- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784335650161
感想・レビュー・書評
-
著者:大塚 久雄
著者:川島 武宜
著者:土居 健郎
出版年月日 1976/10/30
ISBN 978-4-335-65016-1
Cコード 1011
判型・ページ数 4-6 並製 ・ 264
定価 1,388円(本体1,262円+税)
在庫 品切れ・重版未定
「甘え」は日本人の心性を解く鍵に止らず学問の方法に有効な概念である。
本書はこの共通の認識に立ち、精神科医とわが国の代表的経済史家と法学者が社会科学における分析道具としての「甘え」の役割・価値を積極的にとらえた待望の書。
[https://www.koubundou.co.jp/book/b156659.html]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
土居健郎の「甘え」理論をテーマに、経済史学者の大塚久雄と、法社会学者の川島武宜を交えておこなった鼎談を収録しています。
まずは川島が、「甘え」という概念が方法論的にきちんと整備されていない点を、鋭く批判しています。土居は、西洋とは違い日本では日常の言葉と学問の言葉が切り離されていることに不満を抱いており、「甘え」という日常語を手がかりに、人間心理の解明をめざそうとしています。これに対して川島は、問題を発見し特定するための道具としては土居のようなスタンスは許されるが、分析の道具としては高度に理論的な概念として整備する必要があると主張します。一方大塚は、川島の問題提起を認めつつも、そうした理論的概念が日常の場面から離れて一人歩きすることの危険性をも指摘しています。おそらく大塚は、土居・川島双方の立場の往還運動が、学問的分析に当たって必要だということを示唆しているのではないかと思います。
そのほか、川島がジェローム・フランクの『法と現代精神』の法社会学と「甘え」理論の接続可能性について論じたり、ウェーバー=大塚史学における家族的「ピエテート」と「甘え」の近さなども、話題に上っています。
理解できないところもありましたが、土居の「甘え」の理論を日本人論として解釈する際に、よりいっそう厳密な社会学的な概念に鍛えなければならないということが分かりました。