セラフィタ

  • 国書刊行会
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336037459

感想・レビュー・書評

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  • 山尾悠子が憧れていた小説だ、というだけで、私も憧れの対象だった。
    が、バルザック山脈はあまりに大きい。難しそうだなと尻ごみしていた。
    まずは集英社文庫の『ポケットマスターピース3』で、「人間喜劇」(ダンテ「神聖喜劇」に対応)の裾野の煉獄編にあたる『ゴリオ爺さん』に始まるヴォートラン3部作『幻滅』『浮かれ女盛衰記』を、愉しく読んだ。
    まさに美味しい読書の愉悦に浸るようにして。
    その勢いを借りて、天国編にあたる本書を読んでみたが……、正直、「人間喜劇」のあれこれと較べると、単純。
    が、単純ゆえに深いと、いえるのかもしれない。
    散文作家バルザックが書いた散文詩といってもしいのかもしれない。
    スウェーデンボルグには突っ込まないようにしよう、自分が危ないから。澁澤的になぞる程度でいいだろう。
    バルザック山脈の頂点と裾野に触れられたので、あとは拡大していけそうだ。
    ネットでいろいろ読んだが、やはり松岡正剛の千夜千冊が一番しっくりきた。

  • 青年ウィルフリッドと少女ミンナ、2人に恋焦がれられる両性具有の人間として生まれたセラフィタ=セラフィトゥス…
    す、すごい…神話とか聖書みてえなテンションだな…

  •  1835年作。
     若い男性ウィルフリッドに対しては女性セラフィタとして登場し、若い女性ミンナに対しては男性セラフィトゥスとなって現れる、両性具有の神的な存在者。このセラフィタ/セラフィトゥスの神話的な存続と滅失を巡る、かなり思弁的な作品となっており、バルザックの「いつもの」作風とは相当の違いがある。バルザックがこのような作品を書いたということ自体が、驚くべき事件である。しかも、この膨大に書きまくった作家の全体構造「人間喜劇」の重要な一頂点を成すような位置づけの作品なのだ。
     神秘思想家スウェーデンボリの生涯や思想についての長々とした解説の章があるが、巻末の解説を見るとバルザックのスウェーデンボリ理解はちょっと間違っており、どうやら本書でセラフィタの口を通して述べられる思想は、いろいろと混じり合ったバルザック独自の宗教思想と言ってもよいものらしい。
     本書の思想小説的様相は、『荒野のおおかみ』『知と愛』などのヘルマン・ヘッセの求道的小説や、パウロ・コレーリョなどの趣を連想させる。いつもは世相の多様な人間模様を描きまくってきたバルザックの文学世界においては確かに異様なものなのだが、これが彼の世界構想の一角としてきっちりと組み込まれていたということに激しい驚嘆をもたらされる。
     さらに驚いたのは、最後の、セラフィタが「昇天」する場面での、まるでこんにちの日本の小説を支配するような「全改行」の文体の出現。バルザックの文体がこのように変化することを、私は全く予測しておらず、唖然としてしまった。何と言う広大な文学であろう。
     本作のような路線にやや近い作品としては他に『ルイ・ランベール』あたりもあるそうだが、そのうち読んでみたいものだ。

  • 古本を買ったわけじゃないのに、開いたら古本屋の匂いがした。長い間、誰にも変われなかったんだね。で、字が小さい! 老眼鏡の度をあげなくちゃだめだろうか?
    無事、読了。自然科学と神学(?)の論争は、、、半分眠りながら読んだのだけれど、天使になる、という発想は面白かった。

  • <閲覧スタッフより>
    バルザックの神秘主義的作品群の代表作。両性具有の天使「セラフィタ」を主人公としたその作品は、バルザック作品の中でも特異な光を放つ存在です。ページ毎の脚注がそれぞれ行末に配置されているので、とても読みやすいです。
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    所在記号:953.6||ハオ
    資料番号:10096196
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  • わたしは大好きですこういうの。
    難解すぎて内容は流れていってしまったけど…こんなにも美しい言葉ばかりで紡がれた文章があるのか。溜息。
    引用したい文章ばかり。ラストも圧巻です。
    理解はほんとうにできなかったのだけど!すごく好きだ。あの美しい風景、全く思い出せないのにあの感動だけは忘れられない。

    もういちど読むなら角川文庫版を買おうと思いますが、訳はどうなのかな、ここまで美しくないと満足できないかもしれない。

  • 『セラフィタ』1833-35年・・・哲学的研究

    バルザックの『セラフィタ』は、人間喜劇のなかで、哲学的研究に分類されている。
    『セラフィタ』は、両性具有をテーマとし、幻想文学ともいえる作品であろうが、エマヌエル・スヴェーデンボリ(スウェーデンボルグ)の思想に大きな影響を受けて書かれている。

    スウェーデンボルグは、1688年にストックホルムで出生し、数学・物理学・天文学・結晶学・化学・地質学など多くの学問に精通したヨーロッパ屈指の学者であったが、50才代より神の幻視を体験し、霊的要素の強い書物を著した。
    スウェーデンボルグに影響を受けている才人や芸術家は多く、バルザックにおいても例外ではなかったようだ。

    スウェーデンボルグに関して、バルザックは『セラフィタ』の中で登場人物に饒舌に語らせており、
    『セラフィタ』は、スウェーデンボルグの熱心な弟子であった男爵とその妻との間に生まれた子どもであるという設定にしています。

    両性具有に関しては、文化的特性のアンドロギュノスと半陰陽のヘルマフロディトスがあるが、混同して用いられることが多いようだ。
    ギリシア神話のヘルメスとアフロディーテの子のヘルマフロディトスはニンフと一体化し、両性具有となった。

    両性具有のテーマ性に関しては、プラトンをはじめ、日本でも鏡花や谷崎、芥川、澁澤などが作品を著している。

    バルザックにおける幻想文学的作品としての類似性として、
    性別など疑うことなく愛した女が実は去勢された男で、彼を愛してしまったがために殺されてしまうという悲劇的事件が軸となっている『サラジーヌ』や、異国の老人としてダンテ・アリギエーリを登場させる『追放者』、
    そして私はまだ未読ですが、『ルイ・ランベール』にもスウェーデンボルグの影響がみられるようだ。

    ふたりの男女の前に現れた『セラフィタ』は非常に不思議で魅力的であるが、神がかった存在であることを認めざるを得ない。

    この書物はスウェーデンボルジスムの流行のさなかに描かれたものであるようだ。
    スウェーデンボルグに関して、またその思想や書物に関して詳しくないのでバルザックのこの作品の読み方も浅かったが、スウェーデンボルグへの興味は広がったような気がする。

  • スウェデンボルグの神秘思想の影響のもとに天使の両性具有性を哲学的かつリアルに描写する。

  • 国書刊行会さすがです。マニアックに突いてきますね。
    すべてを含んで矛盾をきたさない者、一者、すなわちアンドロギュヌス。

  • 難しいところは流し読み^^p^
    面白いです。
    セラフィタかこいい

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著者プロフィール

フランス文学を代表する作家の一人。1799年生まれ。ロマン主義・写実主義の系譜に属する。現実の人間を観察することが創作の出発点だが、創造力を駆使して典型的人間像を描きあげる。歴史にも大きな関心を持ち、歴史的事実から着想を得ることも多かった。様々な作品に同じ人物を登場させる「人物再登場法」という手法を用い、膨大な作品群によって「人間(喜)劇」と名づける独自の文学世界を構築しようとした。代表作は『谷間の百合』。豪放な私生活も伝説的に語り継がれている。1850年没。

「2020年 『サンソン回想録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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