ウィリアムが来た時

著者 :
  • 国書刊行会
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336063564

作品紹介・あらすじ

ドイツ帝国に支配された架空のロンドンを舞台とした、
「短編の名手」サキによる、
本邦初訳ディストピア歴史IF群像劇!

ドイツによる支配が始まってから数ヶ月。街には独英二ヶ国語の文字が並び、ドイツ風の名前の料理店やカフェが軒を連ね、バッキンガム宮殿にはドイツ国旗がはためき、ロンドンはすっかり様変わりした。
その頃社交界では、体制に迎合する者、上手く利用しようとする者、反対する者、関心を持たぬ者など、さまざまな思惑をもった人物たちが、それぞれ己のため、あるいは国のために活動していた。
有閑階級夫人のシシリー・ヨービルが華やかなパーティや催しごとを開き、野心的な人々の間で敗戦下での地位を築くための政治劇が水面下で繰り広げられる一方、ドイツによる英国支配をより堅固なものにするべく、クワル卿なる怪人物が暗躍する。
そして、ある晴れた暖かい五月の午後のハイド・パーク。支配を象徴するかのように、高らかにファンファーレを響かせるパレードを従えたドイツ皇帝が、ついにその姿を現す──

感想・レビュー・書評

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  • 詳細なあらすじはブクログさんがきめ細やかに書かれているので、軽く感想だけ。

    主人公のヨービルは、異国の地で療養したのち祖国に帰ってくる。が、祖国である英国はドイツに支配されてしまっていたー。
    もうこの時点で、訳者も語っていたが、日本でも起こりうるだろうし、実際支配されるところを想像するとゾッとする。話自体はif物語だが…
    そんな恐怖感を抱かせつつ、皮肉たっぷりにユーモラスに登場人物を描き、登場人物に語らせているので、なんだか滑稽で面白くもある。
    不満だけ言い並べて何もしない人と、自国を支配してる国の人間と仲を保ちつつ動き出す人と。
    様々な立場の人が本書には垣間見えるが、私たちはどのような行動を取る側になるのだろう。
    いろいろ考えさせられる。

  • 1913年作。ドイツの支配下に置かれたイギリスにおける上流階級の群像劇という架空の歴史の物語。

    ヨービルは海外からあっさりと支配されたイギリスに戻ると、社交界では(妻を含む)勢力拡大を目論む人間、海外に逃げる人間、それぞれの思惑と決意と判断によってイギリスはドイツに懐柔されつつあった。

    先進国による先進国の支配は暴力ではなく、むしろ暴力から排除することにより、緩やかに人の精神を萎えさせていくことにより達成されるのかも、という歴史のIFが面白かったです。

    外国による支配というテーマにおいてもサキらしい淡々とときに皮肉たっぷりの描写で人の心理を面白く読めました。

    ただ、サキならもっと書けるだろう、という期待はあったかな…。なんとなく芥川賞の作品を読んだときの読後感です。

  • 内容はともかくとして、登場人物の女性の口調が気になった。「~わ」「~よ」の語尾に違和感がある。男性の翻訳家と最後にわかって、納得。

    特別な何かが起きるわけではない。むしろ、「起こった後」の世界の話。サキは短編が面白かったので期待して読んだが…

  • 短編の名手・サキの長編小説。
    『ドイツ帝国に征服された英国』という設定だけ見ると歴史改変SFにも見えるが、サキらしい皮肉の利いた長編だった。特に、登場人物の会話が非常にサキらしい。

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著者プロフィール

Saki.
1870 - 1916.
作家・ジャーナリスト。
本名はヘクター・ヒュー・マンロー(Hector Hugh Munro)。
インド帝国警察に勤務したのち、ジャーナリストとして活躍。
そのかたわら数多くの短篇小説を執筆し、
短篇の名手と称される。第一次世界大戦時に軍に志願し、
フランスにおいて絶命。
近年の邦訳に
『サキの思い出 評伝と短篇』
(エセル・M・マンロー、ロセイ・レイノルズ、サキ 著、
花輪涼子 訳、彩流社、2017年)、
『四角い卵  白水Uブックス』(和爾桃子訳、白水社、2017年)、
『平和の玩具  白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2017年)、
『けだものと超けだもの 白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2016年)、
『クローヴィス物語 白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2015年)、
『ウィリアムが来た時』(深町悟訳、国書刊行会、2019年6月)、
『サキ短編 『スキャンダルの行方』 Kindle』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services International,
Inc.、2019年)、
『サキ短編 『ビザンチン風オムレツ』』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services
International,Inc.、2017年)、
『サキ短編 『ラプロシュカの魂』『困った雄牛』』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services
International,Inc.、2017年)ほか。



「2019年 『鼻持ちならぬバシントン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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