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行き場のない母子を保護する目的で作られた「のばらのいえ」それは、大学のボランティアで知り合った志道と実奈子が運営する慈善施設なのですが、崇高な理想が現実の荒波に削られ少しずつ破綻していく。やがて実奈子は酒浸りの生活に堕ち、志道は見て見ぬふり。
祐希が実質、家事全般を担当し母子たちの世話をする。幼いころに引取られた祐希はそれが当たり前の日常と思い、疑問を隠しつつ成長していく。もう一人の少女の紘果は志道に溺愛されて人形のように扱われる。
ヤングケアラー&性的グルーミングのコンボで、ホラーハウスのようなキモさを感じてしまいました。
弱者を無抵抗にさせるエぐさに思考停止してしまう悪環境。真綿で首を絞められるような薄気味悪さです。学力のある祐希は能力に応じた進学先に行かさせもらえず紘果と同じ高校に通うようにと強制されたり、
自主性のない紘果に気を使いながらサポートする祐希。
高校卒業と同時に一緒に逃げようとしたのに諦めてしまった紘果。
10年後再び祐希は紘果のいる「のばらのいえ」で再会する。
コンプレックスの玉手箱のような結希と人形のような紘果。この二人は一緒にいてもどちらのためにもならない先細りの未来しか想像できませんでした。どろどろした現状から抜け出した先でも再び沼に堕ちそうな因果を感じさせられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
事情があって行き場をなくした親子の生活支援を行い、住まいをも提供する「のばらのいえ」…そこには経営者夫婦の他に、親と生活できない祐希、保、紘果の3人も一緒に暮らしていた。祐希は「のばらのいえ」で家事全般と、日常的に目が離せない保の世話も強いられていた。紘果は生活能力が低く、なんでも手を貸さないとできない子でもあった…。祐希は高校卒業と同時に紘果とともに「のばらのいえ」から逃げ出そうとしたが、結果的に祐希のみで逃げ出すことになった…。それから10年の月日を経て、見えてきた真実とは…。
子供は大人に守られて生きるべき…本当にそうあるべきだと思いました。「のばらのいえ」で過ごした子供たち…本来であれば大人に守られ支援を受けつつ、夢を叶えるために努力する大事な時期を、「のばらのいえ」で過ごしたが故にないがしろにされてしまったやり場のない思い…ひしひしと感じ、心が痛くなってしまいました。寺地はるなさんは、社会的に弱い立場の登場人物を描くことに長けていると私的には感じるところがあり、自然に感情移入させられるところがスゴイですよね…。エンディングに救われた思いがしました。 -
「のばらのいえ」と呼ばれる、助けを求める母子が身を寄せることのできる施設は、おそらく無関心な近隣住民ばかりの中で、少しずつ破綻していったのだろう。
両親、祖父母を失った祐希は、まだ若かった親戚の実奈子とその夫の志道の元に引き取られる。
祐希を引き取ってから、二人は母子シェルターのような施設を運営し始めた。
ある時、ネグレクトされた紘果と保という兄妹が引き取られ、祐希の人生も大きく動き出す。
理想とは裏腹に闇のある実奈子と志道の関係、そして「のばらのいえ」の実態。
聡い祐希は早くから自分への差別的扱いと、その不穏さに気づき、高校卒業直前に信頼する教師の助けをかりて「のばらのいえ」を逃げ出す。
紘果も共に逃げる約束だったが、土壇場で志道の元から離れられない、と言い出す。
しかしそれは、祐希を守るための紘果の精一杯の行動だったのだ…。
二人の少女の心の絆と、大人の世界から見捨てられた境遇が読む者の胸に迫る。
寺地はるなさんだけど、ちょっと町田そのこさんみたいな小説だった。
最近、2人の少女の成長を描く小説が多い気がする。流行りなのかな?
一番印象に残っているのは、柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』。どれを読んでもどうしてもそれと比べてしまう。
2023.3 -
寺地作品としては、14作目です。ただ…前作も感じたのですが知らない著者の小説を読んでいる様でした。冒頭から鬱な違和感が漂いはじめてて、ページをめくるごとに心に針で刺されている様で辛かった。
今作を描けるのは懐が深いからかもしれませんが、もし初めにこの作品を読んでしまったら寺地はるなさんの著書は二度と手に取らなかったかもしれません。 -
「復讐は復讐で、幸せは幸せ。…ならば痛みは痛みだ。幸せとはまったく別のもの。痛みを抱えたまま幸せを手に入れることも可能なはずだ。」
実奈子さんと志道さんが運営する、恵まれない母子を保護する「のばらのいえ」。
そこに祐希は引き取られ、ついで紘果と保兄妹が引き取られた。
運営している、といえど、のばらのいえの家事や利用者の世話をするのはほとんど祐希の仕事だった。そのことに何の疑問も持たなかった。
保は放っておかれ、紘果は何もできない子と言われ続け、志道の手の中に閉じ込められて育った。
まるでグリム童話に登場する「白ゆき紅ばら」のような祐希と紘果。
のばらのいえから祐希が逃げ出してから10年、住まいに焼け出された祐希が再び志道に連れられのばらのいえに帰ってきたところで、物語の歯車は回り始める。明かされはじめる。
これは、囚われたものたちが、一歩を踏み出すまでの物語だ。がんじがらめにされた鎖を断ち切って、その一歩を踏み出すまで、険しくて苦しくて難しくて。
でも、わたしたちはどこへでも行ける。
孤独だと思っていたわたしたちに手を差し伸べてくれた人たちの数珠なりの道を辿って、どこへでも行ける。
そんな物語でした。
言葉にするのは難しいけれど、なんだか胸に静かにしまっておきたい物語でした。 -
行き場のない母子を守る「のばらのいえ」を立ち上げ運営する実奈子と志道。
そこで育った祐希と紘果の物語。
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もう発売されましたが、発売前にNetGalleyさんで読ませていただきました✩︎⡱
久しぶりの寺地さんだったけど、この作品は読んでてめっちゃしんどかったな〜(>_<)
ここでは母子を守る施設の話だったけど、老人施設だったり養護施設だったり、、実際にも似たような事って結構あるような気がして気分悪くなってしまった。
力のある者が、弱い立場の人を支配してしまう。
大人と子どもの間では特にそういう事ってありがちで、自分の力で生きるすべを持たない子どもはもう従うしかなくて、読んでて心が痛かった。
勇気を出して行動を起こせば変わる未来もある。
でもそこにはやっぱり差し伸べる手が必要だろうな。
実際にはなかなか難しいだろうけど、世の中が目を背けない風潮に変わっていけばいいのにな。
今回、嫌悪感抱く登場人物が多かったな〜
読後も私的にはどよーんとした気持ちが残ってしまいました。
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私が読む寺地はるな氏作品の8冊目。
最初からずーっと不穏なものが漂っていて一気読み。
内容はものすごく、嫌。
上手い作家さんだな。