- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334926687
作品紹介・あらすじ
簡単には、みつかりません。この迷宮は、深いのです。生まじめでカタブツの図書館員が、お手伝いいたします。極上の探書ミステリー。
感想・レビュー・書評
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図書館のレファレンス担当さんが主人公の、連作短編。
様々な人が探す本を見つける、ということをミステリー風にしているのだけど、線を辿っていくというより、ポンポンと飛び石を渡っていくような過程で、「そりゃ知らなきゃ見つからないわ…」という知識ありきのものなので、謎解き調なのに違和感がある。
実際はこれよりも更にアクロバティックなことが行われているのだろうけども。
後半の図書館不要論との戦いは、どちらの主張も雑な印象が拭えなかった。
それと、最初から最後まで主人公の中に「良い図書館利用者」(研究資料を探しに来るなど)と「だめな図書館利用者」(流行の本を借りに来るなど)というのがはっきりあるのが嫌…。
図書館員さんとしたら、「もっと色々活用してほしい!」という思いはあるだろうけども、こんな書き方しなくても…と思ってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館のレファレンス・カウンターが舞台のミステリー小説。
主人公の和久山隆彦(わくやまたかひこ)は30歳。入職して7年、調査相談課に配属されて3年になるN市立図書館のレファレンス・カウンター担当だ。隆彦は相談者の証言を手掛かりに、様々な仲間に支えられながら、レファレンス・ブックを駆使し、長年の職業経験で培われた勘を総動員して特定の本を次々と探し当てていく。それと同時に、その本を探す相談者の本に対する想いや人生もするすると紐解かれていく。レファレンス・カウンターで解き明かされていくのは、まさに本に関わる人間たちの生きるドラマなのだ。図書館におけるレファレンスという仕事の謎解きのような要素に着目し、ミステリーを書き上げたのは大変面白い試みだったと思う。
レファレンス・カウンターには実にさまざまな相談が舞い込んでくる。例えば、第2話「赤い富士山」では、取り壊し予定の峰杉公民館(N市立図書館分館)に隆彦が蔵書を取りに行ったとき、鳥沢嗣春(とりさわつぐはる)という紳士と出会い、分館の蔵書の中から表紙いっぱいに「赤い富士山」が描かれている本を探してほしいという依頼を受ける。隆彦は、図書課児童書担当の24歳の乙女、藤原沙理(ふじわらさり)と一緒に紳士の言葉を頼りにして試行錯誤を繰り返しながらも一冊の本を見つけ出す。
第3回「図書館滅ぶべし」では、新しく副館長として赴任してきた潟田直次(かただなおつぐ)が隆彦のライバルとして登場する。潟田は市長秘書室から転属してきたのだが、正月の着任早々、あからさまな図書館廃止論を繰り広げていく。それに対して反論した隆彦に潟田は研修と称して難問をぶつけるのだ。「或る一つの語をタイトルに含む本。その語は、A意味的には、日本語における外来語の輸入の歴史をまるごと含む。B音声的には、人間の子供が最初に発する音によってのみ構成される」。期間は一週間。隆彦は調査相談課の先輩楢本(ならもと)のサポートを受けてレファレンス・ブックや勘を頼りにこの難問を解き明かし、指定された本を探し出すのだ。
そして、第5話「最後の仕事」では、市議会議員増川弘造(ますかわこうぞう)に実力を認められた隆彦は、文教常任委員会において、図書館長となった潟田と弁論対決をしなければならなくなる。もちろん、議題は図書館の存廃に関するものだ。
さらに、増川は隆彦に個人的な本探しをも依頼する。若い頃に読んで衝撃を受けた作品で、作者と書名が思い出せないが、登場人物の若い男が陰茎で白い障子を次々と突き刺すシーンが出てくる政治小説を探してほしいというのだ。隆彦は演説の草稿と本探しという2つの案件を抱え、またもや沙理の言葉からヒントを得る。
隆彦の図書館存続を訴える演説の内容はなかなか良かった。図書館の存在意義を日本が法治国家であることと絡めて説明し、さらに救急医療センターや市営住宅と同等の意義があるということを証明してみせた説得力のある演説だった。
また、弁論対決に辛くも勝利した隆彦は、古巣に戻ることとなった潟田の推薦で市長秘書室と連携関係にある企画グループへの異動が決まる。隆彦のレファレンス・カウンターにおける最後の相談がどんなものなのか、職員の仲間たちが見守る中、やって来たのは意外な人物だった。
最後の最後で、隆彦と沙理の凸凹コンビが淡い恋愛関係に発展していくのも、私はなかなか微笑ましいことだと思った。 -
面白かった
仕事に倦んでいる図書館司書の青年が、図書探し(短編の謎解き)をしながら、図書館の存在意義や司書の役割について再発見(通しのテーマ)する。
抑えたトーンで描かれている、登場人物たちが魅力的。 -
青山さんとは、またひと味ちがった、図書室の人。図書館ネタでいろんな話が展開しているのが楽しい。
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面白かった。
図書館のレファレンスカウンターに勤務する公務員が主人公の短編連作小説。
各話では、市民から持ち込まれた曖昧な本の記憶から欲しかった本を探す、本業から人と本の関わりを描く。
そして通しの主題として、図書館の存続の是非がある。
とても考えさせられてしまった。
図書館は大切。知識は力。
誰だって知ってる事。
でもそれは救急車より必要ですか?
衣食足りて礼節を知るというけれど、本は衣食ですか?礼節ですか?
そんな問いかけをしてくれた本でした。 -
図書館にてタイトル借りした本。うーん。ちょっと私には合わない文体だったなぁ。僅かなヒントの中から本を探すという設定は面白かったと思う。なんか妙に淡々としていて盛り上がりには欠けたかも。2011/144
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図書館のレファレンスカウンターの業務に就く主人公が、本に関わる難問を解決していくお話。
本の本って好きなものが多いんですが、この作品も楽しく読めました。
某国民的食品ヒーローの章の謎はかなりよくできていて、回答を聞いた時は思わず「なるほどっ!」っと声が出てしまった。
主人公の隆彦と潟田館長の毒の効いた会話のやりとりはとても面白く、立場や年齢差を超えた好敵手のようでもあり、ハラハラどきどきさせられました。
ただ一つだけ、現実的なことを言えば、もし図書館を次々と廃館しちゃったら、「市長さん次の選挙は間違いなく落選しちゃいますよ」ってツッコミたくなりますね。 -
軽ーく読めるお話。ミステリじゃなくて軽い謎探しといったほうが適当だと思う。
図書館の意義については目からうろこ。 -
『図書館が教えてくれた発想法』(高田高史著)と大崎梢さんの『配達あかずきん』シリーズを足して2で割ったような感じ、とでもいいましょうか? それにしても「けだし」がこんなに出てくる本を読んだのは初めてです。
(図書館で借りた本)