- Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334928162
感想・レビュー・書評
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「約束の場所、約束の時間」(進研ゼミ「中二講座」)
「サクラ咲く」(進研ゼミ「中一講座」)
「世界で一番美しい宝石」(小説宝石)
の3編を収録した短編集。
■「約束の場所、約束の時間」
進研ゼミ「中二講座」が初出なだけあって、
主人公は中学二年生の男子。
主人公が中学二年生・・・となると、
辻村氏のお得意(?)のクラス内格差社会、
無視や陰口などの幼稚ないじめの流行、
他人の目を気にしすぎる自尊心を持て余す中高生
を今回も描いていると思いがちだが、
初出が「進研ゼミ」なだけあって、
そのあたりはほとんど描かれておらず(スパイス程度)、
辻村氏のもうひとつの特徴(?)ともいうべき
不可思議な現象をメインに描かれている。
辻村氏のこれまでの作品好きな方には、
なんだか物足りない作品となっているかもしれない。
ただし、さすが辻村氏。
同時収録されている「サクラ咲く」と
「世界で一番美しい宝石」とのリンクがあるため、
物足らない読者にも楽しみを与えてくれている。
■「サクラ咲く」
進研ゼミ「中一講座」が初出なだけあって、
主人公は中学一年生の女子。
こちらも上記「約束の~」と同様、辻村氏のお得意分野はスパイス程度。
不可思議さもそれほどでもなく、少々先が読める展開となっているが、
対象が中学一年生であれば、仕方がない。
(おそらく小説をほとんど読まない中学一年生向けだと思われる)
とはいえ、主人公の少女の「自分を変えたい」「変わりたい」という思いと、
小さな勇気や友達間の気遣いなどに、ほのぼのとさせられる。
感覚の違いもあろうが、辻村氏の作品を楽しむというより、
自身の読書初心者の頃を思い出させてもらえる作品。
こちらも「約束の~」と同様、
「世界で一番美しい宝石」とのリンクがあり、
彼女らのちょっとした未来が想像できる。
■「世界で一番美しい宝石」
この短編集の中では、唯一ともいうべき辻村小説とわかる短編。
主人公は高校一年生の男子。
クラス内格差でいう所の目立たない方が、
学校の中の居場所を求めて立ち向かっている姿が描かれている。
学校は一部の生徒のものではない。
高校デビュー、それの何が悪い。
何であれ誰かが打ち込んでるものを馬鹿にするな。
そう思っていいんだよ。
そう感じさせてくれる。
些細な悪意や好奇心を向けられる事や、
自分を優位に立たせるために他者を貶める奴はいる。
だけど、少しだけ勇気をだして踏み出した事で、
変わる世界がある。
頑張れ!!負けるな!!
そういうエールが聞こえる気がする。
そういう意味で、小中高生に読んでほしい。
そして届いて欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
入学の戸惑い、友情の育まれる姿、人を好きだと意識するコト、自分への厳しさ・・・
中学生、高校生の感覚が瑞々しく描かれている。
連載していた中1、中2進研ゼミを読んでいた子にも、読んでいなかった子にも読んで欲しい物語。
辻村さんは本当に本を読むのが好きなんだなぁ。
そして、本を読む事が楽しいコト、大切なコトへのキッカケになることだと伝えようとしているのがわかる。
物語で語りかける、それを形にできる立場からの優しい助言。
そして、必殺の人物リンク。
今回はそれを強く意識して組まれていた。
人と人とが繋がって紡がれるのが物語。
一つの物語は一つの世界だけで終わっていない所が好きだ。
あぁ、おもしろかった。 -
表題作は人にはっきり自分の意見を言えないと悩む本好きの少女マチが、図書館の本に挟まれているメッセージに惹かれて、誰とは知らないままにやりとりをする。「友だちになりたい」と思う気持ちがメッセージ相手の彼女の登校を促す。
他2篇。どれもどこかでつながっている。
中学生時代がこれらの話に重なるような、思い出深いものであるようにと祈りたい気持ちになる。 -
図書館で本をめくっているとそこから滑り落ちた一枚の紙。
そこには『サクラチル』と書かれており…
三つの短編からなる短編集。
それぞれ違う話だけど、どこかで繋がっているので、読んでて楽しかった。
最後の短編と最初の短編の繋がりがわかったとき、ちょっと感動した\(◎o◎)/!
さすが辻村さん…って感じです(^^♪
中学生向けなので、あっという間に読めちゃうのが物足りないけど、面白かった。 -
表題を含むみっつの短編は、すべて学校関連のもの。
当然(?)学生が主人公です。
表題の話は、確かに、というものが。
嫌われたくない、嫌われないように、と小さくなってしまう心。
けれど変わりたいと思う心。
きっかけがなんであれ、どうにかしなくては、と思う事が大事かと。
行動を起こすのが大事だ、と言われると何とも…w
変わろうと思った瞬間に、少しだけ変わってはいると思いますが。
最初の話は、不思議もの。
子供とはいえないような子供が登場する事が多いですが
これはきれいに子供かと。
相手に無理を言ったり、それを後で反省してみたり
けれどあやまるのが恥ずかしかったり。
で、最後の話。
ストーカー一歩手前…ですが、これだけやる気がないと
記者には向いていないかもしれません。
ただ…一流にはなれない先輩だ、と本編まったく関係ない所に注目。
人様の頑張りを、面白おかしく書きたててはいけません。
お金を稼げる職業に着いてからにして下さい。
ところで、この話の主人公のお父さんは…最初の、ですよね? -
久し振りにこういう話のリンクに鳥肌たった
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進研ゼミ中学講座で連載されていた作品を含む短編集。どれも優しい気持ちになれる爽やかな小説。進研ゼミでの連載はとにかく忙しかった時期に仕事を依頼され「あー、それはやりますねぇ」と引き受けた辻村さん的には嬉しい仕事だったそうな。そういう仕事っていいよなぁ。
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いい人がたくさんの本。伏線回収もありよかったです。