世界幻想文学大系 5A 放浪者メルモス 上

• 国書刊行会 (1998年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[airnaさんの感想 · 2007年8月20日]

時代も場所もばらばらに見染めた人物の魂を狙っているひとりの悪魔の目撃談。悪魔と関わりを持ち悩まされた個々の登場人物毎のエピソードの交錯が、見事に自然に溶けあってる。上手い。靄の中をさまよっている気分になる。幻想文学って暗そうなのに、言っていることは悪魔の繰り出す苦悶に最後まで挫けずにいた人物たちの姿勢から読む人間性の賛美。悪魔がつけ狙う人の魂の美味しいところ、悪魔が調達できない人間性の崇高さはなにかということが、文面からぼんやりと浮かんでくる。酔えるよ。