弥勒の月 (文芸)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924874

感想・レビュー・書評

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  • 「生きていれば、その中途で弥勒に出逢うことも、妖魔に憑かれることもある」この一言のためにできた物語の様です。
    同心・木暮信次郎の捕り物記でしょうか、遠野屋清之介の逃亡記でしょうか。陰がある・ありそうな二人に引き込まれます。

    清之介が遠野屋に婿入りするまでが明らかになる。”闇”からのいわゆる"抜け忍”になるのでしょうか。武家の出だから、ちょっと違うかもしれないけど…。壮絶な、悲しい、哀れな世界です。何を企てれば、諮れば、目指せば、”闇”が必要となるのだろうか、政をなすべきなのかと、訝ってしまう。闇を作れば、闇に呑まれるしかないのに、と。

    そして悩む。どれだけの器量があれば、先代の遠野屋に認めてもらえるのだろうか、と。生い立ちとのギャップ、ある程度は素養があったとしても、一人前に認められるにはそれなりの辛苦があったはず。思わず、清之介の修業時代を思い描いてしまった。

    物語は、おりんさんとの出会う場面で話が結ばれる。結末は別にしても、素敵な橋の一コマです。光と青春の季節がもっと続けばよかったのに、と悔やまれます。やり直すには、この一瞬があればよかったのかもしれません。弥勒菩薩だったわけが伝わる、商人として生き直す瞬間が。




  • あんまり楽しめなかった
    バッテリーにあるような瑞々しさがなかった気がする


    たぶん江戸時代の話

    謎かけもあっさりして単純で

    信次郎と伊佐治のやりとりは面白かったけれども


    あまりオススメできません

  • やっと読めたシリーズ第一作目。
    遠野屋と信次郎の出会いの物語。
    自殺にしか見えない事件の結末がどうなるのか気になっていたのですが、意外なところでした。
    出会った頃の遠野屋から夜叉桜、木練柿
    やはり順番に読めばよかったですねぇ

  • 『バッテリー』以来のあさのあつこさんでした。爽やかな青春物からの時代物で、ほのぼのとした捕物帖と思っていたので、とんだ重たい話でビックリ!なかなかの読み物で暗いながらも引き込まれました。

  • あの「バッテリー」を描いたあさのあつこが初めて時代物小説を創作した作品と聞いては、読まないわけにはいかない。

    流石に、幾重にもミステリーを重ねて、読むものに謎をなかなか明かさない。

    素敵な作品だった。
    一筋縄にはいかない若い同心。
    その同心の父親の代からの岡っ引きは、心の底ではこの息子同心の真意を図かねている。

    中年の岡っ引き、伊佐治からの視線で描かれている部分が多い。

    たくさんの名作時代小説を読んだ私としては、些か、ト書きがくどい。もう少し整理されてて読みやすいと良いと思った。

    登場人物たちはその全てが、複雑な背景を持つ。
    その背景が謎を呼ぶ。

  • 深い闇をのぞき込むことで、自らの人間性を再確認しているような。
    まるで何も感じていないかのようだった信次郎さん。
    決して素顔を見せない遠野屋さん。
    だけど、より深い闇の前では、その人間性を隠しておくことはできない。
    ではその闇とはなんだろう。
    狂気か。
    既に大義もなく、目的すら失われているのに、それに目を向けずただ突き進む狂気。
    そんなものどうしようもない。

  • 再読。過去と現在と。毎回思うが、信次郎の裏側の話も読みたい。

  • あさのあつこの時代小説。第8弾まで進んでいるシリーズは、闇を歩く男たちの物語。

    安寧の世に満たされず心に空を抱える若き同心・木暮信次郎、信次郎の父の代から岡っ引きとして務め、今は信次郎を守り立てたいと同心を続ける親分・伊佐治、小間物問屋の主人でありながら大きな闇を抱える遠野清之介、3人を軸として物語は展開する。

    江戸捕物帳の楽しみは、事件そのものよりも江戸の町人たちの生き生きとした暮らしぶりと人情話、同心と親分たちの軽妙なやり取りに垣間見る信頼関係、そして何より、主人公たる同心の愛すべき性格によるところが大きい。そう、宮部みゆきの「ぼんくら」シリーズの井筒の旦那のように。

    その観点で見ると、信次郎がちょっと弱い。父の死に端を発した虚無感を抱えているとはいえ、世を拗ねたようなふるまい、言動の品のなさ、特にすぐ舌を鳴らすしぐさがいただけない。捕物を退屈しのぎのようにしかとらえていない言動も子供じみている。その信次郎のお守のように陰になり日向になり支える伊佐治なくしては成り立たない。
    対して、遠野屋の主人清之介は重たい過去を背負いながら真っ当な人間となって光の中を歩もうとする葛藤がハードボイルドでいい。抑えた中にもキレッキレの佇まいに萌える。

    シリーズものなので、事件の捕物に並行して登場人物の過去の因縁話を1冊の中に書き込む必要があるためか、急ぎ足になり、江戸の暮らしといった風情に欠けるのが残念。
    シリーズが進むと面白くなっていくんだろうけど、何せ信次郎に今一つ魅力を感じないのがブレーキになる作品。

  • 新刊に備えて再再読。
    遠野屋清之介とおりんの出会い、遠野屋に入り込んでいた闇の者。
    ああ、こんな出会いだったんだっけ…こんなに用意周到に進められていたことだったんだ…と思い出しながら読みました。
    清之介と信次郎との絡み、伊佐治のものの見方などの面白さは再再読でも楽しめます。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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