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- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336071804
作品紹介・あらすじ
甘美な夢と綺想の書
世界の果てに浮かぶ奇妙な島。島に行ってしまった夫から送られてきた1冊のノート。妻は〈水上二足歩行者〉になろうと決意する。〈くじら屋敷〉に棲む猫は、「百年前からおまえを待っていたんだぜ」と少女に囁き、少女は猫に食いちぎられたいと胸を焦がす。魂の救済を待つこの島に、本当のたそがれは訪れるのか?
感想・レビュー・書評
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訳者としての作品しか知らなかったから、近く小説が出ると聞いてとても気になっていた。表紙の船がうっすら透けるカバーが素敵。一見シンプルでも凝った装丁はさすがの国書刊行会。
既刊では『変装術師の娘』が気になる。わりと最近の本なのに全然知らなかった……。
「多くの人々が懊悩や悲しみ、苦しみを捨てに来る」島と、そこに暮らす人々や動物たちのお話。「生まれつき罪深い私たちを許す方法を発明しなければならない」から、「本当のたそがれ」とは許し、あるいは救済のことであるらしい。明かりがいりそうででも灯さない、人の顔の曖昧になる「たそがれ」ということで、つまりそういうことだろうか。
ふわふわと漂いだして、ややもしないうちに波間に沈んで見えなくなるような、断章それ自体が水上二足歩行をなそうとしているような……どう読んだものか、自分の中でまだ整理がつかないのだけど、どこか不思議に楽しい読み心地だった。身体の取り外し、生まれ変わり、性の猟奇(遊女の切実な戯れ歌らしきものもある)のさらりと乾いたグロさ、既存の言葉の枠を越えていく思いがけない叙述が面白い。
あとがきで俄然、既刊が気になってきた。どこかにないものか。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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