ラーメンの語られざる歴史

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336059406

作品紹介・あらすじ

機密扱いだった占領軍の文書や数多くの日本の資料を駆使して、ラーメンが貧しい労働者のための粗末な食事から日本文化の国際的象徴へと華々しく上り詰めた経緯と、国際政策が世界中のごく普通の食べ物にいかに影響するかを教えてくれる。
 近頃ではラーメンは日本の国民食とまで言われている。世界に進出して注目を集めているし、書店にはラーメン関連の雑誌や本が並んでいる。だが日本人はラーメンについて、ラーメンの歴史について本当に知っているのだろうか。確かに店や味の情報については、ラーメンマニアではなくても何となく知っている。テレビでは頻繁に行列店や穴場店、ご当地ラーメンなどさまざまな情報が流されている。しかし、そもそもの起源や歴史、背景については案外ぼんやりとしか知らないのではないだろうか。そのあたりにもこたえてくれるのが、本書だ。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001209914

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/64420

  • ラーメンを通じて、戦前からの日本社会の変遷が見える。中国やアメリカとの関わり方も。

  • 2019.8.24市立図書館
    日本でのラーメンの起源の諸説から始まって、日本の政治や経済状況の変遷に伴って労働者の食事から日本の国民食となるまでの歴史(どのように、そしてなぜ)、そして日本文化の象徴として国際的グルメになった経緯をたどった読み応えのある一冊。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 今まで聞いたことない視点からのラーメン話だった。そうだったのかと思い、感心した。
    思えば幼い頃のラーメンのイメージは確かに今とは違う。そもそもラーメン屋さんで食べるものというイメージもなかった。ラーメンも置いてある飲食店で食べるものだったように思う。当時は、じゃあラーメンにしようかなくらいのものだった。このラーメンが食べたいなんてものではなかった。こんな心境の変化があったなんて本書を読んで初めて知らされた。
    ラーメンの歴史を政治、経済、文化といったさまざまな観点から論じられる。当事国の日本人としては時折、理解できない飛躍があるように思える箇所もいくらかあった。そんな風に集約していいものかと少なからず違和感があった。
    しかしながら、ラーメンを通して日本を論じるセンスは面白く、そんな見方もあるのかと驚きがあった。

  • なかなか読み応えあり。
    戦後の占領軍による政策もラーメンブームに大きな影響があったとは。

  •  ラーメン製造はいまや高尚な技術であり、ラーメンの消費は地域性や国民性、文化性などの共同体感覚を再確認させるものだ。しかし、30年前は違った。そして、そうなった経過こそが、この物語の本質的な主題なのだ。日本の労働者が好んだこの食べ物は、国民的な伝統のひとつとして有名になる一方で、そもそもこの食べ物への要求を生み出した種類の労働は、自動化されるか海外へと移転していった。この二つの変化には関連があり、そこにこそ、ラーメンの純粋なうまさ以上の重要性があると私は考えている。(p.16)

     歴史を食べ物というレンズを通して考え、国家間の条約や知識人の意見ではなく、普通の人々の生活をその中心に据えるとき、特定の出来事の相対的重要性や全体的な時代区分が再検討され、政府政策と同じように焦点をあてた歴史が生まれうる。この目的のため、歴史考察の中心点として食べ物を研究することは、日常で経験する変化や継続性に対しての、より直接的なアプローチだろう。つまり日本におけるラーメンの歴史は、この研究が扱う食べ物と労働、そして、代わりゆく国民意識とのつながりを見るレンズなのだ。(p.22)

     アメリカ産小麦とラードの闇ルートへの横流しは、「中華そば」販売者の商売再開に不可欠な材料を提供した。こうして、「中華そば」などの食べ物屋台は、都市部の被災した労働者たちが小さな商売をはじめるチャンスになった。ラーメンは1930年代のように、再び手頃な値段の避難所となり、都市住民は暖かい中華汁麺(あるいは間に合わせの類似品)を食べる楽しみを再発見したのだ。
    (中略)すべてが不足していた時代に手に入る数少ない食べ物のひとつとしての「中華そば」の記憶は、半世紀後に歴史的かつ象徴的な思い出として蘇ってくる。(p.63)

     1950年代から1970年台半ばに、ラーメンを特に昼食として食べる習慣が、都市に住む建設労働者と若い独り者に広まった。政府は、労働者の生活水準を調べる世帯の食費出費調査で、ラーメン消費の情報収集を開始した。ラーメンがどこでも食べられることは、国の急成長の労働力として、地方から都市に移住してきた多数の独り者のための手頃な食堂が、急増していることを現していた。多くの会社員は会社帰りに、同僚と酒を飲んで仕事の息抜きをするため、ラーメンは夜の娯楽産業に不可欠なものでもあった。
     つまりラーメンは、高度に合理化され、急成長する商品経済における不満と停滞のシンボルとして、きわめて重要な役割をはたしていたのだ。また同時に、小規模なラーメンの商売はこの時代の終わり頃には経済的自由というオーラをまとうようになり、実際にはそうでなくても、次第に多くのホワイトカラーが、ラーメン店主は「脱サラ」だと考えるようになった。(p.119)

     ラーメンは2000年代初期になると、安くて腹持ちがよく、急いでいる労働者がかきこむものと考えられていた1960年代とはまったく異なる働きを持つようになっていた。また、はじめの頃には魅力の中心だった中国起源が、ほとんど残っていないこともわかる。奥山はラーメンを高尚な料理文化とのつながりが強い西欧起源のスローフード運動と関連づけることで、ラーメンが肉体労働に必要な食べ物から、余暇と高尚な芸術に関連したものへと変化したと言う。国内でのラーメンの目的とイメージがこのように変化するにつれて、輸出向けの日本文化のひとつの要素としての市場性は、日本の都市を超えてニューヨークやロサンゼルス、パリ、台北、上海、バンコクなどの世界の金融資本センターへと拡大していった。(p.182)

  • ラーメンに少しでも興味のある日本人ならば知っているような情報が、延々と紹介されている。研究も、戦後社会や高度経済成長になかばこじつけで分析されているもので、訳者の能力もあるかもしれないが、回りくどく論旨の判りにくい文章に閉口する。

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著者プロフィール

ニューヨーク大学にて歴史学の准教授。専門は東アジアで、現代日本や政治経済、食物史など。

「2015年 『ラーメンの語られざる歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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